ニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYコレ)が9月6〜11日にかけて開催された。今回は「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「トリー バーチ(TORY BURCH)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」といった重鎮の面々に加え、久々の凱旋ショーを行った「アライア(ALAIA)」やストリートの雄「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」が参戦するなどトピックスも満載だった。ここでは取材のこぼれ話(ときには関係ないハナシ)をニューヨーク初滞在の記者が振り返り形式でお届けする。
前回(Vol.3)では「ユニクロ(UNIQLO)」の内外価格差に心を砕かれそうになったが、せっかくなので余った時間で5番街周辺を視察してみた。観光客なら一度は行きたい、「モマ(MoMA)」でおなじみのニューヨーク近代美術館のほか、高級百貨店の「サックス・フィフス・アベニュー」や「バーグドルフ・グッドマン」が軒を連ねている。読者の中には、米国の百貨店事情に明るくない人もいるのではないだろうか?そんな人たちのために、限られた時間ではあるが店内を見て回った所感を書いてみたい。
ファッショナブルで明るく活気のある「サックス・フィフス・アベニュー」
「サックス・フィフス・アベニュー」は白を基調にした内装が抜け感があり、カラフルなアクセントやモニュメントが入店のハードルを感じさせないモダンな空間だ。天井が高く、一つ一つのブティックの作りがゆったりとしていて、日本で言えば阪急うめだ本店が近いと感じた。
低層の1階はハンドバッグ、ジュエリー。2階はビューティに力を入れている印象で、客層は若年層が多かった。3〜4階のラグジュアリーファッションのフロアでは、「ケイト(KHAITE)」や「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」といったNYコレクションブランドが欧州のビッグメゾンと並んでブティックを構えている。その並びに、NYブランドを応援しようという「地元愛」的なものも感じられた。
店内を歩いていると、VIP客向けのサロンの入り口に到着。日本の都心百貨店でも近年、富裕層向けの豪華な外商サロンやおもてなしを強化する傾向にあるが、ニューヨークの高級百貨店はどうなのだろうか?米国では日本以上に富の偏在が進んでいるため、富裕層はケタ違いの資産を持っているはず。この先では、食べきれないほどたくさんのピザやハンバーガーが振舞われているのだろうか…。
重厚で背筋が伸びる「バーグドルフ・グッドマン」
5番街で「サックス・フィフス・アベニュー」と雌雄を分ける「バーグドルフ・グッドマン」は、重厚な木目調や真鍮などが落ち着いた雰囲気を醸す、クラシックな百貨店だ。日本でいうと三越日本橋本店が近いだろうか?いわゆる婦人服のフロアでは、ミセスが好みそうなドレスやジャケットなどが並ぶ。実際の客層も、「サックス」よりだいぶ上な印象を受けた。
米百貨店“再編”が意味するもの サックス親会社によるニーマン・マーカスG買収【鈴木敏仁USリポート】
米百貨店業界は足元で大きく再編に動いており、「サックス・フィフス・アベニュー」を有するハドソンズベイ・カンパニーが「バーグドルフ・グッドマン」のニーマン・マーカス・グループを傘下に収めようとしている。日本でいえば、2008年の三越・伊勢丹の統合の誕生のようなエポックメイキングな出来事になるのかもしれない。今後の米百貨店業界はどう変わっていくのか、動向を注視したい。
Tips 米国出張には“どん兵衛”
きらびやかな高級百貨店を後にし、ホテルに帰って夕食の時間。昨今の円安かつニューヨークの物価高で、外食ばかりしていると途方もないコストになってしまう(実際、翌朝に食べたレストランのモーニングはパンケーキ+コーヒーで5000円超)。そこで大活躍するのがカップ麺。NY出張の前に、経験者から持っていくようオススメされていたのがカップめんの“どん兵衛”だ。
「そもそもなぜ“どん兵衛”?」「“カップヌードル”ではダメなのだろうか」という疑問が頭に浮かんだが、調べてみると、米国への渡航に際しては、牛肉、豚肉、鶏肉、肉エキスなど「肉」が原料に含まれるものは全てNG。その厳しいフィルタリングをくぐり抜けられるカップ麺はほとんどなく、その一つが“どん兵衛”だということだ。
庶民の味方だったはずの「ユニクロ」に突き放され、米国の高級百貨店で強張った心と体に、澄んだ出汁が染み渡るのを感じる。せっかくスーツケースにカップ麺を詰め込んでも、全て取り上げられてしまっては目も当てられない。これから米国への旅行や出張を控えている方は注意してほしい。