日本上陸から丸5年。今秋で36店舗、年間売上高500億円規模にまで急成長した「H&M」。日本でファストファッションは受け入れられるか、と疑問視されていたが、ふたを開けてみれば、一大ブームを巻き起こし、今やすっかり定着。地方を含めて着々と多店舗化を進めているところだ。日本での成功の理由は何なのか?今後の戦略と課題はいかに?日本法人の立ち上げから今まで陣頭指揮を執ってきたクリスティン・エドマンH&Mジャパン社長のインタビューと、仕掛けてきたプロモーション、そして、最新情報をまとめた。「WWDジャパン」9月9日号では、ファストファッション特集と題して、「トップショップ(TOPSHOP)」「フォーエバー21(FOREVER21)」「ザラ(ZARA)」「ジーユー(GU)」などを紹介。
ーー5年間を振り返り、率直な感想は?
長い道だったが、あっという間だった気もする。今秋には鹿児島、札幌にオープンし、北から南まで全国に店舗網が広がる。まだ開店日には行列ができる。期待していただき感謝している。
ーー最も困難だったことは?
一番悩んだのは、店舗展開について。落ち着いて戦略をうまく立て、ベストなロケーションを確保したうえで、余裕を持って出店のペースを決めることができなくて。ありがたいことに多数のオファーをいただいたが、出店は簡単だが、各店舗のスタンダード(あるべき姿やクオリティ)を守ることは難しいし、店数が少なければ少ないほどスタンダードをキープしなければブランディングできない。教育には時間がかかるし、店舗も各地に散らばっていったので、かなりチャレンジングだった。
ーー日本での売り上げ状況は?
日本にはファッションに興味がある方がとても多く、1坪当たりの売上高は世界でダントツのトップだ(編集部調べ)。既存店ベースで見ても、我々は好調だ。2011年3月の震災後、売り上げが一時的に落ちた時期があったが、それを除けば、右肩上がりに伸ばせている。効率化や効果的なプロモーション、そして、コレクションが年々良くなっていることなどからしても、努力し、安定化することで、さらに売り上げは伸びていく。
ーー特に注力した点は?
グローバル企業として海外のやり方をそのまま持ってくるのではなく、日本のカスタマーの声を聞くことだ。日本の中でも地域や、立地(路面店とモール店)では求められるものが異なる。それらにフレキシブルに対応した。ストアマネジャーやMDの意見をすぐに本国に伝え、色やサイズなどを調整するが、展開国が40ヵ国以上あるため、最初は日本の声の扱いが小さくて苦労した。店数も増え、売り上げが伸びる中で、声が大きくなった。最近ようやくフィットするコレクション(商品構成)ができるようになった。
ーー日本独特の動きや売れ筋は?
日本は季節やトレンドの先取りが早い。ニット商品は毎年夏からよく売れ始めるし、今年は白いボトムやメンズのショートパンツの人気が高かった。デザイナーズコラボレーションやカプセルコレクションもいち早く売れる。逆に、ベアトップなど売れないものもある。
ーー日本で独自バイイングはできる?
売れないと判断したものをバイイングしないことはできるが、「ファッションはグローバル」というブランドコンセプトがあるので、外さずに仕入れ数量を減らすというものもある。これらの精度が上がっているのも好調要因だ。
ーー日本のマーケットは上陸時と今では大きく変わったと思うか?
1号店を開いた銀座を見ただけでも様変わりしている。「フォーエバー21 」が松坂屋に出店したり、「ユニクロ」が旗艦店を作り、跡地に「ジーユー」が出店したり、観光客の増減など、いろいろなことがあった。消費者の支出も厳しくなり、プライス・センシティブな(価格に対する意識が高い)お客さまが増えている。競合はますます激化している。