「トム フォード(TOM FORD)」のクリエイティブ・ディレクターを務めるピーター・ホーキングス(Peter Hawkings)がブランドを去ることが明らかになった。創業デザイナーのトム・フォードからクリエイティブのトップのバトンを受け継いで、わずか2シーズンでの退任となる。9月に発表する2025年春夏シーズンについては、ミラノで展示会形式で発表予定。後任のデザイナーについては、間もなく発表するという。
ピーターは、トム・フォードが「グッチ」のトップを務めていた1998年、メンズウエアのデザインアシスタントとして「グッチ」に入社。その後、「グッチ」ではメンズのシニアデザイナーにまで昇格したが、トム・フォードが自身の名前を冠にしたブランドを立ち上げると2006年に移籍。最終的には「トム フォード」メンズのトップを務め、サングラスやバッグ、シューズ、ジュエリーなども監修した。トムからは全幅の信頼を得て、ブランド全体のクリエイティブのトップに就任したはずだった。
「トム フォード」は現在、「トム フォード ビューティ」ブランドのもとでフレグランスやカラーコスメなどを手掛けているビューティ企業のエスティ ローダーが知的財産などを取得しているが、同社はファッションの中核からは遠く、現在実質のビジネスはライセンス契約を踏まえてファッション事業全般の生産などを手掛けてきたゼニア グループが担っている。ピーターの突然の退任は、グループのジルド・ゼニア(Gildo Zegna)代表取締役会長兼最高経営責任者の影響である可能性が高い。
「トム フォード」を世界でトップ10のファッションブランドに育てたい意向のゼニア会長兼CEOは、レリオ・ガヴァッツァ(Lelio Gavazza)をトム フォード ファッションのCEOに任命している。トム フォード ファッションは買収や組織変更に伴い赤字決算だが、ファッション事業は順調に成長していた。一方、ピーターのクリエイションについては、賛否両論だったという。
ゼニアは現在、「エルメネジルド ゼニア」のほか、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」を手掛けている。