PROFILE: 三宮歩/ベイクルーズ ジャーナル スタンダード商品統括Div.SMD
「どのタイミングで、どんなものを、どれだけ売るのか」を設計し、目標の売り上げ達成と利益の確保に向けてさまざまな部署と連携しながら、ブランド運営に携わるのがMD(マーチャンダイザー)だ。ディレクターやデザイナー(企画)、バイヤー、販売員と比べて露出が少ない職種だが、売り上げや在庫消化の向上のために戦略を立て、状況に合わせて都度調整し、結果を分析しながら次の計画に反映する、重要な役割を担う。(この記事は「WWDJAPAN」2024年6月10日号から抜粋・加筆しています)
「WWDJAPAN」2024年6月10日号では、そんなMDの仕事を特集する。MDの仕事は、ブランドによってカバーする範囲と注力ポイントが異なると同時に、仕事のやり方、判断の仕方も人によってさまざまだ。そこで今回は、3人のMDの仕事内容とその魅力を紹介する。
3人目はベイクルーズ「ジャーナル スタンダード(JOURNAL STANDARD)」の三宮歩さんだ。学生時代から「ジャーナル スタンダード」愛用者で、10年ほどの店舗勤務を経て7年前にMDへ異動。スタイリング提案が真骨頂でアイテム数も多い「ジャーナル スタンダード」のウィメンズのオリジナルアパレルを担当する。
「ジャーナル スタンダード」一筋約17年。学生時代から好きだったブランドで販売員になり、副店長、店長と順調にステップアップ。MDへの異動は希望していたわけではなく、本人としては思ってもいなかったという。
「店舗で10年行ってきた仕事内容と全く違っていた。モノ作りについての知識が全くなかったので、商品1つ作るのにどれだけ人が関わり、どれだけ時間が必要かなど、1から学ぶ形のスタートだった」と三宮さんは振り返る。「半年以上先と、4カ月先と、直近のことが全部並行して進むので、説明されても、今一体何をやっているのか、『サンプルが上がってきたけど、これはいつのなんだろう』という感じで、最初の頃は本当に大変だった」。
そこから7年。「セレクトショップ業態ではあるが、7割ぐらいを構成するオリジナルは、ブランドの基幹でもある。デザイナーも含め、皆でブランドを作っていけるのが楽しい」と語る。
「ジャーナル スタンダード」のMDプランは3カ月ごとに策定する。テーマはディレクターとデザイナー5人、MDでムードをプレゼンし合うとこところから始まる。全員から出たものをディレクターとMDが整理し、「このムードで行こう」というものを、簡単なイメージマップにして、デザイナーに戻し、デザイナーがビジュアルとキーワードに落とし込む。
MDはテーマだけでなく、各月の予算と商品構成を組む。月平均で50型程度。おおよそのアイテムや数量、価格など、前年を振り返りながら調整し、大枠を作り、ディレクターに相談しながら決定する。「デザイナーがプレゼンで『絶対これをやった方がいい!』と上げてきたものを盛り込みつつ、これから来そうなトレンドや気候変動も加味して考える」。
スタイリングベースで考える
その枠に沿って、デザイナーがデザイン画を描き、素材が分かるスワッチをセットにして、月毎に貼り付けたボードにしてMDに戻す。ここでデザイナーそれぞれの思い入れなども聞く。スタイリングベースでの提案で、枠にはなかったコーディネートアイテムが加えられたりする。それをディレクターとセクションマネジャーとMDが精査し、組み直し、サンプルを作るものを決定する。「5人のデザイナーはそれぞれアイデアが豊富なので、まずは惜しみなく、たくさんもらえた方が、材料が増える。しかし、そもそもの型数が多いこともあり、サンプルを作るにはコストがかかる。極力最低限に抑えるべく、このタイミングでどれを作るかしっかり検討する」。
数を積むもの、ウィンドーで見せるスタイリングなども反映したボードをデザイナーに戻し、細かいデザインや素材のすり合わせ、価格や原価、納期などを確認。「円安や原材料の高騰など、先が読めない要素が多く、予算や計画に収まるのか、非常に難しい部分でもある」。
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