米ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)は、ヘインズブランズ(HANESBRANDS)から、「チャンピオン(CHAMPION)」を12億ドル(約1872億円)で買収する契約を締結した。
契約には知的財産権と一部の営業資産の買収のほか、「チャンピオン」の業績によって3億ドル(約468億円)をヘインズブランズに追加で支払う条件付き対価が含まれている。なお、4月2日には、10億ドル(約1560億円)強で買収する非公式な合意に至っていた。
ABGは今後、「チャンピオン」の製造、デザイン、物流、運営などを外注に切り替えるかもしれず、大規模な人員整理につながる可能性もありそうだ。
親会社も「チャンピオン」も業績不振
「チャンピオン」はここ数年にわたって業績が低迷しており、2023年10~12月期(第4四半期)におけるグローバルでの売上高は前年同期比23%減、直近の24年1~3月期(第1四半期)は同26%減だった。
親会社のヘインズブランズも不調で、23年12月期の売上高は前期比9.6%減の56億3652万ドル(約8792億円)、営業利益は同44.4%減の2億8878万ドル(約450億円)だった。純損失は前年の1億2720万ドル(約198億円)から1772万ドル(約27億円)と大幅に縮小したものの、引き続き31億ドル(約4836億円)程度の負債を抱えている。
24年第1四半期で見ると、売上高は前年同期比16.8%減の11億5620万ドル(約1803億円)、営業利益は同9.1%減の5210万ドル(約81億円)だった。純損失は前年同期の3440万ドル(約53億円)から3912万ドル(約61億円)へと拡大している。
ヘインズブランズによれば、今回の取引による売却益は負債の返済に充てるという。
ABGは「チャンピオン」買収でポジションをさらに強化
ジェイミー・ソルター(Jamie Salter)ABG会長兼最高経営責任者(CEO)は、「当社とパイオニア精神を共にする『チャンピオン』を買収することができ、とてもうれしく思う。ここ数年、新たなブランドの獲得やライブイベントの拡大を続けてきたことが奏功し、当社はスポーツおよびエンターテインメント分野のライセンシングにおける世界のリーディングカンパニーとなった。『チャンピオン』の買収は、当社のポジションをさらに強化してくれるだろう」と語った。
スティーブン・ブラッツピーズ(Stephen Bratspies)=ヘインズブランズCEOは、「今回の取引によって当社の事業構成はよりシンプルになり、運営や財務状態の改善が見込まれる。今後は、インナーウエア分野におけるリーダーシップを強化すると同時に、適切な運営体制を整えるなど新たなコスト削減策を打ち出し、さらなる株主還元を行っていく」と述べた。
ABGは、「フォーエバー21(FOREVER 21)」、「リーボック(REEBOK)」「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」「テッドベーカー(TED BAKER)」や、スポーツ月刊誌「スポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)」など、さまざまなカテゴリーで多数のブランドを保有している。23年4月には「クイックシルバー(QUIKSILVER)」「ビラボン(BILLABONG)」「ロキシー(ROXY)」「DCシューズ(DC SHOES)」などを擁する米サーフウエア会社ボードライダーズ(BOARDRIDERS)を、6月にはラバーブーツで知られる英ブランド「ハンター(HUNTER)」の知的財産権を買収。10月には、「フォーエバー21」のライフスタイルおよびファッションカテゴリーにおいて、グローバルSPAブランド「シーイン(SHEIN)」と長期的なパートナーシップ契約を締結した。
「チャンピオン」は1919年、ニューヨークのローチェスターで誕生。メンズおよびウィメンズのスポーツウエアやカジュアルウエア、フットウエアなどを製造販売している。日本では、2016年3月にゴールドウインが「チャンピオン」事業をヘインズブランズ ジャパンに譲渡している。