8月17、18日に千葉県の海浜幕張と大阪府の万博記念公園で行われる日本最大級の都市型音楽フェス「サマーソニック 2024(SUMMER SONIC 2024)」(以下、「サマソニ」)。今年はマネスキン(MÅNESKIN)とブリング・ミー・ザ・ホライズン(Bring Me the Horizon)がヘッドライナーを務めるほか、クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)、リル・ヨッティ(Lil Yachty)、BE:FIRST(ビーファースト)、Number_i(ナンバーアイ)、BABYMONSTER(ベイビーモンスター)、IVE(アイヴ)、タイラ(TYLA)など多彩なジャンルのアーティストが登場する。
今回、音楽ライターの和田信一郎(s.h.i)&編集部が2日間(ミッドナイトソニックも含めて)、今観ておきたいアーティスト22組をピックアップ。おすすめポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
※出演者や出演時間は8月16日正午時点のものです。台風7月の影響により変更の可能性があるので、最終の出演時間などは公式SNSや公式サイトで要確認。
【追記】ミッドナイトソニックに出演予定だったTERRACE MARTINの出演がキャンセルになりました。
東京1日目/8月17日
Number_i
11:00〜11:40@MARINE STAGE
Number_iは平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太の3人からなるグループ。変幻自在なビートの格好良さで押しきる曲(「GOAT」「BON」etc.)、オーセンティックなソウルミュージックの滋味を捉えた曲(「Blow Your Cover」「i」etc.)、それらの間をつなぐ曲(PUNPEEが参加した「SQUARE_ONE」etc.)など、伝統と革新の両立ぶりが素晴らしい。「最初からマスにいる人は行くところがコアであればあるほど良かったりする」という話を見事に体現するアーティスト。間違いなく良いパフォーマンスをみせてくれるはずだ。
RIIZE
12:30〜13:10@MOUNTAIN STAGE
RIIZE(ライズ)はK-POP第5世代(2023年以降デビュー)で最も勢いがあるグループの一つ。韓国人・日本人・韓国系アメリカ人からなる7人組で、卓越した歌唱力とダンススキルを持ち、メンバー自身が振付や作曲にも関与している。パフォーマンスの素晴らしさはMVを見れば一目瞭然、6月にリリースされた1stミニアルバム「RIIZING」も多彩な音楽スタイルと統一感を両立する見事な内容だった。現在開催されている日本ツアーはファンクラブ限定ながらチケット入手困難。今回の「サマソニ」は確実に観られる貴重な機会だろう。
離婚伝説
16:05〜16:35@Spotify RADAR: Early Noise Stage
「プロが選ぶ年間マイベスト」企画にもたびたび選出、今年3月にリリースされたアルバム「離婚伝説」も大好評の2人組。バンド名の由来はマーヴィン・ゲイ(アルバム「Hear My Dear」の邦題)で、ソウルとフュージョンが交差する1970年代後半の感じが土台になっていると思われるのだが、そこにロック的なガッツと日本ならではの歌メロの抜け感が加わるからか、全体的な印象は不思議と現代的。KIRINJIのファンにもSuchmosのファンにも刺さるだろう極上のポップスだ。
LAUFEY
16:20〜17:05@SONIC STAGE
レイヴェイ(Laufey)は、中国系アイスランド人のシンガーソングライター(バークリー音楽大学卒)。エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)やビリー・ホリデイ(Billie Holiday) といった名ジャズボーカリストの系譜にある音楽性だが、2021年のデビューEP収録曲「Like the Movies」がTikTokで爆発的にヒット。昨年のアルバム「Bewitched」でグラミー賞も受賞し、満員のコンサートで10代の女の子たちがジャズ・スタンダードを合唱するような状況が生まれている。演奏や楽曲の良さは折り紙付き。今回の「サマソニ」も素晴らしいステージになるに違いない。
