ファッション

映画「チャレンジャーズ」のゼンデイヤに学ぶ 夏の“テニス・コア”コーディネート術

映画「チャレンジャーズ(CHALLENGERS)」のゼンデイヤ(ZENDAYA)の影響で、テニスウエアにインスパイアされたファッションスタイル"テニス・コア”がトレンドになっている。

2010年代のアスレジャートレンドはヒップホップに影響を受け、ストリートスタイルに傾倒していた。そんな中、ここ数シーズン続いている“クワイエット・ラグジュアリー”がストリートスタイルの流れを変え、今夏公開された映画「チャレンジャーズ」の衣装を通して“テニス・コア”のレトロでプレッピーなスタイリングの人気が高まっている。

SNSで話題を集めたゼンデイヤのプレスツアーがトレンドのきっかけであったことは間違いないが、ここ数年のラケットスポーツの人気によって全国に増設された何千ものピックルボールコートや、テニス用具の売れ行きが急上昇したことも関連があると言えるだろう。「テニスウエアが兼ね備えているスポーティーさとシックさのバランスは、パンデミック後のワードローブの変化において、快適さを保ちつつも、スエットをよりスタイリッシュなものに変える役割を担っている」と、サーカナ(CIRCANA)のアパレル業界アナリスト、クリステン・クラシ=ズンモ(KRISTEN CLASSI-ZUMMO)。「アスレチックドレスやスカートなど、テニスにインスピレーションを得たウエアの汎用性は、スポーツそのものと同様に売り上げに大きな影響を与えている」という。

ファッションアナリストの@databutmakeitfashionによると、“クワイエット・ラグジュアリー”テニスアウトフィットは今までにないほどの需要と供給の高まりをみせているそうだ。そしてその注目度の高さは、このワードに関連する投稿がTikTokで3100万回以上の再生回数と検索回数を記録したことからもうかがえる。また、テニススタイルの人気度は5月の「チャレンジャーズ」公開後、わずか1カ月間で80%増加したという。さらに、「ラコステ(LACOSTE)」のグリーンテーラリングとクロコダイルグラフィック(テニス界のスター、ルネ・"クロコダイル"・ラコステへのオマージュ)を取り入れたルーツに忠実な秋のコレクションや、1970年代にインスパイアされた「グッチ(GUCCI)」のテニスカプセルコレクション、「アロー・ヨガ(ALO YOGA)」のシックな“テニス・コア”コレクション、さらには「ミュウミュウ(MIU MIU)」のここ数シーズンのコレクションが、ローライズのプリーツスカートやポロシャツを2024年のファッションの最前線に押し戻した。

そこで、エディターが組んだ夏のテニスアウトフィットをいくつか提案する。スタイリッシュかつこの先何シーズンもローテーションで使えるアイテムばかり。以下、デザイナーズコレクションのテニスドレス、テニススカート、テニスアクセサリーから「ルルレモン(LULULEMON)」、「アディダス(ADIDAS)」といったブランドまで紹介する。

カントリークラブ アイコン

このルックに身を包めば、どんなカントリークラブでもベストドレッサーになること間違いない。ゼンデイヤが着こなす「トリー バーチ(TORY BURCH)」のツーピースセットは、吸汗速乾性に優れたピケ素材で、エメラルドとエレクトリックグリーンの豊かな色調がテニスコアファッションに映える。プレッピーな“シェブロン ポロ”ニットは、クラシックフィットで裾にはサイドスリットが入っており、おそろいのミニテニススカートは、セーフティーショーツと機能的なボールポケット付きだ。これらにあしらわれたオフホワイトのストライプを引き締めるために、同色のプラットフォームスニーカーと日差しを遮るサンバイザーでアクセントを加えた。

