米百貨店サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FITH AVENUE以下、サックス)などを擁するカナダの小売り大手ハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY以下、HBC)はこのほど、米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS以下、ニーマン)やバーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を運営するニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG)を26億5000万ドル(約4054億5000万円)で買収することに合意した。今回の買収を支援する投資家の中にはアマゾン(AMAZON)も名を連ねる。百貨店という主要なビューティチャネルへの影響が予測される。
HBCの革新的な戦略が好影響か
フレグランスブランド「ネスト(NEST)」のエドガー・フーバー(Edgar Huber)CEOは、「この合併は、プレステージビューティに好影響を与えるだろう。HBCは過去数年間、店舗に投資し、新たな小売店やシェアオフィスを立ち上げ、現代的な商品戦略を構築してきた。アマゾンとの提携により、物流の効率化やデジタル化も進む可能性がある」と話す。近年、「クリニーク(CLINIQUE)」「キールズ(KIEHL'S SINCE 1851)」「トゥー フェイスド(TOO FACED)」などのブランドが、長年避けていたアマゾンに参入している。
両社の運営の差異や店舗数減少を懸念する声も
一方、懐疑的な見方もある。スキンケアブランド「リヴィーブ(REVIVE)」のエレナ・ドレル・ザイファー(Elana Drell-Szyfer)CEOは、両社の美容へのアプローチは異なることを強調する。「HBCは昨今、デジタルを通じてビジネスを推進することに重点を置いている。NMGのように店舗体験や上顧客向けの施策、アンバサダーによる店内イベントに力を入れていない。どのような影響を与えるかはまだわからない」と述べた。
米化粧品小売大手のアルタビューティ(ULTA BEAUTY)やセフォラ(SEPHORA)に出店していないプレステージブランドにとっては、流通チャネルが減少も見込まれる。不動産調査会社グリーンストリート(GREEN STREET)によると、サックスとニーマン双方の店舗があるショッピングモールは全米で8つある。このうち売り上げの低い店舗を閉鎖する可能性もあるだろう。「高級ブランドがビジネスを拡大する場所はますます減少している。両社の統合だけでなく、数年前にNMGが破産して13店舗を閉鎖したことにも関係している」とザイファーCEO。
WSLストラテジックリテール(WSL STRATEGIC RETAIL)のウェンディ・リーブマン(Wendy Liebmann)CEO兼チーフショッパーも、この合併がブランドの交渉力に与える影響を懸念する。「ブランドにとって、一社と取引することでビジネスが損なわれたり、相手の交渉力には叶わなかったりと懸念がある。大きく強大な会社は、個々のブランドストーリーにまで耳を傾けてくれるのだろうか?」という。