ファッション
特集 NY・ロンドンコレクション2025年春夏

窮屈な社会に立ち向かう勇姿にエール 2025年春夏ロンドンダイジェスト

2025年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイークが現地時間の9月13〜17日に開催しました。今シーズンは、ロンドンコレクション初参加の木村がリポートします。前半は若手ブランドの発表が続きましたが、後半は「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」や「バーバリー(BURBERRY)」など、日本でも注目度の高いブランドがショーを発表しました。ここでは特に印象に残ったローカルブランドを中心にロンドン・ファッション・ウイークのダイジェストをお届けします。

最終日は「アニヤ・ハインドマーチ」のカフェで朝食会

ロンドンコレ最終日の朝は、「アニヤ・ハインドマーチ(ANYA HINDMARCH)」主催の朝食会に行きました。ベルグレイヴィア地区のポイントストリート沿いには、「アニヤ・ハインドマーチ」の1号店やコンセプトショップ、カフェなどが並ぶ“アニヤ村“があります。現在コンセプトショップは「ピーナッツ(PEANUTS)」とのコラボ仕様になっていました。カフェでもウッドストックのクッキーなどコラボメニューが楽しめます。日本でも大人気の同ブランドですが、イギリスでも同様で「ピーナッツ」コラボの発売時には行列、ほぼ即完だったそうです。デザイナーのアニヤさんに日本のファンへのメッセージももらいました。

プラスサイズ女性に新しい選択肢 明確なパーパスがすばらしい

若手支援プロジェクト「ニュージェン」選出ブランドの「カロライン・ヴィット(KAROLINE VITTO)」には、“プラスサイズの女性たちが自分の体を愛し、ファッションを楽しむための服を届ける“という明確なパーパスがあります。「フィーベン(FEBEN)」と同様に、過去には「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)とステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)による若手クリエイター支援プロジェクトにも選出され、2023年9月に開催したミラノ・ファッション・ウイークで発表しています。

ふくよかであることを良しとしない社会では、体の肉は隠して当然のものという感覚が刷り込まれてしまいます。でも「カロライン・ヴィット」の服は、大胆にカットアウトした生地を、ひもやワイヤーで官能的につなぎ、体の膨らみを見事にファッションに落とし込んでしまうんです。おおぶりでなめらかな曲線を描くシルバーのアクセサリーもかわいい。届けたい人がしっかりと見えているブランドは強いなと思います。

老若男女が着る「シモーン ロシャ」が楽しい

日本でもファンが多い「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」の会場には、独特の世界観のファンが集いました。下記のスナップ記事から老若男女が着こなす「シモーン ロシャ」をお楽しみください。

今回の会場は刑事裁判所で、入場する際に空港のような荷物検査があり、ちょっとドキドキしました。ショーのスタートは、モデルのソフィア・スタインバーグ(Sofia Steinberg)が、ロングのチェスターコートを体に巻きつけるようにして登場。コレクションには、キーモチーフのカーネーションを至る所に散りばめました。個人的にはメンズモデルのルックがお気に入り。ダスティーピンクのシフォン素材で作ったアノラックや、襟元にビジューをあしらったデニムのセットアップもかわいい。

会場になぜ刑事裁判所を選んだのかは聞けていませんが、従来の男性像を飛び越えたクリエイションを生み出すシモーンがあえて「ジャッジする場」を舞台に選んだのは、「シモーン ロシャ」流の正義を主張しながら、従来のマスキュリンスタイルに意義を唱える挑戦状だったのかもしれません。

今のロンドンを象徴する流動的なジェンダー感

「シモーン ロシャ」を筆頭にロンドンでは、腰回りを膨らませたフリルスカートやビンテージレース、リボンやビジューを使ったヴィクトリアン調の提案が目立ちます。そんなボリューミーで甘いルックは、なんとなくちょっとお腹いっぱいかも……と思っていた矢先、「アーデム(ERDEM)」がかっこいいエンパワリングなコレクションを見せてくれました。

同ブランドは今季、1920年代に生きたゲイカップルのストーリーに着想を得ました。カラーピンがきらりと光るシャツとピンストライプのダブルブレストセットアップ、細かい花のモチーフを刺しゅうしたロングコート、タキシードジャケットにクリスタルをつなげたスカートの合わせ。どれもマスキュリンな佇まいだけど、フェミニンでもある。装いは変われど自分の芯は変わらない――そんな強い人間像を受け取りました。

流動的なジェンダー観は、今のロンドンファションシーンの特徴の一つなのでしょう。ジェンダーレスやジェンダーニュートラルといった言葉は、よくトレンドワードに上がります。ですが、その感覚が実際に社会に浸透するにはまだまだ時間がかかると思います。ロンドンブランドは、窮屈な社会規範にファッションという美しい武器で立ち向かい、みんながより自由に生きられるような勇姿を見せてくれた気がします。

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