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リシュモン傘下高級ECのYNAP、アリババとの合弁会社を終了か

コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)が擁するラグジュアリーEC大手のユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)は、2018年に中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)と設立した合弁会社フェンマオ(FENGMAO)を近日中に終了するようだ。情報筋によれば、フェンマオのヤーティン・ウー(Yating Wu)最高経営責任者(CEO)が、その旨の社内メモを送ったという。本件について、YNAPのコメントは得られなかった。

YNAPの成り立ちと中国市場への進出

YNAPは、リシュモンの子会社だったネッタポルテが2015年にユークス グループと合併して誕生。ウィメンズを中心とした高級EC「ネッタポルテ」、メンズの「ミスターポーター(MR. PORTER)」、リーズナブルな価格の「ユークス」に加えて、ディスカウントECの「アウトネット(THE OUTNET)」を運営している。リシュモンはYNAPの株式の49%を保有していたが、18年に残りの株式を買い付けて完全子会社化した。

ネッタポルテは13年に中国に進出し、15年に中国事業を設立。「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するリシュモンはその後、本格的に中国市場に進出するべく、18年にアリババと戦略的パートナーシップ契約を締結してフェンマオを設立した。「ネッタポルテ」と「ミスターポーター」の中国版アプリを開発したほか、両サイトはアリババが運営する高級EC「ラグジュアリー・パビリオン(LUXURY PAVILION)」にオンラインストアをオープンした。一方で、やはり中国に進出した「アウトネット」は厳しい価格競争に直面して15年に、「ユークス」は19年に撤退している。

中国のECブームが下火になった理由とは?

20年には、リシュモンとアリババ、そして当時ラグジュアリーECとして急成長していたファーフェッチ(FARFETCH)の3社が、グローバルな戦略的パートナーシップを契約を締結。リシュモンとアリババはファーフェッチに3億ドル(約471億円)ずつ投資したほか、ファーフェッチが新たに設立した合弁会社ファーフェッチ・チャイナにも2億5000万ドル(約392億円)ずつ投資して、合計25%の株式を取得。ファーフェッチは提携の一環として、「ラグジュアリー・パビリオン」、同アウトレット専用プラットフォーム「ラグジュアリー ソーホー(LUXURY SOHO)」、同越境ECサイト「Tモールグローバル(TMALL GLOBAL)」に、ラグジュアリー専門のショッピングチャネルを開設した。

しかし、アリババが独占禁止法に違反したとして、21年4月に中国の国家市場監督管理総局が182億2800万元(約3827億円)という巨額の罰金を課したことや、中国版インスタグラム「シャオフォンシュウ(Xiaohongshu、小紅書、通称RED)」などのSNSやライブ配信での販売が台頭したことで、「Tモール」をはじめとするECは厳しい競争に直面。その後、コロナ禍が落ち着いて実店舗への客足が戻ったこともあり、中国でのECブームは下火となった。

YNAP売却を進めるリシュモン

情報筋によれば、YNAPは資金やリソースをコア事業およびより収益性の高い地域に集中させるため、中国市場からの撤退を計画しており、フェンマオ事業の終了はその一環だという。しかし、ほかの理由として、リシュモンがYNAPの売却を進めていることもあるだろう。

リシュモンは23年8月、YNAPの株式の47.5%をファーフェッチに売却することに合意。しかし、取引が成立する前にファーフェッチが経営破綻の瀬戸際にあることが判明し、同年12月に韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)が買収。これを受けてリシュモンは取引を中止し、24年1月にはYNAPの株式を100%売却することも検討していることを明らかにした。その後、5月に発表した24年3月期決算の説明会で、ブルクハルト・グランド(Burkhart Grund)=リシュモン最高財務責任者は、「(売却の)プロセスは進行しており、複数の当事者がかかわっている」と発言。24年12月末までに取引が成立する予定だという。

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