ファーストリテイリングとユニクロは10月29日、10月18日に東京地裁で下された文藝春秋に対する訴訟の判決を不服として、東京高裁に控訴した。同社の控訴理由は以下の通り。
本判決では、文藝春秋が発行する「週刊文春」の記事と書籍「ユニクロ帝国の光と影」に記載された内容が、不自然なほど極めて限定的に事実であると認定されている。特に、ユニクロ店舗の労働環境については、「平成19年までは店長が長時間労働をしていたこと」「平成19年4月以降も、(どの店舗で働いているかすら不明な)とある30代現役店長(と称する者)は11月、12月は月300時間を超えて働いていること」の2点のみに絞られている。さらに、「本社が薄々知っているのではないか」という記述については事実かどうかの認定を避け、「前述のような事実があり、本部が黙認しているのは推定に過ぎないから、不法行為はない」と安易に結論付けられている。しかし、本書籍は、そのような一店長に限った労働時間を伝えているものではなく、ユニクロの店長全体の労働環境が劣悪であること、および、本部がそれを知りながら黙認していたという虚偽の事実を取り上げていることが明らかだ。
また、中国編における生産工場に関する記述についても、ユニクロを担当していない営業担当者や、どこのブランドの製品を担当しているのかも不明な工員へのあいまいな聞き取りを正当な取材と認め、「工場でユニクロの納期を守るため、恒常的に午後9時以降まで残業が行なわれているが、ユニクロは工場の労働環境に興味がないと判断したことには相当な理由がある」と軽率にも結論付けられている。
当社は以前から、店長の労働環境の改善策を継続的に講じているほか、サービス残業を厳しく取り締まっており、万が一にもサービス残業が発覚した場合には懲戒処分の対象にするなど、厳格な態度で臨んでいる。また、生産委託先の工場に対しても、安全かつ適正で、健全な労働環境の継続的な実現のために、コードオブコンダクトの遵守を求め、外部監査機関とともに現場での聞き取り調査も含めた厳格な監査を行なっている。本訴訟では、それらの事実を主張してきたが、判決では全く考慮されなかった。
上記のほか、個々の事実認定でも根拠に欠ける誤った認定が見られた。結果として、当社は判決を不服として、正当な判断を求めるため、控訴することを決定した次第だ。
同社は、「週刊文春」の2010年5月6日・13日号内の「ユニクロ中国『秘密工場』に潜入した!」と、単行本「ユニクロ帝国の光と影」(横田増生・著)によって名誉を毀損されたとして、文藝春秋に計2億2000万円の損害賠償と書籍の回収を求めていた。
一方の文藝春秋は、18日の請求棄却の判決について、「週刊文春」内で「本誌が指摘した『過剰労働』について、裁判所は全面的に事実と認定したのだ。今回の判決は、すべてのブラック企業への最後通牒である」として、内容の正当性について改めて言及している。
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