2009年から続く「WWDBEAUTY」のベストコスメ特集では、バイヤーのアンケートをもとに本当に売れた商品を表彰する。連載「ベスコス歴代名鑑」では、15年以上続く本特集の中でも常にランキングに入賞する“傑作”をピックアップ。時代を超えて愛される理由や商品の魅力について、美容ジャーナリストの加藤智一が深掘りする。今回は「アディクション(ADDICTION)」の“ザ アイシャドウ”にフォーカス。
全99色展開で推計500万人が購入
「アディクション」の単色シャドウ“アイシャドウ”が全33色のラインアップで発売されたのは2009年のこと。それ以降、15年に99色へとバリエーションが大幅に拡張され、さらに20年には全99色の刷新と、15年にわたり歩みを進めてきた。現在では百貨店の店舗、EC、セミセルフをあわせて、推計500万人に購入されているといい、名実ともに“単色シャドーの雄”といえる存在になっている。
その飛躍の理由は、時代を超えて愛され続けているタイムレスなシェードにある。たとえば、12年に発売されて以来、いまなおベストセラーとして君臨している“マリアージュ”。シャンパンベージュの華やかな輝きの中に、大粒のシルバーパールやラメがきらめくシェード。アイホールには色はほぼのらず、星屑のようなきらめきだけが輝くため、単体でぬればまぶたに抜け感を演出する。重ね塗りする色を選ばないという魅力もある。また、下まぶたに使えば“涙袋メイク”が簡単に仕上がるなど、抜群の汎用性が口コミ人気を獲得。店頭カウンターには「“マリアージュ”をください」と指名買いする人が後を絶たないという。
KANAKOクリエイティブディレクター就任で転機
20年にクリエイティブディレクターにKANAKOを迎えて“ザ アイシャドウ”をリニューアルした際、発表した“ムーンリバー”も人気を得ているシェードだ。パールの表現がより繊細に演出できるようになったことで、目もとの透明感を引き出すブルーパールを新開発。手持ちのアイシャドウに、この“青ラメ”をプラスすることで「可憐でシアーな質感になる」とSNSや美容誌でも話題に。あまりの売れ行きに欠品が1カ月ほど続いてしまったという。
日本のアイメイク史に与えた大きな影響とは
このような数々のスターシェードの存在は、日本のアイメイク史にも大きな影響を与えている。09年当時、アイシャドウのグラデーションは濃淡の仕上がりが一般的だったのが、「マリアージュ」が大ヒットしたことで、そのグラデーションが濃淡から質感へと進化。さらに20年の「ムーンリバー」のヒットによって、異なる質感を重ねて立体感を生み出すという〝質感革命″をもたらした。
アディクションの前クリエイティブ・ディレクターであったAYAKOが“ザ アイシャドウ”で「99色の究極のベーシックカラー」をそろえ、現クリエイティブ・ディレクターのKANAKOは6つの異なる質感で「色と質感の組み合わせ」を提案した。そのクリエーションに呼応するように、日本人のアイメイクは多様化したのである。