BLEACHERS
17:35〜18:20@SONIC STAGE
ブリーチャーズ(Bleachers)は、ラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)やテイラー・スウィフト(Taylor Swift)、The 1975などの傑作群をプロデュースしてきたジャック・アントノフ((Jack Antonoff)のバンド(ジャックはマルチ楽器奏者でもあり、23年にツアーメンバーたちが加入して現在の編成に)。インディポップ/オルタナティブロックの精髄を抽出したような楽曲は粒ぞろいで、バンドアンサンブルも強力。今年4月の「コーチェラ」配信でも見事なパフォーマンスが話題になっていた。予備知識なしで観ても問題なく楽しめると思われる。
星野源
17:40〜18:40@MARINE STAGE
星野源は、メジャーフィールドにおける音楽的挑戦という点で日本を代表する存在だろう。細野晴臣やクレイジーキャッツのような国内ポップスの系譜(“芸能”的なものもおろそかにしない)と世界各地の先鋭的なビートミュージックをつなぐ姿勢は、自身の作品においても、昨年と今年の「サマソニ」におけるキュレーション企画“so sad so happy”においても発揮されている。石橋英子らがサポートを務めるライブパフォーマンスも素晴らしい。観たことのない方はこの機会にぜひ。
GLAY
18:35〜19:35@MOUNTAIN STAGE
GLAY(グレイ)は最高のライブ巧者だ。1990年代以降の日本で最も有名な曲を多数持っているバンドであり(そうした名曲は初めて聴く人々も一発で引き込む力がある)、TERUの驚異的な歌唱表現力を筆頭に演奏も素晴らしい。歌謡ロックの系譜を体現する存在としても、「サマソニ」ならではの“J-POPの大物”枠(過去には郷ひろみやTRFなどが出演し初見の観客から絶賛されてきた)としても申し分ないアクト。この日一番の盛り上がりになる可能性も大だ。
BELLE & SEBASTIAN
18:50〜19:40@SONIC STAGE
ベル・アンド・セバスチャン(Belle & Sebastian)はネオアコ〜インディポップの至宝と謳われるスコットランド/グラスゴーのバンド。繊細で美しいサウンドと内省的ながら親しみ深い歌詞表現は、曲の素晴らしさもあって根強い支持を得ている。なお、リーダーのスチュアート・マードック(Stuart Murdoch)はNHKの連続テレビ小説「虎に翼」の劇中歌「You are so amazing」を担当。本人も「ベル・セバスチャンの表現の核でもある、女性の解放をテーマにした作品に関わることができてうれしく思います。感謝しています。夏に日本に行きます。そこでこの曲を歌えたらいいな」というコメントを出している。この編成で聴けるのが楽しみだ。
MÅNESKIN
19:25〜20:55@MARINE STAGE
マネスキンが2022年の伝説的パフォーマンスを受けてのヘッドライナー凱旋。ヒップホップやクラブミュージック、地中海周辺の民俗音楽要素など、多彩な要素をシンプルなロックバンド編成に落とし込むマネスキンのサウンドは、会場が大きくなればなるほどよく映える(実際、22年も3000人規模の単独公演よりマリンスタジアムのほうがはるかにすごかった)。アルバム「Rush!」のリリースも経た今回は持ち曲も大幅に増加。前回を上回るパフォーマンスをみせてくれるに違いない。
LIL YACHTY
20:10〜21:20@MOUNTAIN STAGE
マンブルラップの代表格とみなされ、ゲーム音楽などをサンプリングするスタイルでも語られるリル・ヨッティは、ジャンルの枠を超えて音楽探求を続けるアーティストでもある。ピンク・フロイドやサイケデリックロックに接近した23年作「Let’s Start Here」や、ジェイムス・ブレイク(James Blake)とともに仄暗い音響を探求した24年作「Bad Cameo」は、ヒップホップ以外の音楽ファンからも大きな支持を集めている。昨今のライブはそうした作風を網羅するベストヒット的構成の模様。「サマソニ」ではどんな感じになるか楽しみだ。
ミッドナイトソニック 東京1日目深夜/8月17日
【キャンセル】TERRACE MARTIN
26:00〜26:40@MOUNTAIN STAGE
26:00〜26:40@MOUNTAIN STAGE
