ロレアル(L’OREAL)は、5月にパリで開催した世界最大級のテックイベント「ビバ・テクノロジー」で最新のビューティテック・イノベーションを発表した。製品テストの向上と動物実験減少のため、人間の皮膚を模倣したバイオスキンを開発。また、ブランドイメージに準拠したローカライズコンテンツ制作のため、生成AIによる美容コンテンツの研究所であるクリエイテック(CREAITECH)と協業している。
ロレアルのR&Iとテクノロジー部門で副最高経営責任者(CEO)を務めるバーバラ・ラヴェルノス(Barbara Lavernos)は、「ロレアルは美容技術のパイオニアとして、テクノロジーが美容の可能性を拡大し、世界中の人々の生活向上に寄与すると確信している」と話す。多様な人間の皮膚を模倣したスキンテクノロジーは、生物学や機械工学、電子工学を融合し、世界中の新興企業や研究機関と共に開発に取り組んでいる。
ロレアルはまた、3DやAR、AIの次世代クリエイターを奨励し、美容における新たなクリエイティビティを促進するためにメタ(META)と提携し、「ニューコード・オブ・ビューティクリエイター・プログラム」を実施している。ロレアル傘下の「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」や「ランコム(LANCOME)」「ケラスターゼ(KERASTASE)」「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」はすでに同サービスを活用してコンテンツを制作。アスミタ・デュベイ(Asmita Dubey)=ロレアル デジタルマーケティング責任者は、「テクノロジーは人間の創造性と掛け合わせることで、自己表現とブランド表現の強力なツールとなる」と話す。「生成AIに各ブランドのユニークなビジュアルコードを学習させれば、より迅速に革命的なキャンペーンが打てる。本物そっくりの画像を外部コミュニケーションに使用しないという、“責任あるAIの原則”を損なうことなくだ」と続ける。
「ロレアル パリ」の“ビューティ ジーニアス(BEAUTY GENIUS)”という生成AIを搭載したパーソナル・ビューティアシスタントは、24時間365日、パーソナライズした診断と提案をユーザーに提供。消費者は、美容知識を増やせる。「ロレアル プロフェッショナル(L'OREAL PROFESSIONNEL)」の“マイヘア ID ヘアリーダー(MY HAIR [ID] HAIR READER)”は、同グループ初のAIを搭載したヘアカラー分析ツールだ。超精密光学を用いて髪の健康状態を調べ、白髪率や毛髪の直径、密度などを測定し、それぞれのユーザーに相応しいヘアカラーを提案する。
「キールズ(KIEHL'S SINCE 1851)」の“ダーマリーダー(DERMA-READER)”は、臨床画像技術を使って顧客の肌を評価し、肌の表面だけでなく真皮まで測定して11以上の属性に分類、適切な成分やライフスタイル、毎日のスキンケア習慣を提案する。「ランコム」の“レナジー ナノ・リサーフェイサー 400 ブースター(RENERGIE NANO-RESURFACER 400 BOOSTER)”は、特許取得済みのナノチップ技術を搭載した家庭用美容機器で、化粧品の浸透を高め、商品の性能を増幅させる。
さらにロレアルは、デジタル活動から発生する二酸化炭素排出量を評価し、環境への影響を削減するため3つの企業とパートナーシップを結んでいる。仏スタートアップのインパクト(IMPACT+)とフラッガー(FRUGGR)はそれぞれ、デジタルメディアとウェブサイトのカーボンフットプリントを測定する。広告業界の二酸化炭素排出量削減を目指すイギリスのアドグリーン(ADGREEN)は、コンテンツ制作現場のカーボンフットプリントを測定。これらの数値をもとに、環境に配慮した予防策を講じている。