「45R」は3月27日、「藍職人いろいろ45」の国内1号店を阪急うめだ本店8階にオープンした。売り場面積は56平方メートル。中心価格帯は10~20万円で、刺し子のジャケットが36万3000円、板染めのシャツが19万8000円、ドレスが28万6000円、デニムベストが19万8000円、市松絞りTシャツが17万6000円、シルクコットン板染めストールが5万8300円など約20型が並ぶ。
「藍職人いろいろ45」は藍染めに特化した製品をそろえ、「45R」ブランド設立45周年の2022年に始動した。奄美や益子、青梅や阿波、備後など、そしてインドの10~20人の職人たちと「45R」のデザインチームとが連携し、土地によって異なる天候、水、畑、藍の色はもちろん、職人の想いやくせを生かした製品を開発する。年3~4回程度、20型弱のコレクションを提案し、これまではポップアップイベントや一部の直営店で販売していた。10月にはニューヨークのクロスビーストリートに2店舗目をオープン予定だ。
「45R」のルーツはアメリカンヴィンテージで、着こなしの土台にデニムがあり、「藍染めの野良着から着想した日本人らしいデニム」を手掛けてきた。藍染めはブランドにとって特別な技法で、20年前からデニム素材の藍染めも行っている。ここまでフォーカスした理由は「髙橋慎志フォーティファイブアールピーエムスタジオ代表の、藍染め産業を後世につなげたいという想いが強かった」(広報担当者)から。
初日客単価は18万円 なぜ高額品が動くのか
初日売上高は「藍職人いろいろ45」のポップアップイベントの最高額を更新した。 初日客単価は18万円。特に板染めのドレスが人気を集めた。最高額の49万5000円の“カムエ”は2点売れた。カウチンと作務衣を融合させたようなデザインが特徴だ。
筆者が訪れた13~14時過ぎ頃は、多くの客でにぎわい、活気に溢れていた。ストールの染まり方を見比べ吟味する客や板染めのシャツとワンピースで迷う客、40万円を現金で支払う客、お茶を楽しむ外国人客など少なくとも10人程度の客がスタッフと話をしながら買い物を楽しんでおり、スタッフに声をかけると「オープン直後からたくさんの方が来客されてようやく落ち着いた」とのことだった。
藍染めは一点一点染まり方が異なるため、同じデザインでも同じものはなく、時間をかけて吟味する客の姿が印象的だったが、それ以上に驚いたのは高額品が飛ぶように売れていた点だ。聞けば、自身の顧客を接客するために各店から応援スタッフが駆け付けており、オープンに駆け付けた顧客は「何かしら購入された方がほとんど」(広報担当者)だという。「45R」の売り上げの7~8割が顧客だという。スタッフと客の信頼関係が厚く、スタッフにはブランドに対する熱意と豊富な知識量がある。製品の持つ魅力や価値、どんな職人が染めているのかなどを丁寧に伝える姿があった。
日本の伝統技術継承とビジネスの両立
近年、ラグジュアリー・ブランドは希少性のある材料を使ったわかりやすい表現から、歴史や文化に根差した職人の技巧や創造性へと転換しつつある。ファッション産業では、サヴォアフェール、クラフツマンシップといったキーワードで新たな価値を創出しようとしている。他方、「世界に残る伝統技法の70%が日本の技法」「伝統技法の継承が難しい」「継承したとしても若手はビジネスにつなげるのが難しい」という話も聞く。そうした日本の伝統技法を海外のラグジュアリー・ブランドが注視し、協業を始め、ラグジュアリーの価値として製品の提供を始めている。
では、日本ブランドによる日本の伝統技法の継承と活用した新しい価値の創出は可能なのか。「45R」の現在の店舗数は国内が37(実店舗35)、海外が22。顧客が多く、その顧客と積み上げた信頼関係がある。満を持して始めた伝統技法継承とビジネスの両立を目指す本プロジェクトは、興味深い事例だ。