今、百貨店は過渡期にある。個人の価値観が多様化し、コロナを経てオンライン消費がますます浸透した。業態の存在意義が問われる中、それでも人が集まる店の条件とは何か。決め手は、品ぞろえでも立地でもなく、情熱と個性を持った“人”の存在だ。百貨店が元々持つ強みに光を当てたり、枠を超えて新分野を開拓したりと、編集力やアイデアを駆使して売り場を面白くしようとする人たちがいる。百貨店パーソンたちの個性が売り場で花開けば、可能性はまだまだ広がっていくはずだ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年7月22日号からの抜粋です)
品ぞろえと店舗、生かすのは“人”
都心の百貨店は、円安の恩恵を受けるインバウンドと富裕層が買い支え、どこも追い風が吹いている。中国本土からの本格回帰が期待される中で、好況はまだまだ続く。こちらの記事では、そんな都心店と、一方で苦境にあえぐ地方店のくっきりとした明暗を、百貨店ビジネスの現在地として解説する。とはいえ、ラグジュアリーブランドや時計などの高額品に頼りきりの状況は、果たして百貨店本来の姿と言えるのだろうか。本特集の核になるのは、毎年恒例のトップインタビュー。それぞれの経営トップは、インバウンドや富裕層消費だけに頼らない成長の道筋を描く。
社長たちの言葉から見えてくるキーワードの一つが「ローカル」だ。東京、大阪以外の名古屋、神戸、札幌、その他にも観光客が流れれば、元気のない地方店に再びスポットライトが当たる契機になる。日本の伝統産業を主役に“新特選”と呼ぶ新カテゴリーの構築を構想するのは、 高島屋の村田善郎社長。土着の産業に光を当て、百貨店の目利きでジャパン・ラグジュアリーを発掘し、目の肥えた客に提案する。有松絞り(愛知県)のブランド「スズサン(SUZUSAN)」は、伝統技術をモダンに昇華し、カシミヤストールやマフラーは12万〜13万円ながら店頭でも好評だ。
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