ファッション
特集 ミラノ・パリ2025年春夏コレクション

いきなり「フェンディ」にキュンキュン、捕まらないウサギを追い続ける「マルニ」って一体!? 2025年春夏ミラノ日記Vol.1

2025年春夏のウィメンズ・コレクションも、ニューヨーク、ロンドンが終わり、いよいよミラノ。朝9時から夜9時、時には10時まで、2人で最大1日20件の取材をしながら、合間合間で原稿を送り合い、コレクション取材のドタバタを日記でお送りします。本日は、DAY1の日記をお届け。前日ミラノ入りした村上要編集長は朝から、当日ロンドンからミラノ入りした木村和花記者は途中参戦でスタートです。

村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):さぁ、いよいよコレクション・サーキットは第3コーナーのミラノに突入です。ミラノは、寒い!最高気温でも20度。朝は15度を下回るので、コートがあってもいいくらいの天候です。持ってきてないけど(笑)。

ミラノ・コレクションのトップバッターは、毎回「マックス アンド コー(MAX & CO.)」。マックスマーラグループの一翼は、新しいトレンドとミニマルなスタイルをミックスしたコンテンポラリー・ブランドという位置付け。毎回ミラノ・ファッション・ウイークでは、外部のクリエイターとのコラボラインを発表しています。今回のパートナーは、スタイリストのロレンツォ・ポソッコ(Lorenzo Posocco)。以前「ヴァレンティノ(VALENTINO)」もインスタレーションでコラボしていたスタイリストですが、実は長年「マックス アンド コー」のスタイリングも手がけているそう。「強くて若く、なんでもトライしちゃう。そんなエネルギッシュなパーソナリティーを持っている女性の、ポジティブなムードを表現したブランドなんだ」とブランドの魅力を語ります。コレクションは、90年代のミニマリズムやジェンダーレスのムード。化繊を混紡したテクニカル素材も多く、ブルゾンやデニムは若干往年の「プラダ(PRADA)」風ですが、90年代のイタリアにおいて「プラダ」は絶対的なトレンドセッターだったから、雰囲気が醸し出されるのは当然のこと。Y2Kのムードは、若い世代においてはレトロ消費の感覚もあって根強いどころか定着した印象がありますが、そんな時流をさすが上手にキャッチしている印象でした。とても気さくなのに、写真をお願いするとキメポーズになっちゃうのが、愛らしかったです(笑)。

そして今回のコレクションでは、強い味方をゲットしました。私は2本目になりますが、「レイバン(RAY-BAN)」とメタのコラボサングラスです。なんと、メガネのフレームに内蔵したカメラで、写真は動画が撮影できる優れもの。今回は、このアイウエアで、動画を何本か撮影しようと思っています。早速、ミラノの百貨店リナシェンテ(RINASCENTE)で撮影してみました。どうですか?楽しいでしょう?

なんて遊んでいたら、木村さんもロンドンから到着。二人で向かったのは、「ツインセット(TWIN SET)」ですね。こちらは、どんなブランド?

木村和花(以下、木村):「ツインセット」は、イタリアらしいロマンチックでフェミニンなスタイルをコアに据えるブランドです。昨シーズン、ミラノ・ファッション・ウイークに初参加しました。ミラノの目抜き通りのマンゾーニ通りに旗艦店を構え、ヨーロッパを中心に展開しています。日本にも公式ECサイトがあります。

コレクションは今回もらしさ全開。フェミニンなフリルドレスや、レースのミニボトムスとジャケットのセットアップ、ペイズリーのシフォンドレスなどボヘミアンなムード。サイズ展開次第では、日本でも好まれそうな印象です。

村上:若干ワンパターンな印象はあったけれど、ミニ丈や透け感のある素材で、若々しさとフェミニニティー、そしてリアリティを併せ持っていたよね。

そして、「フェンディ(FENDI)」。私の感想は別記事でアップしましたが、いきなり今季のミラノベストなのでは?というクリエイションが飛び出しましたね。メンズ出身でテーラードに自信があるキム・ジョーンズ(Kim Jones)が100周年を祝うコレクションに選んだのは、ガーリーなスタイル。端正なメンズから、ガーリーなウィメンズまで、キムってやっぱり懐が深いわ。木村さんは、どう感じました?

