ファーストリテイリングで、ユニクロ欧州事業の存在感が増している。コロナ禍以前の成長ドライバーだった中国事業が伸び悩み、店舗のスクラップも今後3年ほど進める計画だが、一方で北米、欧州、東南アジアは好調。なかでも「ユニクロの欧州事業はグループ内でダントツの成長率」(守川卓ユニクロ欧州CEO)を誇り、2024年8月期には欧州事業で売上高2500億円、営業利益400億円を見込む。
英国人女性のTikTok投稿をきっかけに“ラウンドミニショルダーバッグ”がヒットしたことなどを背景に、欧州では客数がコロナ禍前に比べて大きく伸長。特に29歳以下の客の獲得が進んでいるという。ECサイトのデータでは、23年8月末時点で欧州事業の客の35%を29歳以下(19年8月末時点では16%)が占めている。
“LifeWear”というコンセプトや、欠品させない店舗オペレーション、日本流の接客といった要素が現地の客との信頼関係構築につながり、好調に推移しているという。これを受け、欧州での出店を強化。今春は伊ローマ、ミラノ、仏ニース、英エディンバラ、ロンドンなどに出店予定。24年8月期としては10店、25年8月期は15店、26年8月期は20店以上の出店を目指す。それを支えるため、25年に欧州に大規模自動倉庫を建設、ロンドンにR&Dセンターも立ち上げる。欧州でもローカル人材が育ってきたことで、今後はより“個店経営”の意識を強める考え。
23年9月〜24年2月の連結業績は、売上高に相当する売上収益が前年同期比9.0%増の1兆5989億円、営業利益が同16.7%増の2570億円、純利益が同27.7%増の1959億円だった。国内ユニクロ事業は天候要因などで既存店売上高が同3.4%減だったものの、こまめな発注コントロールで大幅増益を達成している。この結果を受け、24年8月期予想は売上収益を前期比9.5%増の3兆300億円に下方修正(修正前は3兆500億円)したが、営業利益は同18.1%増の4500億円で据え置き、純利益は同8.0%増の3200億円に上方修正(修正前は3100億円)した。
「小売業の問題点は人海戦術」
決算会見で柳井正会長兼社長は、グローバルでの経営人材育成に触れる中で、「小売業の問題は人海戦術であること。小売業こそ(さまざまなテクノロジーを活用し)少数精鋭で進めるべき」と言及。ファーストリテイリングは23年春に国内社員の大幅な年収引き上げを行い、その後業界内外に広がった賃上げの流れに先鞭をつけたが、「今後も継続的に報酬を引き上げる」と話した。