PROFILE: 熊谷隆志/スタイリスト、クリエイティブ・ディレクター(左)と工藤大輝/Da-iCE
「ゾゾタウン」は、5人組男性アーティスト「Da-iCE」のメジャーデビュー10周年を記念したコラボレーション企画の第2弾として、世界で活躍するマルチ・アーティストのダニー・サングラ氏による描き下ろしイラストを使用したアイテムを、8月2日から「ゾゾタウン」限定で受注販売する(8月19日11:59まで)。2つのコラボのディレクションをつとめたスタイリストの熊谷隆志と、服好きで知られる「Da-iCE」のファッション番長である工藤大輝の対談をお届けする。
Da-iCEが「ゾゾタウン」とコラボレーションした理由
―メジャーデビュー10周年、おめでとうございます。
工藤大輝(以下、工藤):ありがとうございます。メジャーデビューしてからの10年は本当にあっという間でした。2017年に、Da-iCEの結成6年目の記念日に行った武道館公演がひとつのターニングポイントになったことは、みんなでよく話していて、振り返ってみると、解散していた可能性だってあったと思います。結果的に、メンバーみんなで楽しく活動しながら、こうして10周年を迎えられたのでとても嬉しいです。
―記念すべきタイミングで、ZOZOTOWNとのコラボレーション企画がスタートした。
工藤:10周年なので、いわゆる「グッズ」ではなく、自分たちがご一緒したい方とコラボしたり、みんなが欲しいものを形にするほうが良いのではないかという話をしていたので、今回は念願が叶ってとても素晴らしい機会でした。
―コラボ企画第一弾となる「Da-iCE × WIND AND SEA」は即完。制作はどのように進めた?
工藤:まさか憧れの熊谷さんと直接やり取りさせていただける日が来るなんて、想像もしていなかったので、打ち合わせの度に緊張していました。本当にありがとうございました。
熊谷隆志(以下、熊谷):工藤さんは洋服について、僕よりも多くのことを知っているんじゃないかと思うくらい詳しい(笑)。最初に会ってすぐに、「この人は本当の服好きだ」ということが分かった。知識の豊富さに加え、とにかく「服を着ること」をよく知っている。アパレルやファッション業界人と話しているような感じだった。なので、こちらも提案がしやすかったし、結果的にデザインは、無駄が削ぎ落とされたシンプルなものになったなあ。
工藤:ありがとうございます(笑)。両親とも服好きだった影響もあって、僕自身も子どもの頃から服が好きで、Da-iCEの前は渋谷の「アメリカンアパレル」で販売員をやっていました。服は衣装も含めて毎月かなり買っています。とはいえ、熊谷さんと一緒に洋服を作らせていただくということもあって、事前にけっこう準備もしました。
―特にこだわった点や、オススメのコーディネートはありますか?
工藤:セットアップのジップを、僕の好みでダブルジップにしてもらったんです。上までキュッと閉めるけど、下は少し開けて、中のレイヤーを見せる着こなしが、90年代のヒップホップの雰囲気があって好きなんです。踊っている時も、中の服やシルエットがきれいに見える。ここはこだわりました。
熊谷:実際にDa-iCEのメンバーに、今回のコラボアイテムを着てもらって、僕が撮影をしたときも、踊りが入るとまた洋服の雰囲気が違って見えた。服も一緒に動いてくれるというか。作った甲斐があったな、と。
ダニー・サングラとコラボ!キュートな「Da-iCE」グラフィック誕生の裏側
―今回は、熊谷さん監修によるアーティスト・ダニー・サングラをパートナーに迎えた、第二弾コラボアイテムを発表した。キュートなグラフィックが誕生するまでの経緯は?
熊谷:まずは僕からDa-iCEの皆さんに、グラフィックアーティストを何名か提案して、皆さんが選んだのがダニー・サングラさんのアートワークだった。
工藤:どの方も超大物ばかりで、本当に素敵で悩みましたが、Da-iCEというグループの個性を考えた時に、一番相性が良さそうなのが、ダニー・サングラさんでした。
―グラフィックのデザインはどのように詰めていった?
工藤:僕らのアルバムのタイトルや、自分たちのキーとなるワードを落とし込みました。実際にダニー・サングラさんとリモートで会話もさせていただきました。様々な高級メゾンの仕事をされているのにとても気さくで、素敵な方でした。いろんなグラフィックを作ってくださったので、まずアイテム数を絞るのに一苦労(笑)。ワークシャツはお気に入りで、今回のコラボがリリースされるのは秋口なので、ロンTとレイヤードして着回したりしても可愛い。
熊谷:ボトムスは、今日工藤さんがはかれているようなパンツと合わせたりしても可愛いよね。
―工藤さんは、おしゃれなDa-iCEのメンバーの中でも特に、ファッション好きとして知られている。
工藤:母が北海道のファッションの専門学校出身で、物心つく前から、いろんなジャンルの洋服を着せてもらっていて、僕も自然と好きになりました。ものづくりなども好きな母だったので、音楽の道に進むと言ったときも、反対されることはなく、好きにやったら良いと背中を押してもらえました。
熊谷:僕も母が美大出身だった影響で、毎日いろんな格好をしていました。家の中のカラーリングが、他の同世代の友達の家とは違う印象が幼心にあった。僕は南部鉄器という伝統工芸の家に生まれたので、後継という道から逃れるために、小さい頃からずっと、ファッションをやっていきたいという主張をしていた。「東京に行きたい、パリに行きたい」って(笑)。パリの専門学校を卒業して、ファッションの道に入って、今年で30周年目です。
―今回のコラボでやりとりする中で、熊谷さんから見えた工藤さんというアーティスト像は、どのような印象?