サックスをはじめとした複数の楽器を操り、ボーカリストとしても優れているテラス・マーティン(Terrace Martin)は、現代ジャズを代表するプレーヤーの1人にして、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)の「To Pimp A Butterfly」など数々の名作を担当してきた重要プロデューサーでもある。ディナー・パーティー(Dinner Party)での同僚であるロバート・グラスパー(Robert Glasper)に勝るとも劣らない総合音楽家であり、今回のステージはその豊かな表現力に接する貴重な機会になるだろう。なお、テラスは同日出演のAnswer to Remember(アンサー・トゥ・リメンバー)のリーダーである石若駿(くるりや椎名林檎、君島大空とも共演する新世代のトップドラマー)との共演を熱望している。この日のステージで実現する可能性も高そうだ。
ROBER GLASPER WITH SPECIAL GUEST YEBBA
27:05〜28:25@ MOUNTAIN STAGE ※出演時間変更
昨年は東京初日のビーチステージで行われた星野源のトータル・キュレーション企画“so sad so happy”(世界各地のポップスターをぜいたくに招聘)が、今年は“so sad so happy 真夜中”として東京深夜のミッドナイトソニック(「サマソニ」の入場券いずれかがあれば参加可能)に登場。今回のテーマはおそらく現代ジャズで、国内外の超一流が集結している。ロバート・グラスパーはそうした文脈における最重要人物(ピアニスト/プロデューサー)で、ヒップホップやR&Bなど多様なジャンルを横断接続する名作を連発してきた。そこに今回はゴスペル出身の卓越したシンガーであるイエバ(Yebba)が客演。最高のコンビネーションを期待していいだろう。
東京2日目/8月18日
Paledusk
13:45〜14:15@BEACH STAGE
Paledusk(ペイルダスク)は、世界的にみても現在最も勢いのあるヘヴィロックバンドの一つだろう。ギタリストのDAIDAIはブリング・ミー・ザ・ホライズンの最新作で半数以上の曲を共作、その上でPaleduskが最優先のバンドだと明言。メタルやハードコアをはじめとした数多のジャンルを1曲のなかで高速で横断する作風は、複雑ながら超キャッチーで底抜けに楽しい。昨今のポストジャンル的なポピュラー音楽の在り方をここまで体現するアーティストは稀。同じビーチステージで次に出演するCVLTE(カルト)とあわせ、今こそ目撃すべきバンドだ。
新しい学校のリーダーズ
14:50〜15:30@MOUNTAIN STAGE
2020年には「88rising」とも契約し、名実ともにアジアを代表するグループになりつつある新しい学校のリーダーズは、メンバー全員が20年近くのダンス歴を持つ強靭なパフォーマーだ。スタイリッシュさと泥くささを兼ね備えたステージングには良くも悪くも“戦う日本人”的なオーラが漂うが、1970~80年代の歌謡曲と現行のビートを融合する音楽性にはよく合っているし、圧倒的な勢いは初見の人を巻き込む魅力に満ちている。4月のコーチェラも6月のプリマヴェーラもすさまじい盛り上がりだった模様。「サマソニ」でも間違いなく期待に応えてくれるだろう。
YVES TUMOR
15:10〜15:50@SONIC STAGE
ノイズ/エクスペリメンタル寄りの電子音楽から出発しグラムロックに急接近、ブラックロック(P-FUNKやプリンスの系譜)の新たな地平を切り拓き続ける新世代のロックスター、イヴ・トゥモア(Yves Tumor)。どちらかと言えば「フジロック」(昨年出演し絶賛された)や「ソニックマニア」向けのアーティストだが、不思議なポップさのある音楽性は「サマソニ」にも確かに親和性がある。1960年代のサイケ/アシッドフォークがサイバーパンク化したようなサウンドは聴くほどにクセになるはずだ。
GRETA VAN FLEET
16:00〜16:50@MARINE STAGE
