アメリカ西部開拓時代のムードを帯びた、“カウボーイ・コア”のトレンドが盛り上がってきました。火付け役は、シンガーのビヨンセ(Beyonce)。アルバムジャケットやワールドツアー、グラミー賞授賞式でのスタイルが注目を集めました。カウボーイハットやフリンジ、ウエスタンブーツなどの象徴アイテムがワイルドなイメージを引き立てます。この流れは秋以降もさらに盛り上がる気配。夏のうちから手なずけておいて、秋冬に備えるのがよさそうです。
原型はカウボーイですが、今はライトな取り入れ方が主流。例えば「アール サーティーン(R13)」は、ワークウエア風のシャツとデニムのミニスカートで構成しました。ニーハイブーツはほんのりウエスタン調で、イヤリングとネックレスにも同様のテイストがうかがえます。コテコテになりすぎないので、自己流のアレンジがしやすいトレンドです。今回は、国内外のランウエイルックから、カウボーイならぬ“カウガール”テイストの扱い方をご案内します。
グラマラスな大人カウガール
今季のカウガールは、ウエスタン色が濃すぎない程々のさじ加減が肝心です。基本は“1点投入”。ハットは顔周りの目立つポジションなので、1点でもしっかりムードを演出できます。
「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」は、テンガロンハットでカウガールを押し出しました。残りをグラマラスなアイテムで固めるのが、今年らしいまとめ方。ゴールドのスカートとベルトが“カウレディー”への格上げ効果を発揮。ブラックのシャツがハットと調和しています。
フリンジとユーズド感の協奏
カウガールの雰囲気を醸し出すディテールの代表格といえば、フリンジ。馬のたてがみのような見え具合が、ウエスタン気分を呼び込みます。
オーバーサイズのアウターをミニワンピースのように着こなしたのは、「コーチ(COACH)」。両袖に配した長めのフリンジが、動きを加えています。古着のような風合いが、ヘビーデューティーなたたずまい。ブーツもほのかにウエスタン調で、白の小ぶりなバッグでうまくムードをずらしています。
ウエスタンを“薄味”にアレンジ
現代のカウガールは、見た目の印象を抑えた“薄口”が持ち味です。いかにも武骨なカウガールルックは避けるのが得策。キーアイテムは使わず、雰囲気をほのめかすスタイリングなら濃度も低いので、いろいろなシーンで着られるメリットがあります。
「セブン バイ セブン(SEVEN BY SEVEN)」は、シャツやブーツにウエスタンテイストをうっすらと漂わせました。レザーのパッチワークスカートも、どことなくカウガール風。白ソックスでスクールガールな雰囲気も添えて、ムードをはずした小技が冴えています。
ミニスカートでガーリーさをプラス
その名が示す通り、少女ライクな雰囲気も兼ね備えているのがカウガールの特徴です。本来はタフなカウボーイの装いを、キュートにひねっているところに新しさがあります。キャミソールやミニスカートがイメージにピッタリです。
「ティート トウキョウ(TIIT TOKYO)」のカウガールルックは、たっぷりのフリンジを垂らしたミニスカートがキーピース。ジャケットの袖にもフリンジ風のディテールを添えました。Tシャツの胸に描かれたのは、前足を上げた馬のモチーフ。白のロングブーツでクリーンな印象に整えました。
上下デニムでヒッピームードを添えて
ウエスタンを象徴する素材にデニムがあります。もともとカウボーイたちの作業着に使われていたので、デニムのセットアップはカウガールの基本形。ダメージ感を盛り込むと、さらに西部開拓時代のイメージに近づけられます。
「セヴシグ / アンディサイデッド(SEVESKIG / (UN)DECIDED)」は、ユーズド感のあるデニムのセットアップ。ジーンズのクラッシュ具合がアイキャッチー。裾に施したフラワーモチーフが、ヒッピー時代のフラワーチルドレンのムードも宿らせています。自然を愛し、平和を求めたヒッピー精神は、おおらかに暮らした西部開拓時代に通じるところがあります。ワークシューズ風の足元もウエスタンムードを呼び込んでいます。
ノスタルジーの対象でもあるカウボーイ時代。“カウボーイ・コア”の下地になっているマインドは、音楽フェスティバルやキャンプなどとも共通点があります。秋冬にも続く可能性が高いので、今から先取りしておきたいトレンドです。