石油と無関係の生活を送ることは難しい現代社会。それは便利な一方で環境に与える影響も大きい。サキュレアクトがその石油に替わる原料として普及と活用に取り組んでいるのが、微細藻類から作られるソラルナオイルだ。塩原祥子代表取締役は「化粧品業界の負のループを目の当たりにしたことが代替エネルギービジネスに携わるきっかけ」と吐露する。
塩原代表はさまざまな形で25年間化粧品業界に携わり、直近のドラッグストア商材を扱う企業に属していた際に「何千店舗もある大手ドラッグストアとの取り引きがいったん決まると、1SKUにつき1〜2万点納品することになる。販売期間が過ぎるとそれが返品されるわけだが、各店舗独自の防犯タグやシールなどが付いており、それを付け替えての再販は現実的には難しい。保管しても倉庫代がかかるため、結局、安売り業者に卸したり、産業廃棄物として廃棄したりするしかない。化粧品の原料は水以外のほとんどを世界各地から輸入しているわけで、CO2を出して大量に作って売り、今度はお金を払ってCO2を出して大量廃棄する負のループを目の当たりにし、『いったい私は何をやっているんだろう』と嫌気が差した」ことから一度は化粧品業界を卒業した。
その後、22年7月、微細藻類のソラリスとルナリスに出合い再び化粧品業界に戻ることになった。「この微細藻類から石油由来の燃料に替わるSAF(持続可能な航空燃料)を作る研究をしているのがJ-POWER。国際的には50年までの航空分野のカーボンニュートラルという長期目標が掲げられており、現在、さまざまなバイオマスエネルギーを研究している。その一つであるソラリスとルナリスは太陽光と海水、CO2、栄養塩があり、条件が整えば連続的に短期間で増殖する。このソラリスとルナリスを使って、SAFになるまでの過程でできることがあると思い、23年3月にサキュレアクトを起業した」。
そして、「化粧品原料の9割は水と油だ。その油を石油由来ではなく、国内で培養されるソラリスとルナリスから抽出するソラルナオイルを基材として使用できたら面白いなと。さらに、プラスチックの原料にもなるため容器にも使える」と、オリジナルブランド「530(ファイブサーティー)」からソラルナオイル含有の第1弾商品の石けん“シーデザインソープ(SEA DESING SOAP)”を6月10日にマクアケで発売する。同商品は、プラスチック容器を使わない、製造時に水を多く使わない・CO2排出量を極限まで減らせるなどが特長。生活の中からプラスチック商品を減らすきっかけになればとの思いから誕生した、天然由来成分100%で肌にも海にも優しい石けんだ。今後は「ソラルナオイルという名前を普及させ、微細藻類の素晴らしさを伝えていきながら、エネルギーとして未来につながることを広めていきたい」と前を向く。
TEXT : YOSHIE KAWAHARA
サキュレアクト
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