木村:いやぁ、ロンドドンコレもすごく楽しかったですが、世界のファッション業界を動かすトレンドはこういうブランドだと、ミラノのパワーを見せつけられた感覚がありました。ビジューやチュール、スパンコールを使ったフェミニンなムードはロンドンにも通じますが、「フェンディ」は段違いに繊細。創業年の1920年代のパーティーの装いが着想源と聞きましたが、日常離れした華美さではなく、いい意味で大人しさのある幻想的なコレクションでした。前シーズンはチュッパチャプス専用ケースが登場して話題になっていましたが、今回は小さなジャム瓶のマイクロミニバッグやブーケのチャームなど、愛らしくもユーモアのあるアクセサリーが登場しました。展示会では日本のメディア関係者も「可愛いー!」と興奮気味の様子でした。キュンキュンしましたね!


村上:チュッパチャプス専用ケースは、来場した川口春奈さんも着用していましたね。キャンディ、入ってたのかな(笑)?来年はぜひ、極上のオーガンジーを贅沢に使った、ガーリーなテイストの川口さんが見てみたいです。

さて、お次は「マルニ(MARNI)」。毎回コンセプチュアルなコレクションと演出ですが、今回、コレクションの説明に際してフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)は、「美とは、庭を駆け回る白いウサギのようなもの。人々はそれを追いかける。捕まえることはできないが、夢中で追いかけていると、素晴らしい場所にたどり着く。慣習的行為を繰り返す日常の中で、崇高なものへの追求ほど、私たちを突き動かすことはない。美とは速度であり、目的地ではないのだ」と語ります。ん〜、相変わらず難解(苦笑)。


ということで、ここは来場した俳優の上杉柊平さんも話している通り、自由に発想してみましょう。コレクションは、もはやユニホームに近い伝統的なジャケットやドレス、そして一世を風靡したライダースなどを経て、最終的にドレスはどんどん豪華さを増していきます。そこに私は、長らく美をウサギのように追いかけ、さまざまな洋服やスタイルを生み出してきた人間そのものへの敬意を込めているのでは?と考えました。ナポレオンを思わせるジャケットから、ベルエポックなドレス、そして60年代後半から70年代の前半にかけて若者の反骨精神を象徴したレザーのライダースまで、人間は数百年どころか、もしかすると数千年にわたり、美を定義し、追いかけ、洋服や装身具として表現し続けています。フランチェスコは、そんな人類の歴史にオマージュを捧げたし、これからも人間はウサギを追いかけるように美を追い求めるのだと訴えているのではないか?そんな風に考えたんです。

後半にかけて装飾を増していくのは、ウサギの予期せぬ動きを表現したものでもあるようですが、時代に応じて変化する完璧を求めて、思考し、手を動かし続ける人間の豊かな可能性などを表現しているのではないか?と。「大袈裟な」と思われるかもしれませんが、これがランウエイショーの魅力であり、フランチェスコの「マルニ」の醍醐味だと思っています。

正直、万人が着られる洋服は、決して多くないけれど、ショーの後は拍手喝采でした。コンセプチュアルなファッションショーで、今の時代に問いかけるクリエイターが賛美される。ファッションショーには、いつまでも、そんなムードが残って欲しいと思っています。って、アツく語っちゃった(笑)。

木村:初日のラストは「MSGM」本社へ。「MSGM」は今回、ショーではなく、インスタレーション形式で最新コレクションを発表しました。会場の床にはブルーの砂のような素材でうねる動線を作ります。今回は、夏のリゾート、海、波、ブルーがキーのようです。立体的な刺しゅうでさざ波のような表情を作るスパンコールミニドレスやメッシュ素材のマーメイドスカート、フラワープリントのスカートなど夏らしさ満開。

マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)デザイナーは自身が別荘を持つ、地中海沿岸のリグーリア州の風景から今回のコレクションを制作したそうです。「美しい夏の午後、海岸でお酒をたしなむ。そんな充実した時間の感覚を楽しんでほしい」とコメント。スモールコレクションでしたが、アート好きのマッシモのセンスがよく分かる空間で、アイテムも近い距離でゆっくり見ることができ、フレンドリーなマッシモとも直接話せて、楽しいプレゼンテーションでした!

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