コスメティックブランド「シロ」は誕生15周年を機に、全ての資源の価値を見つめ直し、本質的な循環のために廃棄物ゼロを目指している。その一環として、ファッション産業における衣類の大量廃棄の問題に着目し、業界の枠を超えた活動を始動。循環商社のエコミットと協業し、8月から化粧品の空き容器と不要となった衣類を同時に回収するリユースプロジェクトを推し進めている。このプロジェクトに伴い、8月10日に北海道・砂川市にある「みんなの工場」で「リユースファッションショー」実施した。
「リユースファッションショー」は、バックステージでモデルやヘアメイク、スタイリストらが準備を行う舞台裏を“見える化”し、来場者と同じ空間で行った。本来見せないバックステージの体験を通じて、「未来をつくる子どもたちの原体験につながったらうれしい」(今井浩恵シロ会長)と、期待を寄せた。
ショーで使う服は、エコミットが運営するサービス「パスト」で集まった衣類を使用。「シロ」のビジュアル制作にも携わるスタイリストの山口翔太郎さんが、衣類を保管する循環センターに出向き、ファションショーのために選出した。山口さんは、「本来の使用用途にとらわれない自由な発想でスタイリングをすることを意識して取り組んだ。例えば、パンツやスカートの裏地をトップスにしたり、いろいろな視点から“あたりまえ”という常識を“あたりまえ”にせず、新たなクリエイティブの発想から、普段とは異なる視点で服を見ることができ、大変刺激的な経験をすることができた」と話す。
ヘアメイクは、北海道で活躍するヘアメイクアップアーティストの伊藤智亜希さんが旗を振り、4人のアーティストと3人の専門学校生が行った。ナチュラルを意識したメイクには、2024年のホリデーコレクションのアイシャドウパレットを用いた。伊藤さんは、「他のショーとは違う光景が目の前に広がっていて不思議な感覚だったが、大人も子どもも、あたたかくも真剣な眼差しを感じた。私たちが見せて伝えたいことを、余すことなく感じ取ってくれているようでとてもうれしく思った」と達成感をのぞかせた。
モデルは、プロのモデル10人と、みんなの工場で働くスタッフ7人、スタッフの友人2人、エコミットの川野輝之CEO、店舗設計を担当する小倉寛之さん、福永敬弘シロ社長、の計22人がランウェイに登場した。川野CEOは、「もともと来る予定だったが、『せっかくなら出ちゃえば』と声をかけられて参加した」とはにかんだ。現在回収している「シロ」の化粧品容器は、エコミットが洗浄まで一貫してリユースできる状態にした容器を、みんなの工場に運び、充填する流れをとる。「僕たちが集めたものがここにまた戻ってくると思うとうれしい。がぜんやる気がでた」と熱い眼差しを見せた。
ショーはお盆シーズンに実施したこともあり、ショーの締めくくりにモデルたちが一斉に中庭に飛び出し、来場者を誘いながらやぐらの周りで盆踊りをした。外の会場にはフードトラックや、輪投げ、くじ引きなどを用意し、お祭りのような雰囲気だった。今回3300人が来場し、にぎわいを見せた。5人家族で訪れた一家は、9歳の子が「かわいかった。また見てみたいな」と楽しんでいた。
福永社長は、「われわれが目指すのは、集まってきた衣類を一般の人に向けてスタイリングし、より魅力的に着こなせる提案を行うことだ。モデルが着て素敵に見えるのは当然かもしれないが、誰でも楽しめるファッションに昇華させたいという思いがある。そのために、スタイリングした古着を購入できる店舗を設け、新たなアウトプットを提供し、古着の魅力をより多くの人に届けていきたいと考えている」と将来の計画を語った。