ナイキ(NIKE)は9月19日、ジョン・ドナホー(John Donahoe)社長兼最高経営責任者(CEO)が10月13日付で退任することを発表した。後任には、かつて同社でさまざまな要職を務め、2020年に退職したエリオット・ヒル(Elliott Hill)が就任する。なお、ドナホー社長兼CEOは、取締役会のアドバイザーとして25年1月末まで同社に在籍する。
マーク・パーカー(Mark Parker)=エグゼクティブ・チェアマンは、「取締役会はナイキの未来に向けて必要なことや過去の業績を踏まえ、後任について思慮深く検討した。その結果、エリオットはグローバルな専門知識やリーダーシップ、業界やパートナーに関する深い理解に加えて、スポーツ、ブランド、商品、消費者、アスリート、そして従業員に対する情熱を持っており、当社における次の段階の成長を導くにふさわしい人物だという結論に至った。個人的にも、私は彼と30年以上にわたって仕事をしており、彼と経営陣が成長機会を捉えられるようサポートすることを楽しみにしている」と語った。
ヒル次期社長兼CEOは、現在60歳。ナイキで長年にわたってさまざまな要職を歴任し、コンシューマーおよびマーケットプレイス担当社長を最後に、20年に同社を離れている。
ドナホー社長兼CEOは、ダートマス大学(Dartmouth College)を卒業後、スタンフォード大学経営大学院(Stanford Graduate School of Business)でMBAを取得した。およそ20年にわたって米大手コンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニー(BAIN & CO.)に勤務し、1999年に社長兼CEOに就任。2005年に米大手リセールEC企業イーベイ(EBAY)に加わり、08年から15年までCEOを務めた。17年に米IT企業サービスナウ(SERVICENOW)の社長兼CEOに就任。20年1月に、06年からナイキを率いていたパーカー前会長兼社長兼CEO(当時。現エグゼクティブ・チェアマン)の後任として同社に入社した。なお、ドナホー社長兼CEOは、14年からナイキの社外取締役も務めていた。
業績鈍化に苦しむ王者ナイキ
スポーツ分野で圧倒的な売上高を誇る王者ナイキだが、最近は業績が鈍化している。24年5月期決算は、売上高が前期比0.3%増の513億6200万ドル(約7兆1906億円)、EBIT(利払前・税引前利益)は同5.6%増の65億3900万ドル(約9154億円)、純利益は同12.4%増の57億ドル(約7980億円)だった。
なお、四半期ベースで見ると、24年3~5月期(第4四半期)の売上高は前年同期比1.7%減の126億600万ドル(約1兆7648億円)、EBITは同37.4%増の16億7300万ドル(約2342億円)、純利益は同45.5%増の15億ドル(約2100億円)とアナリスト予想を下回る結果に。これを受け、同社は25年5月期の見通しを下方修正した。
市場はこうした決算内容を嫌気し、ナイキの株価は決算発表の翌日、前日比20.0%安の75.37ドル(約1万551円)に下落。しかし、今回の人事を受け、19日の時間外取引では一時同10.2%高の89.25ドル(約1万2495円)を付けた。