ファッション

「プロのデザイナーからアドバイスも」 2024年度受賞者が語る、東京発ファッションアワードの魅力 

東京都は2種類のファッションコンクールを開催し、9月20日まで応募者を受け付けている。日本の伝統文化を持続可能にするアイデアを募る「サステナブル デザイン ファッション アワード2025(SUSTAINABLE DESIGN FASION AWARD 2025以下、SFDA)」と、都内在住の学生を対象にする「ネクスト ファッション デザイナー オブ トウキョウ 2025(NEXT FASHION DESIGNER OF TOKYO以下、NFDT)」だ。東京から若手デザイナーを輩出し、パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークに並ぶ“ファッションの拠点”になることがコンクールの目的だ。

とはいえ、応募要項を読んでいるだけではイメージしづらいことも多いだろう。東京都は9月1日に東急プラザ原宿「ハラカド」で、審査員と2024年度受賞者によるトークイベントを開き、応募までの流れや、受賞作品のコンセプト、受賞によるメリットなどをディスカッションする場を設けた。立ち見を含めて100人弱の観客が見守る中、「SFDA」の審査員でありデザイナー兼アーティストの篠原ともえと、「NFDT」の審査員であり「WWDJAPAN」のサステナビリティ・ディレクターの向千鶴、そして受賞者の立澤拓都さん(「NFDT」フリー部門大賞)、速水美里さん(「NFDT」インクルーシブデザイン部門大賞)、末永るみえさん(「SFDA」ファッショングッズ部門大賞)の3人が登壇した。本記事ではイベント当日の様子を振り返る。

トピック1
応募したきっかけは?どんなクリエイションでコンテストに挑んだ?

立澤:インスタグラムのDMで、ファッション業界関係者から「応募してみないか」というメッセージが届いたことがきっかけだ。去年は一次審査で落ちたが、今年はリベンジのつもりで挑戦した。虫食いされた服に対して、「これ以上虫食いされないためにはどうすればいいか?」という考えからものづくりがスタート。「だったらこれ以上開けられないくらい穴を作った洋服にしよう」と、東北地方の伝統である「ぼろ」に着想を得て、オーガンジーの上にパッチワークを施したり、虫食い穴を審美的に見せるためにパンチングを加えたりした。

速水:元々インクルーシブデザインに興味があったため、洋服を通して社会の力になりたいと思っていた。両親、姉と共に福祉の仕事をしているため、普段から障がい者の抱く悩み事を耳にすることが多い。今回は、前後どちらで着てもよいデザインとしたほか、肌トラブルを引き起こさないように、ニードルパンチで生地の上から羊毛を叩きつけ、ミシンの縫い目を消した。また、“インクルーシブ”だからといって華やかさが損なわれないように、明るい色合いを選んだ。

末永:昨年7月にイギリスのロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(London College of Fashion)を卒業して就職活動に励む中、母親から応募を勧められたからだ。大学でもサステナビリティーに関する授業を受けていたこともあり、「SFDA」に興味が湧いた。廃棄された着物のダメージ度合いはさまざまであるため、どんな状態の着物からでも作れるバッグを作りたくなった。栃木県産のレザーで周りを補強するため堅牢性も高まるほか、富士山をイメージしたシェイプからは日本らしさも醸し出せる。

トピック2
コンテストを通して学べたことは?

立澤:審査の過程では、ファッションデザイナーと直接話してアドバイスをもらえるチャンスがある。褒めてくれる人もいれば、成長の余地を指摘してくれる人もいて、とても勉強になった。特に、虫食い穴をモチーフにした僕の作品を見た「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦デザイナーが、「崩すこと自体は簡単にできるが、どう崩すかがを考えるべき。丁寧にほころびを作ることが大事」と声をかけてくれ、今でも印象に残っている。

速水:審査が進むとワークショップに参加できるため、他の学校に通う同年代の人とも出会えて刺激的だった。自分の学校にはない部門で勉強している人や、海外留学を経験した人など、毎日が新たな発見の連続だった。また、障がい当事者にヒアリングできる機会も得られたため、インクルーシブデザインに必要なことを改めて知ることができた。例えば、「アームホールや首周りの広さがあると着脱しやすい」というコメントからは、着る人だけでなく、着せる人にも配慮した目線が大切だと気づいた経験だ。

末永:速水さんと同様で、他校の服飾学生と知り合えたのが大きかった。私はイギリスの大学に通っていたため、海外にファッション業界を目指す友人はいても、日本にはいなかった。

トピック3
応募を考えている人にアドバイス

立澤:たくさんデザイン画を描いてほしい。何通も応募すれば、一着でも審査員の目にとまる作品があるはず。

速水:どんなコンテストにも言えることだが、資料をふんだんに集めて知識の土台を作ることが大事。私がテーマにしたのは福祉だったので、その勉強も必要だった。両親の話を聞いたり、図書館に通ったりして、知識を蓄積していった。

末永:自分が作りたいアイテムは、どんな人に届けるものかを考えると効果的だ。どこに住み、どんな生活習慣をもつのかなど、ペルソナを設定するとデザインが深まると思う。

1時間のトークセッションながら、登壇者らは大盛り上がり。ディスカッションをリードする篠原デザイナーは、受賞者が生き生きとファッションについて語る姿を見て「3人を選出して間違いなかった」とコメント。「作品に対する愛情があれば、審査員にも必ず伝わると実感した。ファッションアワードに応募するなんて今しかできないことかもしれないから、ぜひ挑戦してほしい」と、未来の応募者に対して呼びかけた。また、向サステナビリティ・ディレクターは、「自分のためにファッションを楽しむのは高校生まで。次は誰かのためのファッションを作るという意志を持って、新たな作品を作り出してくれたら」と熱っぽく語った。

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