アシックスは、テニスやバレーボール、サッカー、ワーキングシューズなどで構成するコアパフォーマンススポーツ(CPS)事業の成長戦略を発表した。CPS事業の中でも特にテニスシューズは、圧倒的な基幹事業である「ランニングに次ぐ収益の柱に育てる」と富永満之社長COO。富永社長直轄の“Tプロジェクト”を立ち上げ、トッププレーヤーとの製品の共創や草の根でのブランド浸透の両面で強化を進める。2026年12月期には、テニスシューズで売上高300億円を目指す。
「先日、全仏オープンテニスを視察に訪れ、当社製品のマーケットでの強さ、伸び代を実感した」と富永社長は投資家やアナリストに向けた説明会でコメント。全仏大会に出場した男子選手128人のうち、グランドスラム24回達成のノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)選手を含む31人がアシックスのシューズを着用しており、うち20人はアドバイザー契約選手以外だったという外部調査を提示した。アシックスの31人に対し、競合のナイキは21人、アディダスは16人と、アシックスがシェア1位。結果を受けて「多くの地域においてテニスシューズでアシックスはシェア1〜2位となっている」と自信を見せつつも、「競合メーカーも強く圧倒的な1位とは言えない」と続ける。
ランニングカテゴリーで行ってきたのと同様に、ユーザーテストで集めたアスリートやテニス愛好者の声と、アシックススポーツ科学研究所による動作分析などのデータを融合し、製品を進化させていく。また欧州を中心に、選手たちへの影響力が大きいコーチが参加するテニスアカデミーを活用し、ブランドへの信頼感を醸成、シェア拡大につなげる。「ランニングのトップ選手は一般消費者にはなじみがないケースもあるが、テニスのトップ選手はスーパースターであり、それゆえラグジュアリーブランドが選手をスポンサードしていることもある。われわれもテニス選手と契約することで、会社やブランドとしての認知向上につながれば」という狙いもある。
CPS事業ではテニスに次いで、バレーボールなどのインドアスポーツ、さらに国や地域のニーズに合わせて、サッカー、バスケットボールといった競技も強化していく。アシックスのカテゴリー別23年12月期売上高は、基幹のパフォーマンスランニングが前期比10.7%増の2859億円。CPS事業は同33.2%増の721億円、カテゴリー利益は128億円だった。オニツカタイガー事業やスポーツスタイル事業も成長著しいが、売上規模としてはCPSがパフォーマンスランニングに続く。