日本上陸から丸5年。今秋で36店舗、年間売上高500億円規模にまで急成長した「H&M」。日本でファストファッションは受け入れられるか、 と疑問視されていたが、ふたを開けてみれば、一大ブームを巻き起こし、今やすっかり定着。地方を含めて着々と多店舗化を進めているところだ。日本での成功 の理由は何なのか?今後の戦略と課題はいかに?日本法人の立ち上げから今まで陣頭指揮を執ってきたクリスティン・エドマンH&Mジャパン社長のイ ンタビューと、仕掛けてきたプロモーション、そして、最新情報をまとめた。「WWDジャパン」9月9日号では、ファストファッション特集と題して、「トップショップ(TOPSHOP)」「フォーエバー21(FOREVER21)」「ザラ(ZARA)」「ジーユー(GU)」などを紹介。
ーー本国は「アジアに積極投資をする」と明言している。日本にも投資が集中し、出店ペースが上がりそうだが?
確かに2012年度の7店舗に対して、13年度は15店舗を出店するなど、出店スピードは倍増している。年間50店舗近く出店する中国には負けるが、競争するつもりはないし、我々は落ち着いてブランディングしていく。
ーー未出店エリアも多いし、銀座や新宿など大都市圏でのエリア内複数出店も可能そう。優先順位は?
大都市への出店はもちろんしたいけれど、物件に空きがない。日本上陸から3年目までは我慢して、銀座、原宿、新宿、渋谷など大都市部を中心に出店したが、 今は大都市で探しつつ、並行して郊外型モールに出店する。ファミリー層に向けてワンストップで「H&M」のファッションが購入できるよう、生活者 の導線上に店を作っていきたい。大都市部のほうがファッションに敏感だけれども、日本には本当にファッションが大好きな人が多いし、特に男性のファッショ ンセンスが高いので、地方でも好調だ。今後は駅ビルや空港店舗なども出していきたいし、アウトレットも検討している。
ーー米国では8月にeコマースが始まったが、日本での展開予定は?
まだまだ「H&M」の世界観を確立しないと。「H&M」で買い物をしたことがない人も多いし、ブランドの認知度や理解を上げることが先 決。ただ、ゾゾタウンで「アンナ・デッロ・ルッソ」や「マルジェラ」などとのデザイナーズコラボのポップアップストアを展開してきた。
ーー強みの一つである物流体制は。
世界中から集まった商品は一度、アウトソーシング先の川崎の倉庫に入る。4〜 5人の分析者が駐在し、完全単品管理で、毎日、新商品と補充商品を納品したり、店舗間移動をしている。
ーー日本は家賃や人件費などコストが高い国。収益は上げられているのか。
コストが高くても、売り上げが高いので十分収益が上がっている。しかも、「コスト削減」「効率」「キープ・イット・シンプル」と言い続けている。今、従業 員数が2365人(うち、パートタイム1491人)に増えたが、サポートオフィスは倉庫を入れて68人に抑制。レイヤーを入れずに、フラットで、誰でも意 見が言える、シンプルでフレキシブルな組織にしている。また、自分はAからZまでのジョブ、という風に決めないで、自分の成長に合わせてレベルを上げたり 領域を広げるなど、コモンセンスを使って自分でイニシアチブをとって働くように呼び掛けている。
ーーグループの「モンキ」「ウィークデイ」が6月に日本上陸したが、「COS」「&アザー ストーリーズ」などの上陸は?
これは物件次第。出店を期待されている方々が多いし、早くお披露目できることを私も楽しみにしている。