フランス磁器ブランド「ベルナルド(BERNARDAUD)」が表参道店で開催するフランス食卓文化を学べるプログラム“アンスティテュート ベルナルド(L’INSTITUT BERNARDAUD以下、アンスティテュート)”が日本上陸1周年を迎えた。“アンスティテュート”はフランス流ホームパーティーでのエチケットやフランス人が愛するチーズなど、さまざまなテーマで定期的にレクチャーを開講。専門家による食のワークショップやテーブルデコレーションなどの実技講座も行っている(1時間、料金3300円)。既存顧客だけでなく、フランス企業の社員もフランスの文化を学びに来るという。
「ベルナルド」では、“アンスティテュート”上陸1周年を記念し、エレーヌ・ユレ=ベルナルド財団ディレクターが来日した。
32年前に「ベルナルド」に加わったユレは美術史の専門家でフランス様式に深い造詣があり、同ブランドの歴史を紡いできた人物の一人。「ベルナルド」といえば、ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)やJR、カンパーナ兄弟(Campana Brothers)という名だたるアーティストとのコラボレーションで知られる。メゾンの情報発信などの広報活動をはじめ、協業するアーティストとのコミュニケーションも彼女の役割だ。彼女は、「ベルナルド」の活動に文化的・歴史的側面を加えることを目的としたベルナルド財団や“アンスティテュート”の立ち上げに尽力した。フランスの食卓文化や“アール・ド・ヴィーヴル(生活芸術)”の啓蒙を目指す。アーサー・ベルナルド=ベルナルド ジャパン社長は、「フランス様式はとても豊かで、多くのラグジュアリー・ブランドのインスピレーション源になっている」と述べた。
フランス様式の歴史と「ベルナルド」の歩み
ユレは来日イベントで、フランス様式や陶磁器の歴史とそれにまつわる「ベルナルド」の歩みについてレクチャーを行った。陶磁器にはテラコッタやボーンチャイナ、磁器などがあり、磁器は最も焼成温度が高く、焼くと形が変わるため、美しい磁器をつくるには高度な技術が必要だ。磁器は7世紀に中国で生まれ、18世紀にヨーロッパへ持ち込まれた。1768年にリモージュで磁器生産に必須の原料であるカオリンが発見されて以来、ヨーロッパでも磁器の生産が可能になり、王侯貴族に愛され、広まっていった。
「ベルナルド」はナポレオン3世の治世時に製陶所として誕生。1986年にベルナルドグループは王立製陶所を結合し、18〜19世紀のオリジナルの作品の再現を行なっている。“コンスタンス”シリーズには、ナポレオン1世が好んだ“インペリアル・グリーン”を基調に、権力や長寿、平和を象徴するナラやローリエの葉、ドングリなどをあしらった。ルーブル美術館の建築から着想を得た“ルーブル”には、これまでのフランス様式のあらゆる要素が詰め込まれている。
「ベルナルド」の妥協なきモノづくり
1980年以降、「ベルナルド」では新たな磁器の使い方に着目し、技術革新を進めてきた。環境にやさしく、独特の質感と絵柄が描ける磁器は、プラスチックに変わりラグジュアリー・ブランドに注目されるようになった。そして、「ベルナルド」は「ゲラン(GUERLAIN)」やフランス発スキンケア「ソティス(SOTHYS)」、カリフォルニアのワイナリー「ロバート・モンダヴィ(ROBERT MONDAVI)」など、さまざまなブランドの商品のパッケージを制作。また、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のパリ・モンテーニュ店の壁一面には「ベルナルド」の磁器が使用されている。ユレは、「『ゲラン』のパッケージは漆のような質感と艶を出すのに苦労したし、磁器の建材としての強さを証明するのには時間がかかった。妥協せず、匠の技と革新性を融合しながら良いものをつくっている」と話した
ベルナルド財団は6月21日〜2025年3月29日、「アプソリュ(ABSOLU.)」という展示会をリモージュで開催する。美術史家でありフランス国際陶芸アカデミー副会長のステファニー・ル・フォリック・ハディダがキュレーションを手掛け、13人の国際的なアーティストの作品を展示する。オランダのパウラ・バスティアンセンやフランスのジャン・ジレルのほか、林康夫や金子潤らの作品が選ばれた。同財団では、毎年テーマを設けた展覧会を開催しており、現代陶芸作品や、フランスでは滅多に紹介されない国際的なアーティストの作品を展示している。