6月初旬にヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)=アーティスティック・ディレクターが突如退任した「シャネル(CHANEL)」は、ファッション・クリエイション・スタジオのチームで2024-25年秋冬オートクチュール・コレクションを制作した。ショー会場となったのは、パリ国立オペラ座。メゾンと深いつながりを持つ場所を舞台に、「シャネル」の揺るぎないコードと150人の職人が働くクチュールアトリエのサヴォアフェールを生かしたクリエイションを披露した。
「シャネル」とオペラ座、そしてバレエの深い関係
「シャネル」は、18年からパリ・オペラ座バレエ団の新シーズンのオープニング・ガラをサポート。その後、21年からは同バレエ団のパトロンになり、23年からはオペラ座を後援している。「オペラ座でショーを開くのは、常に夢のようなものことだった」とブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=ファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデントは明かす。
それだけでなく、メゾンとバレエは密接な関係にあり、創業者ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)は、かつてセルゲイ・ディアギレフ(Sergei Diaghilev)主宰のバレエ団バレエ・リュスによる「青列車」(1924年)や「ミューズを率いるアポロ」(1928年)のために衣装を制作。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)とヴィアールもバレエ衣装を手掛けるという伝統を継承してきた。振り返ると、ヴィアールは昨シーズンのクチュールでも、メゾンとバレエとの絆に着目したコレクションを見せていた。
衣装への敬意を「シャネル」スタイルに融合
象徴的な大階段を上ったところにある回廊に設けられたランウエイを歩くモデルたちがまとうのは、さまざまな衣装への敬意を「シャネル」のスタイルに取り入れたルックだ。例えば、アイコニックなツイードスーツやコートは、タッセルやカボション、ビジュー、パールなどで華やかに。チュチュのミニドレスはバレリーナをほうふつとさせ、水着のようなスポーティーなショーツは「青列車」の衣装へのオマージュのようだ。そして、ボリュームたっぷりのオペラコートやブラウスには、ラッフルやパフスリーブ、リボンでロマンチックな要素とプラス。ラッカー加工を施したジャージーが放つ光沢が、クラシックなスタイルにアクセントを加えている。
終盤には、異素材のミックスやきらめく装飾が際立つ「シャネル」らしいブラックドレス群を披露。最後はおとぎ話のプリンセスのようなマリエ(ウエディングドレス)を着たモデルが登場し、フィナーレへ。大階段にモデルがズラリと並ぶドラマチックな演出で、ショーを締め括った。
「重要なのは『シャネル』であること」
まだヴィアールの後任は発表されていないが、パブロフスキー=プレジデントは急いで後継者を探すつもりはないようだ。「今後数週間から数カ月の間に、シンプルかつ徐々にプロセスは進んでいくだろう」とし、「重要なのは、『シャネル』であること。メゾンには、ブランドを深く理解した強力かつ有能なチームがいる。そのおかげで、たとえ私たちが比較的迅速な決断を望んだとしても、時間をかけて正しい選択をすることができる」と述べた。
2024-25年秋冬オートクチュール・ファッション・ウイークが6月24日から4日間、パリで開催された。今季の公式スケジュールに名を連ねたのは、27ブランド。「ヴァレンティノ(VALENTINO)」と「フェンディ(FENDI)」が発表を見送り、いつもよりも控えめなラインアップとなったが、その中から選りすぐりのコレクションをリポートする。