エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)の2024年1~6月期(上半期)決算は、売上高が前年同期比12.0%増の75億400万ユーロ(約1兆1856億円)、営業利益は同6.8%増の31億4800万ユーロ(約4973億円)、純利益は同6.4%増の23億6800万ユーロ(約3741億円)だった。
カテゴリー別での売上高は、主力のレザーグッズが同15.6%増の32億1500万ユーロ(約5079億円)、衣料・アクセサリー部門は同12.5%増の21億6200万ユーロ(約3415億円)と2ケタ成長を維持。香水・ビューティは同4.0%増の2億5900万ユーロ(約409億円)だった。マクロ経済の悪化などにより中間層の客足がやや減ったことから、シルク・テキスタイル部門は同1.8%減(現地通貨ベースでは1.5%増)の4億3600万ユーロ(約688億円)、中国市場における景気減速の影響を受けたウオッチは同2.8%減(現地通貨ベースでは0.2%減)の3億800万ユーロ(約486億円)だった。
地域別の売上高は、フランスが同14.7%増の6億8000万ユーロ(約1074億円)、フランス以外のヨーロッパは同16.0%増の9億7000万ユーロ(約1532億円)、南北アメリカは同12.2%増の13億2900万ユーロ(約2099億円)といずれも2ケタ成長。日本以外のアジア太平洋地域は同6.8%増の35億2100万ユーロ(約5563億円)、日本は同9.0%増(現地通貨ベースでは22.4%増)の6億9300万ユーロ(約1094億円)だった。なお、円安によるインバウンド需要が旺盛な日本市場だが、同社によれば「エルメス」は国内の顧客による売り上げが主だったという。
CEOが中国市場について言及
アクセル・デュマ(Axel Dumas)最高経営責任者は、「経済上および地政学上の先行き不透明感が増す中、24年上半期も確たる結果を残せたことは、エルメスのビジネスモデルの強さを示している。今後も当社の価値観を守りつつ自信を持って事業を進め、垂直統合や雇用促進のため投資を続けていく」と語った。
同氏はまた、アナリスト向けの説明会で中国市場について言及。「(景気が減速している中国の)消費者は、高品質な“本物”を求めている。また、必ずしもブランドロゴが付いていなくてもいいという消費者も増えており、いずれも『エルメス』にとってプラス要因だ」と説明した。
ラグジュアリー企業は軒並み苦戦 “王者”LVMHも減益に
ラグジュアリー需要の正常化、引き続く地政学上の先行き不透明感、そして中国市場の停滞などにより、ラグジュアリーブランドは軒並み苦戦している。これまで“絶対王者”として増収増益を重ねてきたLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)も、24年上半期の決算は売上高が同1.3%減(現地通貨ベースでは2%増)の416億7700万ユーロ(約6兆5849億円)、営業利益は同8.1%減の106億2400万ユーロ(約1兆6785億円)、純利益は同14.3%減の72億6700万ユーロ(約1兆1481億円)と減益に。
「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」を擁するケリング(KERING)の24年上半期決算は、売上高が同11.0%減の90億1800万ユーロ(約1兆4248億円)、営業利益は同42.2%減の15億8200万ユーロ(約2499億円)、純利益は同49.1%減の9億4000万ユーロ(約1485億円)と大幅な減収減益だった。
これらを踏まえると、今期も増収増益だったエルメスの強さが際立つ。しかし、23年上半期の同22.3%増収、22年上半期の同29.3%増収と比べると減速気味であることは否めないだろう。
LVMHやケリングの競合であり、「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)は3月決算のため、24年上半期の決算を発表するのは11月初旬の予定。