ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回はオフプライスストアの日本展開について。アパレルメーカーなどの在庫を編集して販売するオフプライストアは、米国では巨大小売業に発展しているものの、日本では存在感が薄い。なぜ成長することができないのか。米国と比較しながら説明しよう。
わが国のアパレル流通は慢性的過剰供給ゆえオフプライスストアの成長が期待されたが、「アンドブリッジ」(ワールド)と「ラックラック」(ゲオホールディングス)の登場から5年を経ても期待ほど店舗が広がらず、コロナを経てもオフプライスストアの成長が続く米国とは様相を異にしている。いったい何が日本のオフプライスストアの離陸を妨げているのだろうか。
伸び悩むわが国のオフプライスストア
わが国のオフプライスストアは2019年4月25日開業の「ラックラック」1号店(コーナン港北インター)、同年9月14日開業の「アンドブリッジ」1号店(にしおおみやファッションモール)で幕を開けたが、両者の最新状況はどうなっているのだろうか。
ワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンが合弁で設立した株式会社アンドブリッジが展開する「アンドブリッジ」は、20年3月の2号店(ニトリモール相模原)開業時には「3年後30店体制」を構想していたが、23年3月開業のセプンパークアリオ柏店以降は出店がなく、現段階で8店舗にとどまる。対してゲオホールディングス子会社のゲオクリアが展開する「ラックラック」は出店に積極的で、24年も7月にイオンモール座間、9月にセブンパークアリオ柏、セブンパーク天美(大阪府松原市)に出店して21店に到達し、中期的には100店舗を目指しているが、「24年までに50店舗」という21年段階の構想からは大きく出遅れている。
他にも在庫処分業者のショーイチが「カラーズ」を国内21店、海外6店(マレーシア、カンボジア、ベトナム)展開しているが、商品供給中心の小型店でオフプライスストアというスケールには遠い。
売上規模が大きいのが関東圏に52店舗(平均560平方メートル)を展開するオフプライス衣料スーパーの「タカハシ」で、23年8月期で108億円に達している。「タカハシ」に近似した岡山の「イトウゴフク」も中国・四国・近畿に55店舗を展開して83億(23年8月期)を売り上げているから、「オフプライス衣料スーパー」というビジネスモデルが成立しているようだ。
「タカハシ」や「イトウゴフク」を除けば採算を確立して成長が見えているとは言い難いが、何が日本のオフプライスストアの離陸を妨げているのだろうか。
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