ファッション

“世界最先端の高級時計フロア”が新宿伊勢丹に誕生 「ロレックス」退店を契機に

伊勢丹新宿本店本館5階の時計フロアが3月27日、リフレッシュオープンした。「構想から約2年間をかけて実現した、世界初で最先端の時計売り場だと自負している」と語るのは、上野翔太(うえの・しょうた)三越伊勢丹 第2MDグループ 新宿宝飾時計・雑貨商品部の宝飾・時計(時計)バイヤーだ。

高級時計の世界的人気は2021年以降、コロナ禍をきっかけに爆発した。それに前後して、日本の大型百貨店では、売り上げを大きくけん引する時計売り場のオープンやリニューアルが相次いだ。大阪では20年に阪急うめだ本店が時計売り場をリニューアルし、売り場面積を従来の約2.5倍に。名古屋では21年7月に「ジェイアール名古屋タカシマヤウオッチメゾン」がオープン。22年7月には松坂屋名古屋店も時計フロアを14年ぶりに改装リニューアル。名古屋の両店は、どちらも売り場面積約1200平方メートルと日本最大級だ。

ただ伊勢丹新宿本店のような都心部の繁華街の百貨店では、ビル自体を建て替えたり、時計以外の売り場を縮小・移転したりしない限り、売り場の大幅拡張は不可能だ。同店の場合、今回のリニューアルのきっかけは、大きな話題にもなった23年3月の「ロレックス(ROLEX)」の退店だった。それが決まった22年の春から、上野バイヤーらスタッフは、今後の時計売り場の検討し始めたという。ちなみに23年4月12日には、同店の向かいの新宿高野第二ビルに正規販売店「ロレックス」の「ロレックス ブティック レキシア 新宿店」がオープンしている。

顧客目線の大胆な売り場構成に

上野バイヤーたちは、時計ブランドではなく伊勢丹新宿本店が主導する、時計・宝飾業界の常識にとらわれない大胆なリニューアルを決意した。「時計売り場のリニューアルでは、売り上げの多いブランド順に、優先的にスペースを割り振ることが当たり前。でも、そんなことは絶対にしたくなかった。他の百貨店にはできないリニューアルをすることにした」。

時計ブランドと百貨店の通常の力関係では、売上高の多いブランドの条件や希望は基本そのまま受け入れるしかない。条件が折り合わずに退店してしまうのは、大きな痛手だ。

しかし同店の時計売り場は01年以降、右肩上がりで上昇を続けている。圧倒的な販売実績を背景に同店は、時計ブランドにリニューアル案の趣旨を時間をかけて説明し、理解と了承を得た。

「今回のリニューアルは、他の百貨店さんでは絶対に不可能なこと。昨年春のスイス・ジュネーブの時計フェア『ウオッチズ・アンド・ワンダーズ』で各ブランドに説明して了承していただいた。そのときヨーロッパのさまざまな時計店を見て回ったがが、私たちのようなコンセプトの時計売り場はどこにもなく、『これは世界初になる、世界最先端になる』と確信した」と上野バイヤーは語る。

こうしてリニューアルした本館5階の時計売り場は、面積は約2倍、取り扱いブランドも約70に拡張した。そしてフロアを①伝統的で正統派の時計を求める顧客を対象にした「ファインウオッチメイカーズ」エリアと、②革新的な時計を求める顧客を対象にした「クリエイティブウオッチメイカーズ」エリアのふたつに分けるとともに、5階を訪れて最初にアクセスするエスカレーター横のエリアには、その中間の、日本製の時計を求めるインバウンド顧客を想定した③ジャパンゾーンを設けた。

「日本の百貨店として日本の時計をおすすめし、その独自の魅力を特に外国の方々にアピールする。これは今回のリニューアルで、真っ先に実現したかったことのひとつだった」という。

「セイコー(SEIKO)」とカシオの「G-ショック(G-SHOCK)」をメインにしたこのゾーンには、量販店取り扱いのモデルはなく、オンラインストアの予約販売でのみ購入できるような特別なモデルを厳選。しかもその場で即購入できる。また、いま愛好家の間で注目される「マイクロメゾン」と呼ばれる少量生産の注目ブランドの商品をていねいな解説付きで販売するのも、百貨店の時計売り場としては画期的な試みだ。

上野バイヤーが語るように、これは新旧あらゆる顧客をひきつけ、世界をリードする画期的なリニューアル。百貨店の時計売り場では、同じく三越伊勢丹グループの三越日本橋本店が長らく一番店だが、伊勢丹新宿本店の伸び代は大きい。高級時計ビジネスにおける伊勢丹新宿本店の「独走」はさらに続く。

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