ファッション

ビヨンセとモエ ヘネシーが共同開発 ウイスキー「サーデイヴィス」誕生秘話

ビヨンセ・ノウルズ・カーター(Beyonce Knowles Carter、以下、ビヨンセ)とLVMH モエ ヘネシー・ルイ・ヴィトン(以下、LVMH)の子会社であるモエ ヘネシーは、ウイスキー「サーデイヴィス(SIRDAVIS)」を共同開発し、9月4日に発売した。

9月11日には、渋谷のトランクホテルで発表会を開催。「サーデイヴィス」制作の陣頭指揮を務めたビル・ラムズデン(Bill Lumsden)博士が登壇し、ストレート、ハイボール、カクテル“ハニービー”を提供しながら、ビヨンセとの出合いや開発の秘話を明かした。

ビル博士とビヨンセの出合い

ビル・ラムズデン(以下、ビル):数年前、当時のマーケティングディレクターから電話があり、「明日ロサンゼルスに行かないか。特別な人に会ってほしい」と話を持ちかけられた。その“特別な人”とはビヨンセだと言うので、迷わず渡航を決めた。ビヨンセがウイスキー愛好家だということは知っていたので、彼女のためにウイスキーセミナーを行い、どんなウイスキーを好むのか探った。彼女が1番好きなウイスキーはサントリーの“山崎12年”だと聞いていたため、バーボンやドライウイスキー、テネシーウイスキー、そしてもちろん「グレンモーレンジィ(GLENMORANGIE)」の他、いくつかのジャパニーズウイスキーを試してもらった。

たくさんのウイスキーをテイスティングした後、ビヨンセから「自分のウイスキーを作りたいので、力を貸してくれないか」と言われた。私達LVMHとビヨンセの夫、ジェイ・Z(Jay Z)が共同保有する「アルマン・ド・ブリニャック(ARMAND DE BRIGNAC)」やファッションブランド広告での関係値もあるため、このコラボレーションは最適だと感じた。

アメリカンウイスキー「サーデイヴィス」が生まれるまで

ビル:「サーデイヴィス」が生まれるまでには、さまざまなアイデアがあった。「スコッチウイスキーとジャパニーズウイスキーをブレンドするのはどうか」という発想もあったが、私もビヨンセも彼女の祖国であるアメリカらしいウイスキーを作りたいという考えに至った。一番良いのは蒸留所を作ることだと思ったが、建設にはとてつもない時間がかかってしまう。そのためインディアナ州のエムジーピー社から熟成された数種類のウイスキーを取り寄せた。意識したのは、アメリカらしさがありながら、スコットランドや日本のニュアンスも入れること。彼女とテイスティングをした結果、ようやく1つのスタイルに辿り着いた。

曾祖父デイヴィス・ホーグへの敬意
「サーデイヴィス」の由来について

ビル:約100年前の話になるが、ビヨンセの曾祖父、デイヴィス・ホーグ(Davis Hogue)はアメリカ南部で密造酒を造っていた。当時のアメリカでは、黒人が自分の土地を所有していること自体が珍しく、人々は彼に敬意を払い“サー・デイヴィス(Sir Davis)”と呼んでいたそうだ。そのことが由来となり、アメリカンウイスキー「サーデイヴィス」は名付けられた。

よりスムースさを追求した
「サーデイヴィス」のマッシュビル

ビル:このウイスキーの珍しい特徴としてマッシュビル(穀物配合のレシピ)が挙げられる。エムジーピー社が作るウイスキーの場合、通常ライ麦の使用率が95%を占め、スパイシーな仕上がりになる。それもそれで魅力的だが、今回私達が目指したのはよりスムースなウイスキーだ。そのためエムジーピー社と話し、ライ麦51%、大麦麦芽49%のレシピに調整した。ライ麦を使用したアメリカらしいウイスキーでありながら、大麦麦芽の割合を通常より増やすことでスムースな飲み心地を実現した。このマッシュビルは私達が独占契約を行い、今後他のウイスキーで使用されることはなくなる。このベースウイスキーはインディアナ州で熟成した後、“山崎12年”に着想を得てシェリー樽での追加熟成を行う。これにより、ビヨンセが好むジャパニーズウイスキーのニュアンスが融合されたのだ。

蜂蜜を感じるまろやかな味わい
「サーデイヴィス」のアロマと風味

ビル:まずノージングをしてもらうと、最初にライ麦、そしてシナモンやクローブがスパイシーに香り、続けて大麦麦芽の甘いビスケットのようなアロマが漂う。加水すれば、オレンジピールのようなフルーティーさとシルキーさも出てくるだろう。そしてハニーのようなまろやかなニュアンスが味わいの特徴であり、シグネチャーカクテル“ハニービー”にもハニーシロップを使う。このウイスキーはすでにいくつかのコンペティションやアワードを受賞している。

故郷と過去、未来を表現した
「サーデイヴィス」のボトルデザイン

ビル:ボトルに取り入れられたシンボルの馬は、ビヨンセの故郷・テキサスを象徴する伝統的な存在であり、彼女が乗馬好きなことから取り入れられた。また蓋には正反対を向いた矢が刻印されている。矢の1つはデイヴィス・ホークに敬意を払い過去を示す後ろ向き、もう1つは未来を示す前向きを指している。彼女が大切にしているイコーリティー(平等性)やインクルーシビティー(包括性)を表現しており、性別や人種問わずどんな人にもこのウイスキーを楽しんでほしい、という思いが込められた。

「サーデイヴィス」はロンドン、パリの一部店舗、アメリカ全土、アジア地域では日本のみで販売する。度数は44度、発売日は9月4日ーービヨンセの誕生日が9月4日であることから、彼女は“4”という数字が好きだという。彼女は本商品のローンチについて次のようにコメントしている。

「曽祖父が密造酒製造業者だったと知ったとき、私のウイスキーへの愛は運命的なものと確信した。『サーデイヴィス』によって私は曾祖父への敬意を新たにし、そのレガシーは私達の絆を強めた。モエ・ヘネシーとのパートナーシップにより、伝統を尊重しながらも、ウイスキー分野において唯一無二な体験を提供できるおいしいアメリカンウイスキーを作り上げた。言葉ではとても伝えきれないので、是非味わってみてほしい。『サーデイヴィス』の世界へようこそ」。

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