熊谷:一言でいうと「柔軟」。リズムに乗って生きているような身軽さがとても素敵だな、と。最近の僕は昔に比べると、フットワークが重くなってきている部分もあるので、今回のコラボで昔の気持ちを取り戻したような気にもなった。とても刺激を受けた。
工藤:恐縮です。このインタビュー前にご挨拶にうかがったときに、今日も熊谷さんは午前中ゴルフに行かれていたと聞いて、驚きました。僕よりも全然柔軟でフットワークが軽い(笑)。熊谷さんはゴルフのブランドもやられている。趣味とお仕事が結びついているんだなあ、とも感じました。
熊谷:趣味を仕事にしないとやる時間がないんですよ。
―工藤さんにとって、ファッションは趣味に分類されるんでしょうか?
工藤:難しいですね。Da-iCEのメンバーでいる以上、自分の好みだけではなく、グループのカラーに合わせたファッションに寄り添う必要があって。Da-iCEの衣装を探す時は、普段は行かないような少し尖ったショップに行ってみたり。Da-iCEはダンスボーカルグループなので元を辿るとヒップホップ。そのカルチャーを無視した服装でヒップホップを踊ると、説得力がなくなってしまう。そういったことも意識してスタイリングを選んでいるので、100%趣味とは言い切れないかも。
熊谷:ファレル・ウィリアムス以降は、スーツを着てもヒップホップって言われるようにもなったから、少し選択肢の幅は広がっているよね。
―やはり音楽とファッションは、根っこの部分で繋がっている?
熊谷:最近20代の子たちとよく一緒に仕事をする機会があって、最近、「熊谷さん、渋谷系ってかっこいいですよ」とかって言うんですよ(笑)。
工藤:漫画『NANA』も今めちゃくちゃ流行っていますよね、その流れからヴィヴィアン・ウエストウッドのORB ネックレスも再注目されていて。ORBが最初に流行っていた時代って、僕いくつだっけみたいな(笑)。
熊谷:僕も当時を知っているから話せるんです、20代の子とは。僕は彼ら・彼女らのご両親くらいの年齢なので、小さい頃に無意識に聞いていた音楽が潜在意識にあって、ファッションに影響を与えたりするんじゃないかな。あとは、今の古着屋さんに並んでいる洋服は、僕ら世代の人が出したものが多いから、自然と昔の流れが戻ってきたり。20年サイクルだしね、流行は。
工藤:今のダンスボーカルの流行りも90年代〜2000年代前半くらい。服装もB系で、ティンバーランドがまた流行っていたり。確かに自分も昔、履いていたなって(笑)。
―お二人の今のファッションのムードはいかがですか?
熊谷:10年前くらいにネイティブアメリカンの感じを取り入れていましたが、「ウィンダンシー(WIND AND SEA)」をはじめたことで、ちょっとストリートな雰囲気にいってみたりもしていて。最近は、ネイティブっぽい感じと今のストリートをミックスさせた感じが好きかなあ。
工藤:僕は今年37歳になるんですけど、少し前までは大人っぽく見せたくて、きっちりした格好を好んで着てました。ドメスティックなブランドを取り入れた、綺麗めな格好みたいな。でも最近は、人からの見られ方はあまり気にしなくなってきたので、ストリートに寄る日もあったり、自由にファッションを楽しんでいます。今日は、熊谷さんのブランドの「ネサーンス(NAISSANCE)」のトップスをメインに合わせました。アクセサリーは、ヨーロッパのもので揃えている。僕は「ビオトープ(BIOTOP)」が好きでよく行くんですけど...
熊谷:「ビオトープ」はアパレル会社のジュンさんと僕で作ったんですよ。
工藤:えー!めちゃめちゃ行きますし、お世話になっています。大好きです!
2人が贈るファッションを楽しむ若い世代へのメッセージとは?
―それでは最後に、お二人のようにファッションを楽しむ若い世代に、メッセージをお願いします。
工藤:あまりSNSのアルゴリズムばかりに乗らないほうが良いんじゃない、と思っています。自分の好きなものの延長だけを追うのではなく、音楽やファッションは、冒険して、失敗を繰り返した先に、自分だけの発見があるから面白い。カルチャーもジャンルも異なるアイテムにチャレンジすることを、楽しんでもらいたいです。
熊谷:スマホとネットだけで買い物をしていた若い世代に最近、「ブーン(Boon)」や「ポパイ(POPEYE)」のバックナンバーを読んでみたりする子が増えてきた。ファッションのことを質問されると、なんでも教えちゃう。あと古着屋さんも今はすごく元気なので、おしゃれの入門が古着というのもありだと思う。工藤さんも言っていたように、いろいろ試して、どんどん新しい出会いに繋げていって欲しい。