コートサイド ブルー

「ルルレモン」の白のプリーツテニスワンピースは、無数のコーディネートを組むのに理想的なベースだ。そこに正統派「ウィルソン(WILSON)」のテニスキャップ、「セオリー(THEORY)」の“テニス・コットンカシミヤセーター”、そしてネイビーのディテールが施されたキャンバストートバッグを合わせ、深いブルーの色合いをコーディネートしてみた。日中はセーターを肩にかけてプレッピーな雰囲気を楽しみ、夜になって気温が下がり始めたらプリーツスカートの上にさっと羽織るのはどうだろうか。

ラケットは必要なし

“テニス・コア”トレンドの魅力は、スポーティーでシックな魅力をまとうために、実際にテニスコートに立つ必要がないことだ。白、青、緑のコアカラーにアスレジャーアイテムを合わせれば、ワンランク上のアンサンブルになる。そこでパリ・ファッションウイークのストリートスタイルにインスピレーションを得て、「カサブランカ(CASABLANCA)」の1970年代風トラックジャケットと「スタウド(STAUD)」のラップコートスカートを選んだ。アクセサリーは、ローファーやクロスボディーバッグでも良いけれど、あえて「ジャックムス(JACQUEMUS)」のビーチっぽいストライプのクラッチバッグと「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」のヒールサンダルを選び、リゾートレディーな感覚を取り入れた。

何気なく“オールドマネー”

おそらく映画「チャレンジャーズ」で最も記憶に残るファッション的瞬間は、「ロエベ(LOEWE)」の「I TOLD YA」と書かれたスローガンTシャツだろう。このTシャツは、劇中でゼンデイヤとジョシュ・オコナー(JOSH O’CONNOR)の衣装として登場しただけでなく、両俳優のプレスツアーのストリートスタイルやレッドカーペットのための小粋な小道具としても活躍した。「ロエベ」のデザイナー、ジョナサン・アンダーソン(JONATHAN ANDERSON)は、ジョン・F・ケネディ JRの"オールドマネー"的な淡々とした色気にヒントを得て、シンプルなグレーのコットンTシャツを、大学生アスリートのワードローブにありそうなアイテムと組み合わせた。

私たちは映画のスチールからそのまま引っ張り出したアンサンブルに、「ルルレモン」のショートパンツを組み合わせた。劇中でゼンデイヤとジェニファー・ローレンス(JENNIFER LAWRENCE)が「ロエベ」の“リラックス フィット コットン Tシャツ”に黒のパリッとしたスラックスを合わせていたように、ここでもパンツには黒を選び、さらにアップルウォッチバンドで洗練さをプラスした。仕上げにゼンデイヤとパートナーシップを結ぶ「オン(ON)」のグリーンのアクセントが施された新しいテニスシューズでアクセントを追加した。

テニススター シック

「アディダス」はテニスと密接に関係のあるブランドだ。中でも不朽の名作である”スタン スミス シューズ”は、1990年代にその名の由来となった人物とヒップホップアイコンたち、つまりプロの推薦者たちがこぞって支持したおかげで、史上初の“イット”スニーカーのひとつとなった。「チャレンジャーズ」でゼンデイヤが演じたテニス界のスター、タシ・ダンカン(TASHI DUNCAN)も「アディダス」とスポンサー契約を結び、スリムフィットのテニスドレスからクラシックなスニーカー“スーパースター”や”スタン スミス”を着用し、頭からつま先までスリーストライプスのコスチュームに身を包んだ。

この懐古主義的な雰囲気に合わせ、新作のテニスコート風Vネックセーターベストを、仕事から遊びまで使えるようにスタイリングした。涼しげなトップスとして着ても良し、ベストのコントラストストライプを引き立てる吸汗速乾Tシャツに重ねてもなお良しだ。おそろいのプリーツスカートに合わせたセクシーなテニスウエアは、汗だくのテニスプレーヤーというより、「ミュウミュウ」の"オフィス サイレン"のようだ。仕上げに真っ白の“スタン スミス ラックス スニーカー”を合わせれば、クラシックなスタイルにモダンなひねりを加えることができる

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