県内外で定評のある〝沖縄コスメブランド″を紹介する企画の第2弾。今回取り上げるブランドは、元・大手日用品メーカーの研究員だった女性が、沖縄移住をきっかけに大自然の恵みからインスパイアされて開発したスキンケア「フローモ(FROMO)」。石渡みち代「フローモ」代表・商品開発ディレクターに取材した。
――:石渡さんは東京から沖縄に移住されたそうですが、そのきっかけは?
石渡みち代「フローモ」代表・商品開発ディレクター(以下、石渡):私は出身が千葉で、東京で働いていたのですが、主人が沖縄に移住することになり、私も東京の会社をやめて、こちらに来ることになりました。
――:東京ではどんな仕事を?
石渡:日用品メーカーで研究員をしていました。植物由来の界面活性剤などを用いて洗剤を作ったり。その後は、以前から興味があった建築デザイン事務所に転職しまして。設計士・インテリアコーディネーターとして仕事をしていました。
――:日用品研究員からインテリアコーディネーターまで幅広いキャリアですね(笑)。でも、それぞれのキャリアがきっと化粧品開発やブランディングに生かされているのでしょうね。では、「フローモ」を立ち上げたきっかけを教えてください。
石渡:実は沖縄に移住してから、日光アレルギーである“日光過敏症”を発症してしまいまして。首やデコルテに発疹ができてしまったのですが、それが月桃水をつけたらみるみる完治して。その肌効果に驚いたことや、沖縄の自然に囲まれた生活を送るなかで、東京では得られない癒やしを得たこともあり、この自然の恵みをカタチにしようと思い、ブランドを設立することにしました。
――:では、初めに開発したのは月桃の化粧水?
石渡:はい。月桃の化粧水とスキンケアオイル、固形ソープの3点です。化粧水は月桃蒸留水100%と精油、さらにハチミツやグリセリン、ベタインを配合することで保湿力を強化しています。月桃は沖縄では昔から肌荒れにいいとされていることもあり、私自身が敏感肌ではありますが月桃は精油も配合しています。
――:確かに敏感肌には精油は刺激が強すぎる気がしますが、月桃は大丈夫、というか、むしろ肌に有効なんですね。そして「フローモ」にはもう一つ、“2830(にーはちさんぜろ)”というラインがありますね。こちらのライン名の意味は?
石渡:“2830”は月の満ち欠けの周期である28日と、ミツバチの平均的な寿命である30日の数字を組み合わせたものです。沖縄では中国の影響から旧暦文化が根付いていて、旧正月や旧盆など大きなイベントもあります。また、地元の方からは「満月の時に子どもがよく生まれやすい」とよく聞くこともあり、体内リズムを自然な状態に整えようという思いをこめてライン名にしました。また、ミツバチについては月桃化粧水を作った頃からハチミツの薬理作用に注目していまして。特に沖縄には“タイアワユキセンダン草”というキク科の野草があらゆる場所に自生しているのですが、この花を蜜源にしたハチミツには一般的なハチミツにはない、肌にいいビタミンB6・B7やポリフェノールなどが検出されたこともあり、このハチミツやミツロウがブランドのスター成分に相応しいと思い採用しました。
――:だから、ショップの隣に養蜂箱があったのですね! ミツバチがぶんぶんと元気に飛んでいました(笑)。
石渡:自社でハチミツも用意しようと、いまは巣箱を20箱ほど管理しています。スキンケアに配合するハチミツであれば充分な量を採取できています。
――:ハチミツや月桃のほか、県産のオリーブオイルや植物オイルも積極的に活用されているそうですね。
石渡:はい。県内の農家などで破棄されている素材のアップサイクルにも取り組んでいます。その活動が認められ、沖縄特産のみかん「カーブチー」と月桃を用いた天然バーム“Fofo ビーバーム”は、サステナブルコスメアワード2021にてブロンズ賞を獲得することができました。
――:SDGsにも意欲的に取り組まれていますね。
石渡:養蜂もそうですが、これからも県内で作られている素材を有効活用することで、サーキュラーエコノミーに貢献するような化粧品づくりを心掛けていきたいと考えています。