台湾の文化部と経済部が主催の「台北ファッションウィーク(Taipei Fashion Week)」2024-25年秋冬シーズンが台北で4月25〜29日に開催し、期間中に2024年パリオリンピック・パラリンピックで台湾代表の選手団が着用する公式ウエアを披露した。
デザインしたのは台湾発のファッションブランド「ジャスティン ダブリューエックス(JUST IN XX)」のジャスティン・チョウ(周裕穎)=デザイナーで、東京五輪に続いて自国の公式ウエアを手掛けた。今回のデザインには地元の伝統工芸と最新のテクノロジーを組みわせており、「サステナビリティとアート、工芸、ファッションの4つの要素を組み合わせている」とチョウ=デザイナー。その言葉通り、表面的なデザインだけでなく、素材からディテールまで、国の特徴を前面に押し出したデザインが特徴だ。
自国らしさをデザインでアピール
スーツの表面は台湾の山と海を曲線で表現したジャカードの凹凸が飾り、ブルー中心のカラーリングに、海面に輝く日光をイメージしたイエローを織り交ぜた。工芸の取り入れ方にも、ファッションデザイナーらしいユニークなアイデアが際立つ。例えばジャケットに付くワッペンには、カキの殻を回収して作った生地を用いており、シューズのアッパー部分は、バナナの茎を再利用した、台湾原住民族の間で伝わるバナナシルクの技術で織り上げた。またジャケットの胸元に付く梅の花と菜の花のブローチは、台湾の伝統工芸である纏花(チャンホァ)の技法を採用している。纏花は細いワイヤーに紙片を糸で巻きつけた手工芸で、紙片には地元警察が賭博の取り締まりで押収したカードを再利用したという。
グラフィックには、アートの要素をふんだんに取り入れた。インナーのポロシャツの柄は台湾にある13県の形状をカラフルに表現したもので、“Chinese Taipei”の文字が格子状に並ぶ。文字は台湾のテキストデザイナーと協業し、天地逆さにすると中国語で“頑張る”に見えるレタリングだ。オリンピックの公式ウエアにはスローガンを入れてはいけないというルールをユーモアと創造性で乗り越え、代表選手団の士気を上げる。
ポロシャツには台湾の素材開発力を生かし、環境に配慮した素材を使っている。生地には世界初となるカーボンキャプチャー技術を用いて、工場から排出されたCO2を回収して低炭素の人口繊維に変換し、ゲルマニウム繊維をたっぷり加えた機能素材を開発した。チョウ=デザイナーは、「数値的には、森を歩いているぐらいリラックスした効果が期待できる」と説明する。国を代表する選手たちのウエアをデザインすることについては「選手だけではなく、全国民に期待されているからプレッシャーはある。でも、チャレンジしがいもある。パリではいろいろな国の公式ウエアが集まるので、コンテストに挑むような気持ちでデザインしているんだ」とほほえんだ。