“世界最大級のポップカルチャーの祭典”をうたう「コンプレックスコン(ComplexCon)」が3月22〜24日、香港のアジアワールド・エキスポで開催された。2016年のロサンゼルスでの第1回以来、米国以外での開催は初となる。かつては「スニーカーマニアの祭典」が代名詞だったコンプレックスコン。世界的にスニーカーがダウントレンドの中、香港で“ハイプ”(熱狂)を生み出すことはできたのか?
日本円で10万円近いチケットも即完売
前夜祭の22日は音楽ライブで幕開けた。中国の超人気ミュージシャンのエディソン・チェン(Edison Chen)を筆頭に、登場した9組全てが中華圏のアーティスト。ここからもすでに、アジアの消費者を強く意識していることがうかがえた。
「コンプレックスコン香港」は、米「コンプレックス」の中国版を運営するコンプレックスチャイナ(ボニー・チャン・ウーCEO)が手掛けた。ボニーCEOは、「コンプレックスコンを香港で開催できることを光栄に思う。これにより、中国本土、東南アジア、日本、韓国などの(「コンプレックスコン」の)膨大なファンコミュニティーにアクセスすることが可能になった」「若者文化がこれほどまでにグローバルに相互接続されるようになったのは信じられないこと。分野を超えて影響力を持つ才能たちが、そのファッション、スタイル、センスを前進させるための活動を感じ、楽しんでもらいたい」と話した。
チケットはウェブで事前販売し、23日の開場時点で2万9000枚以上を販売した。価格は最安で380香港ドル(約7500円)、最高額のVIPチケットでは4780香港ドル(約9万5000円)とかなり幅があり、それぞれ入場可能な日数や、優先入場などの条件で価格が細かく分かれた。VIPチケットはWEBで即完売したという。
これほど高額なチケットを買い求める大きな理由の一つが、早い物勝ちの限定商品を手に入れるためだ。23日は10時に開場した。来場客が足並みをそろえて向かう先は、目玉の出展ブース。藤原ヒロシ氏の「フラグメントデザイン(FRAGMENT DESIGN)」の限定商品が並ぶコンプレックスコンの公式ブース、2度目となるBLACKPINKと村上隆のコラボブース、イベントのアーティスティック・ディレクターであるVERDYとコラボした「マクドナルド(McDonald’s)」などだ(記者が人生で見た中で最も行列が長い「マック」だった)。香港から来場した20代の女性は、行列に並んだ末にVERDYデザインの限定スケートボードの購入がかない、「今日はこのために来た。買えてよかった」と笑顔を見せた。
主役は「スニーカー」から「アート」へ
ただイベント自体は、スニーカーフリークの熱狂に沸いた米国開催時とは、様相がずいぶん異なっていた。「アディダス(ADIDAS)」「ヴァンズ(VANS)」といった有名ブランドのブースはあったものの、スニーカーを扱う出展者の数自体は少なかった。常連だった「ナイキ(NIKE)」や「アトモス(ATMOS)」も不在だった。
代わりに目についたのは、壁掛け絵画、巨大なオブジェやフィギュアなど。スニーカーから主役の座を奪ったのは、「アート」だった。中でも高い関心を集めていたのは、中国の気鋭若手アーティスト、クロエ・チェン(Chloe Chen)による作品展示。日本のホラー映画に影響を受けたという独特の作風のオブジェを作り、昨年5月には日本でも個展を開いた。ストリートカルチャーの雄である「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)」も、アートに先鋭した派生ブランド「ベイプギャラリー」として出展していた。
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