本特集では、サステナブルなアパレル製品の作り方について考えたい。検討したい課題はさまざまにある。自然環境への負荷低減(GHG排出による地球温暖化・土壌や水質汚染・水資源の大量使用・製品の大量廃棄の回避)、人権侵害の回避、動物愛護、行動変容を促すサービスを含めたデザイン、土地に残る文化や技法、技術の継承などだ。今特集では、こうした課題に対してよりよいデザインを検討して作られた日本ブランドの製品を13点紹介する。有力アパレルメーカーが定番品をよりサステナブルに作り替えた製品や新たにブランドを立ち上げた事例、社会課題解決に向けて方法を模索して作った製品などさまざまなアプローチを取り上げる。新規ブランド立ち上げ時や既存ブランドでもまずは一つの製品で実践する際に参考にしてほしい。リサイクル糸やオーガニック糸への単純な置き換えだけではバージン糸の風合いが再現できないなど、モノ作りで直面する課題の解決策や新素材の活用法などの具体例を加えて、日本国内の既存の製法では国際基準や欧州の規制をクリアすることが難しいなど直面する課題も浮き彫りにしたい。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月9日号からの抜粋です)
既存製品をよりサステナブルに作る
ロンハーマン(RON HERMAN)
オリジナル商品を2030年までに
主要素材を環境配慮型に
「ロンハーマン(RON HERMAN)」は2021年に公表したサステナビリティビジョンの下、30年までにオリジナル商品における主要素材(コットン、ナイロン、ポリエステル)をオーガニックやリサイクルなどの環境配慮型に切り替えることを目標に取り組む。徳永裕美リトルリーグ執行役員ロンハーマン事業部デザイン生産部部長は、生産プロセス全体への「責任」という言葉が加わったことで、モノ作りの考え方が「がらりと変わった」と振り返る。主要素材のほか、スパイバー(SPIBER)の「ブリュードプロテイン(BREWED PROTEIN)」などの新興素材の採用や、裁断時の廃棄ゼロを目指すパターンメイキング技術を開発したシンフラックスと生地の廃棄率を下げるパターン製作にも挑戦し、「関わる人を大切にする」という軸でモノ作りのバリエーションを広げている。
ピックアップ製品のポイント
最初に素材を切り替えたのは、メンズの定番Tシャツだ。「年間を通して売れる商品で、シーズンの商品よりも切り替えるインパクトが大きいと考えた」。切り替えに伴い、仕様も変えた。編み目を極限まで詰めて透けずに柔らかな着心地にこだわり、着込んでいくほどに良さが伝わるようにした。ナイロンは米ブレオ(BUREO)社の漁網のリサイクル素材「ネットプラス(NetPlus)」を採用している。収益の一部を環境保全活動などに寄付するスキームにも共感し採用を決めた。
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