ファッション

アダストリアがバーチャルファッションのマーケットプレイス「スタイモアー」をオープン メタバース事業をを拡大

アダストリア(ADASTRIA)は4月10日、バーチャルファッションのマーケットプレイス「スタイモアー(StyMore)」をオープンした。個人や企業が出店できるプラットフォームで、アバター向けのファッションを販売する。

扱うアイテムは主にソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」ユーザーに向けたもの。アダストリアがすでに展開しているリアルアイテムの3Dモデルや2月に発売したサンリオとのコラボアイテムのほか、個人のクリエイターによるウエアやアクセサリーの3Dモデル約100点でスタートした。

「お客さまとの新しいタッチポイントとしてメタバースに注目しており、アバターでファッションを楽しむのがメジャーになる日が来れば、大きな市場になると予測している。リアルのファッションを販売する『ドットエスティ(ST.)』と、バーチャルファッションの『スタイモアー』の2軸を持つことが、将来大きな強みになると考える」と「ドットエスティ」を統括するアダストリアの田中順一執行役員マーケティング本部長。

3Dモデルは、クリエイター向けマーケットプレイス「ブース(BOOTH)」が多く扱っているが、「ブース」は漫画やぬいぐるみなどさまざまなアイテムを扱っており、3Dモデルの種類も多岐にわたる。アダストリアもこれまで3Dモデルを「ブース」で販売してきたが、ファッションの3Dモデルに特化したプラットフォームがなかったことも、「スタイモアー」立ち上げにつながった。出店する個人クリエイターには売上高の7%、企業は10%を手数料として徴収するビジネスモデルになっている。

「スタイモアー」で特筆すべきは、VR/AR/MRなど先端コンテンツを活用した日本アニメのデジタルグッズ販売と技術研究を行うGugenkaによるアプリ「メイクアバター」を利用することで、簡単に着替えられるアイテムも扱う点だ。「VRChat」でアバターの服を着替えさせる場合、ゲームエンジンのUnityを使わなければならないことが、バーチャルファッションを楽しむ上での大きなハードルだった。「メイクアバター」を利用し、専用の3Dモデルを購入することで、簡単に着替えられ、「VRChat」「バーチャルキャスト」などにアップロードできる。

「ファッション特化で、3DCGソフトを使わず着替えられ、クオリティーの高いものをそろえる」とアダストリアの島田淳史メタバースプロジェクトマネジャーは語る。

130万円を売るヒットアイテムも

アダストリアは22年7月にメタバース事業に参入し、同年10月にECサイト「ドットエスティ」の「VRChat」対応オリジナルアバター「枡花蒼(ますはなあお)」を、12月に「一色晴(いっしきひより)」を「ブース(BOOTH)」で発売。「レイジブルー(RAGEBLUE)」や「ハレ(HARE)」のウエアやアクセサリーの3Dアイテムもそろえながら、“試着会”のほか、オリジナルアバターをモデルにした3Dファッションとフォトのコンテストなどのイベントも行ってきた。「3Dアイテムを発売してから約1年半で、3300点、約1000万円を売り上げた。130万円売るヒットアイテムも出ており、手応えを得ている。メタバースのお客さまは非常にエンゲージメントが高い傾向だ。市場としてだけでなく、お客さまとのつながりに可能性を感じている」。

4月10日に行われた発表会には、企業として「スタイモアー」に出店するサンリオの町田雄史事業戦略本部デジタル事業開発部ゼネラルマネジャーも参加。サンリオは、「サンリオ バーチャルフェス」を「VRChat」で行っており、第3回を2月19日から約1カ月開催した。第2回開催後にアダストリアから声が掛かり、コラボレーションが実現した。

「(アダストリアには)クリエイターに寄り添い、クリエイターが活躍できる場を作るという点でシンパシーを感じた。『バーチャルフェス』でコラボアイテムを着用するアバターに会う機会があり、同じアイテムを着用する者同士がすぐに仲良くなるのを目のあたりにした。『リアル(コラボ服)も欲しくなったけど、売り切れていた』と会話が盛り上がるのを聞いて、リアルとバーチャルの融合の可能性も感じた。バーチャルファッションのクリエイターとアダストリアがコラボして、リアルの服を作るようなコラボもありうるのでは」と町田ゼネラルマネジャー。「経験がひもづいたときに、モノは価値が上がると考えている。サンリオもリアルでもバーチャルでもそういう機会を作っていきたい」。

没入感を得るためにはハイスペックPCやVRゴーグルが必要など、ハード面のハードルも高く、マスに浸透しづらいのが現実だ。しかし、野村総合研究所の予測(2022年12月発表)によると、国内のメタバース市場は28年には3兆円を超えるとされている。

「まだ規模感がつかめないので目標数字は出せないが、『ブース』は50%増で伸びていると聞いている。デジタルデータの販売で130万円売るヒット作を生み出せることが分かったのは、非常に大きかった」と田中本部長。「レギュレーションのあるデータを販売し、着替えできる技術にも対応するため、普通のECサイトとは裏側が全く異なる。『ドットエスティ』も他社ブランドを扱うようになってきたが、『スタイモアー』はオープンプラットフォームとして、さまざまな企業に参加してもらいたい」。先行者としてエコシステムを構築しながら、これから成長するであろう市場を狙う。

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