「イッセイ ミヤケ パルファム(ISSEY MIYAKE PARFUM)」から最新作“ル セルドゥ イッセイ”が登場した。三宅一生が最後に選んだ香りのコンセプトは“塩”。生命に不可欠な“塩”をテーマに、本来香りのない“塩”を香りで表現したのは、ジボダンの調香師のカンタン・ビシュだ。ガラスの塊の中に光を放つ水滴を閉じ込めたようなフレグランスボトルは吉岡徳仁がデザイン。ビジュアルは、映像監督のマーカス・トムリンソン手掛けた。“ル セル ドゥ イッセイ”は、3人のアーティストによる“塩”の解釈と表現が一体となり完成したフレグランスだ。調香師のビシュに、三宅がテーマとしてきた“水”や自然の“動き”に続く、“塩”に宿る精神を香りにどのように落とし込んだのか聞いた。
海と大地のコントラストを香りで表現
WWD:三宅一生が最後に監修した香りの調香を手掛けた感想は?
カンタン・ビシュ(以下、ビシュ):「イッセイミヤケ」のDNAを尊重し、新たなシグニチャーを模索する必要があると感じた。一生さんに気に入ってもらえるといいなと思いながら調香した。彼は、ボトルへのこだわりは認めてくれたはずだ。私が手掛けた香水は、ボトルの純粋さを反映していると思う。
WWD:テーマである無臭の塩をどのように香りに落とし込んだか?
ビシュ:このフレグランスは、塩気を含んだ海と森の中の木の香りで構成されている。海と陸という両極の絶え間ない動きを表現した香りだ。ラミナリア海藻とオークモスにヨードでアクセントを加えた海の香り、そして大地はシダーとサンドベチバーが織りなす森のような香りだ。このよう要素のコントラストから生まれた香りだ。
WWD:この香りを調香する際のインスピレーション源は?
ビシュ:海と陸の間で波が引いていく様を表したいと思った。波は、大地に残された水の記憶のようなもの。そこに刻まれる堆積した塩がインスピレーションだ。
WWD:調香のプロセスでこだわった点は?
ビシュ:無限に打ち寄せる波の動き、そして大地に堆積した記憶である塩を形にしようというアイデアが出発点だった。そこから、塩気と純粋なウッディノートを使おうと思った。最初のアイデアのユニークさを保ちながら、テーマを表現しようと試みた。
フレッシュで官能的、バランスの取れた普遍的なフレグランス
WWD:この香りの一番の魅力は?
ビシュ:生き生きとした香りであること。センシュアルな木の香りと、素晴らしい爽やかな塩気の香りの融合が魅力だ。
WWD:どのような人に着けてほしいか?
ビシュ:この香りは、生命のサイクルにある要素や自然の動きとつながる普遍的なフレグランス。だから、全ての人に楽しんでもらえるはずだ。中でも、フレッシュさと官能性のバランスがとれた香水を探している男性にぴったりだと思う。
WWD:自分にとって香水とは、どのようなものか?
ビシュ:人生そのもの。理想の美と香りがもたらす効果を追求し続けることが私の使命だと思っている。