グレタ・ヴァン・フリート(Greta Van Fleet)は、1960〜70年代ロックの徹底的な研究から出発し、レッド・ツェッペリン((Led Zeppelin)を介してブルースとプログレッシブ・ハードをつなぐような音楽性を確立。そうした作風が災いしてかツェッペリンのクローンと見做されることも多いのだが、似た要素を持ちながらもその使い方は別物で(出音の良さは受け継ぎつつ格段に整ったリズムアンサンブルなど)、クラシックロックを血肉化し現代的に再構築するバンドと捉えるほうが適切かと。その上でライブパフォーマンスは見事の一言。偏見のある人も観れば引き込まれるはずだ。
BABYMONSTER
17:20〜18:40@MOUNTAIN STAGE
YGエンターテインメントからBLACKPINK(ブラックピンク)以来7年ぶりにデビューした7人組ガールズグループ(韓国人3人、日本人2人、タイ人2人)、BABYMONSTER。現在のK-POP界ベストともいわれるボーカルコンビネーションに加え、ラップやダンスも一流で、 デビューから間もないのにYouTubeでのMV再生数は1〜2億回に到達。現状ではライブは数えるほどしか開催されていないだけに、「サマソニ」東京への出演はとても貴重な機会。BABYMONSTERとタイラを続けて観れるこの時間帯は今年のハイライトの一つだろう。
CHRISTINA AGUILERA
17:25〜18:25@MARINE STAGE
1999年の1stアルバムと2002年の2ndアルバムはいずれも1000万枚以上の売り上げを記録。グラミー賞も5回受賞、21世紀を代表するポップアイコンの一人であるクリスティーナ・アギレラは、とにかく歌がうまい。パワフルなイメージを保ちつつ各々の曲の雰囲気に合わせる加減が素晴らしく、この人の歌唱表現力があるからこそ成り立っている名曲も多い。今回の来日は実に17年ぶり。ラテンポップ方面のレパートリーも含め、アメリカならではの“芸能”的エンタメの真髄を堪能できる貴重なステージだ。
TYLA
18:35〜19:20@MOUNTAIN STAGE
タイラは南アフリカ出身のアーティストとしては55年ぶりのグラミー賞受賞者で、その対象となった「Water」は世界的に大ヒット。アマピアノやアフロビーツをはじめとしたルーツ(最先端のビートでもある)を軸に据えつつUSのヒップホップやR&Bに繋がる音楽性が素晴らしく、タイラ自身の圧倒的なスター性もあって今最も注目されている存在だ。今年は過密スケジュールのため多くのフェス参加を中止してきたが、渋谷タワレコでのサイン会実現も鑑みれば「サマソニ」出演は無事実現しそう。必見だ。
IVE
19:10〜19:40@PACIFIC STAGE
韓国人5人・日本人1人からなる6人組K-POPグループ。IVEは「I have」を略した造語で、実力と魅力を兼ね備えた“完成型”アイドル(2017年以後デビュー組=第4世代に共通する傾向)を最初から標榜。優雅さと力強さを兼ね備えたパフォーマンスは初見の人も引き込む訴求力に満ちている。9月には東京ドーム2daysが決まっているが、今回は1万人規模のパシフィックステージに登場。間違いなく入場規制になるので、観たい人は早めに待機しておくことをおすすめする。
BRING ME THE HORIZON
19:10〜20:50@MARINE STAGE
昨年11月の革新的メタルフェス「NEX_FEST」に続いてヘッドライナーとして来日するブリング・ミー・ザ・ホライズン。最新作「POST HUMAN: NeX Gen」は今年のポピュラー音楽全体を代表する傑作で、Y2Kリバイバル的なエモと現行のエモを融合し未到の境地を拓く作風が素晴らしい成果をあげていた。その新作のモードをスタジアム規模で堪能できる今回のライブは、2024年の空気とサウンドを体感できる場としても、理屈抜きに盛り上がれる場としても、理想的な機会と言えるだろう。ジャンル越境フェスのトリにBMTHを据えることができた今年の「サマソニ」は最高に“持っている”と思う。
BE:FIRST
20:00〜21:00@MOUNTAIN STAGE
今年の春には東京ドーム・京セラドーム大阪での単独公演を開催、名実ともに日本を代表するダンス&ボーカルグループとなった7人組、BE:FIRST。世界大会での優勝歴が多数あるダンサーSOTAを筆頭に、メンバーはいずれも卓越したスキルを持っている。昨年はマウンテンステージの序盤での出演だったが、今年は同ステージのトリを担当。気迫に満ちたパフォーマンスをみせてくれるはずだ。ちなみに、「Hush-Hush」でコラボしたATEEZ(エイティーズ)も同日に出演予定。共演が期待される。