三井不動産は「服のリサイクル」をテーマにした大型店舗「木更津コンセプトストア」(千葉県)を昨年6月に開いた。ファッション企業と連携して余剰在庫やB品、アップサイクル品をテーマパークのような空間で販売する。入店には入場料300円(中学生以下無料)を支払ってもらう。前例のない取り組みばかりで注目を集めた。オープンから1年。新しい事業モデルは確立されたのだろうか。
都心からクルマで東京湾のアクアラインを渡って1時間ほど。同社の旗艦モールの三井アウトレットパーク木更津(MOP木更津)の隣接地にある。木更津コンセプトストアは大掛かりな宣伝広告をしたわけではないが、MOPの集客力も生かしつつ、入店者数は初年度約10万人でほぼ計画通りだった。MOPのついでの立ち寄りではなく、木更津コンセプトストア自体を目的に東京や神奈川方面からやってくる人が想定以上に多かった。
リゾートやキャンプの催事も
入り口の券売機で300円の入場料を払う。同時に、その入場料および商品代金の一部を寄付するリサイクル企業や団体を選択する。
入場料を払うことで客の購買意欲にスイッチが入り、敷地面積7300平方メートルの編集売り場で宝探しのようなショッピングを楽しむ心持ちになる。A〜Eのゾーンを一方通行で進む。プロジェクトを担当する三井不動産の伊藤榮輝氏は「ほとんどが一点もののため『とりあえずカートに入れる』というお客さまが多い。平均滞在時間は1時間半〜2時間なので、じっくり選んで下さっているようだ」という。
店舗プロデュースを手掛けるのは、ユニークなリサイクルビジネス「パス ザ バトン」のスマイルズ。オフプライスストアのように同一商品を積み上げることはしない。百貨店向けのブランドやショッピングセンター向けのブランドを棚に混在させて、ミックスコーディネートで展示する。ブランドや価格のイメージに縛られない新鮮な服との出会いを演出する。在庫の状況を見ながら、パンツのフェアを開催したり、リゾートやキャンプをテーマにしたVMDを組んだり、趣向を凝らすようになった。
店舗コンセプトに賛同するアパレル企業
木更津コンセプトストアの仕掛け人である三井不動産・商業施設本部長補の佐野川靖氏は、コロナ禍に商業施設が休業を強いられ、衣料品の在庫問題が浮上する状況に背中を押されたという。「ファッションと環境問題が世界的な注目を集める中、自分たちも何かをしなければと思い、アパレルメーカーに呼びかけた」と振り返る。オープン時に100社だった協力企業は、6月末時点で120社に増えた。「実際に木更津コンセプトストアを見ていただくと、こんな面白い店なら協力したいとの申し出が相次いだ」
集めた商品を売るだけの店ではない。古着の繊維を発酵させた肥料で野菜を作ったり、古着から再生紙を作ったり、最新のリサイクル技術を紹介する。リサイクルのスタートアップ企業が自社の技術をアピールする場としても機能する。小学校や中学校の社会見学のコースや企業のサステナブル研修の場としても活用される。家族連れが気軽に参加できるようなワークショップも定期的に開く。
佐野川氏は「木更津コンセプトストアにとってサステナブルは大切なテーマだが、それ以上にまずは楽しい体験ができる空間にしたい。余剰在庫と呼ばれる服にもきらりと光る価値があるし、最先端のリサイクルを知ればワクワクする」と述べる。認知度を高めるべく、新しい店内イベントに知恵を絞る。