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ケリング、「グッチ」不調で24年1〜3月期は11%減収 上半期は営業利益45%減の見込み

グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などを擁するケリング(KERING)の2024年1〜3月期(第1四半期)決算は、売上高が前年同期比11.3%減(既存店・現地通貨ベースでは同10%減)の45億400万ユーロ(約7386億円)だった。同社は3月20日に業績の見通しを発表しているが、ほぼその通りの結果となった。

同社の売り上げの74%を小売が占めているが、それを地域別に見ると、西欧は同9%減、北米は同11%減、日本を除くアジア太平洋地域は同19%減と軒並み減収。一方、円安によるインバウンドが増加した日本は同16%増と好調だった。

「グッチ」不調で上半期の営業利益は約45%減の見込み
日本やアジアでアウトレット閉鎖?

ブランド別での売上高は、売り上げの半分程度を占める主力の「グッチ」が同20.5%減の20億7900万ユーロ(約3409億円)と低迷。地政学上の先行き不透明感や、全体的なラグジュアリー需要の減速に加えて、売り上げ比率の高い中国市場での人気低下により苦戦した。

アルメル・プールー(Armelle Poulou)最高財務責任者(CFO)は、アナリスト向けの決算説明会で、「『グッチ』は現在、ラグジュアリーと“アフォーダブル(手の届く価格帯)”の中間という中途半端な位置にあると見なされているのではないか。しかし、それも今後は急激に変わっていく可能性がある」と述べた。

23年9月にデビューショーを披露したサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)「グッチ」クリエイティブ・ディレクターによるコレクションは24年2月後半から販売を開始しており、同ブランドにおける第1四半期の売り上げに占める割合は7%以下だった。プールーCFOによれば、第2四半期にはこれが25%程度に増加するため、状況の改善が期待されるという。

同氏はまた、バッグなどレザーグッズの品ぞろえを拡充することで業績の回復を狙いつつ、日本を含むアジア太平洋地域のアウトレットを順次閉鎖し、定価販売をさらに強化する計画があることを明らかに。しかし、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)前クリエイティブ・ディレクター時代の在庫を処理する関係から、時期については未定とした。

ほかの主なブランドの売上高は、「サンローラン」が同8.2%減の7億4000万ユーロ(約1213億円)、「ボッテガ・ヴェネタ」は同1.8%減の3億8800万ユーロ(約636億円)だった。一方、ケリング アイウエア(KERING EYEWEAR)およびコーポレート部門は、同部門に属するケリング ボーテ(KERING BEAUTE)などが寄与し、同23.8%増の5億3600万ユーロ(約879億円)と好調だった。

フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼CEOは、「困難な年になることは予想していたが、24年第1四半期の業績が大幅に悪化した。特に中国市場の減速や、『グッチ』をはじめとするいくつかのブランドの戦略的な再ポジショニングが売上高への下げ圧力となった。こうした減収や、引き続き長期的な目線でブランドに選択的に投資していくことから、上半期の営業利益は大幅に減少することが見込まれる。全社一丸となってこの苦難を乗り越え、持続的な成長のための盤石な土台を再構築していく」と語った。なお、同社の決算報告書によれば、上半期の営業利益は前年同期比40~45%減となる見込み。

ライバルの王者LVMHと明暗分かれる
株価の動きも対照的

24年に入り、コロナ禍後の旺盛な購買意欲が落ち着いたことや、地政学上の不透明感が続いていることから、ラグジュアリー企業の成長は減速。ケリングのライバルであり、ラグジュアリー分野をけん引するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)も例外ではないが、16日に発表した24年1〜3月期(第1四半期)決算の売上高は前年同期比1.6%減(現地通貨ベースでは同3%増)の206億9400万ユーロ(約3兆3938億円)とほぼ横ばいに踏みとどまった。

また、減収にもかかわらず、17日の株価は前日比2.8%高の804ユーロ(約13万1856円)、23日現在でも16日比2.3%増の799.60ユーロ(約13万1134円)と高値を維持。アナリストらは、高い実績や盤石な経営体制を持つ同社であれば、悪化する経済環境の中でも競合よりうまく舵取りをしていくだろう、という信頼感が株価上昇につながったと分析している。

一方のケリングは、第1四半期の見通しを発表した3月20日、株価は前日比11.9%安の375.20ユーロ(約6万1532円)と急落。時価総額のおよそ62億ユーロ(約1兆168億円)が吹き飛んだ。その後も株価は安値で推移し、23日現在では3月19日と比べて17.8%安の350.20ユーロ(約5万7432円)となっている。

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