PROFILE: 福島成美/「アッシュ(Ash)下北沢店」ディレクター
SNSにより個人での集客が可能になった今、美容師の“セルフブランディング”の重要性が増している。さらに多様な働き方が可能になったり、得意分野を持つ“特化型美容師”が登場したりするなどの背景もあり、これまでの画一的なフレームを超える個性や特徴を備えた美容師が求められている。そうした“次世代型”の美容師にスポットを当てる当連載。第2回は、“透明感カラー”で人気の「アッシュ(Ash)下北沢店」福島成美ディレクターに話を聞いた。
WWD:美容師を目指したきっかけは?
福島成美「アッシュ 下北沢店」ディレクター(以下、福島):中学生のとき、髪のクセに悩んでいて、毎日ヘアアイロンに時間をかけないとうねりがひどい状態だった。そこで親に相談して縮毛矯正をかけたところ、ビフォー&アフターの違いがすごくて、乾かしただけでストレートになるように。それが、「美容師ってすごい!」と思うようになったきっかけだった。高校生になると、お祭りの際にヘアアレンジをしてもらうなど、美容師とのかかわりが増え、「美容師になりたい」と思うようになった。美容専門学校の授業の中に、「アッシュ」のスタッフが教えてくれるカリキュラムがあり、そこでのつながりを通して「アッシュ」で働きたいと思うようになった。
WWD:「アッシュ 下北沢店」の客層は?
福島:下北沢は住宅街でもあるので、周辺の人が主要な顧客。けれど下北沢に遊びに来る際に寄ってくれる人も多いので、遠方からのお客さまの割合も高い。年齢層は幅広いが、私のお客さまには高校生~20代後半の女性が多い。顧客の嗜好としては、おしゃれな人が多いけれど、エッジィなデザインを求める層は少ない印象。カラーリングのニーズは高く、7〜8割がワンカラー、2〜3割が(インナーなどポイントカラーも含めた)ブリーチデザインをオーダーするお客さまだ。
WWD:サロンワークのこだわりは?
福島:私はカラーが得意で、カラー比率はかなり高い。 ここ数年は、明るく透明感のあるカラーや、インナーカラーの人気が継続している。学生を中心に、前髪や顔周りにブリーチを入れたデザインカラーのオーダーが多く、パーソナルカラーを踏まえた提案を行っている。その際に気を遣っているのが、カウンセリングでの仕上がりイメージの共有。学生には慣れていない人も多いので、例えば同じ青味でも赤寄りかクール寄りかなど、画像を見てもらいながら繊細に行っている。
WWD︰今のトレンドカラーは?
福島︰韓国トレンドの影響で、春夏は鮮やかな赤、赤ピンク、紫のオーダーが多い。寒色だと、透明感のある暗過ぎないカーキベージュがトレンドだ。赤味を消したいニーズは継続して高く、特に「赤味を消して透明感を出したい」という人がかなり多いので、「イルミナカラー」の「アーバンスカイコレクション」を使う機会が増えている。
WWD︰グレー系の新色“ムーンライト”と“ナイトスカイ”?
福島︰そう。どちらも赤味を取って色を均一にしてくれるので、明るくしつつ透明感を出しやすい。ブリーチなしでそれができるので、職場などで明るさに制限がある人にも提案しやすい。“ムーンライト”を使うことが多いが、赤味が強いときには、少し深みのある“ナイトスカイ”をアレンジしている。
WWD︰ワンカラーが多い?
福島︰比較的ワンカラーが多い。ブリーチで明るくしてから色を入れると、さらに透明感を出せるが、ブリーチによるダメージを気にする人が多い。ただ「アーバンスカイコレクション」から「ライトニングシステム」が出たので、「ブリーチはしたくないけれど透明感はほしい」「明るくしたいけれど、ブリーチをするほどではない」というニーズには、それで対応するようになった。そういうニーズは本当に高い。
WWD︰実際にブリーチとの違いは感じる?
福島︰特に違いを感じるのは、仕上がりの髪の手触り。ブリーチすると髪が細くなり、過度に柔らかくなってしまうケースが多いが、「ライトニングシステム」だと芯が残り、ハリコシを感じる印象。ブリーチほどダメージがないので、縮毛矯正の履歴のある人や、髪が細くなっている人にぴったりだと思う。傷みを気にせず、ブリーチオンカラーをやり続けるお客さまはごく一部で、「縮毛矯正をかけた後にブリーチをしたら、髪が傷んで後悔した」と話すお客さまも多い。そうした「エッジィなデザインは求めていないけれど、ダメージに配慮しつつおしゃれを楽しみたい」という、当サロンの主要顧客にはとても提案しやすい。
WWD:今注力していることは?
福島:クリエイションに力を入れている。入社して2~3年目くらいから撮影を始めて、最初はサロンスタイルの撮影だったが、4~5年目くらいからモードなクリエイティブ作品も作るようになった。昨年は、世界最大級の美容師コンテスト「ユナイテッド・ダンクス・コンテスト 19」のフォト部門でグランプリを受賞したり、社内コンテストでグランプリを受賞したりと、成果を出すことができた。作品をSNSにも投稿したが、「こういった作品も作っているんだ」と、けっこう反響があった。今後もさらに、さまざまなコンテストにチャレンジしていきたい。