アメリカの会計会社コーエン&カンパニーの調べによると、アマゾンは2020年までにアパレル事業の売り上げを現在の160億ドル(約1兆9800億円)から3倍以上の520億ドル(約6兆4400億円)に伸ばし、現在トップのメイシーズを抑えてアメリカ最大のアパレル小売企業になる。今後も安定的なユーザーの増加とウィメンズやメンズ、キッズ、アクセサリー、シューズの各ジャンルの成長を見込む。ジョン・ブラックレッジ=コーエン&カンパニーディレクターは、「09年にはアメリカに30カ所しかなかったアマゾンの物流倉庫は、昨年末の時点で110カ所にまで増えている。アマゾンの成長率を、年率12%で拡大・成長する一般的企業と同一視してはならない」と話す。
アマゾンは現在、2500以上ものアパレルブランドの商品を抱えており、そのSKUは1900万にものぼる。ハーバード・ビジネス・スクールのラジール・ラーヴ教授は、小売業界におけるアマゾンのシェア拡大を支える4つのポイントを挙げた。ネットやモバイルに慣れ親しんでいるミレニアル世代が購買力を持つようになったことと、以前までは格安商品に対し「安かろう、悪かろう」とためらっていた消費者の価値観が「ユニクロ」や「ザラ」などのSPAの浸透によって変わっていることの他、リピート率が高いこと、オーダーしてから手元に届くまでの期間が短くなっていることなどの利便性アップが主な理由という。
同社は08年、ファッション部門の統括役に元ギャップ傘下のパイパーライムのキャシー・ボードイン=シニア・バイス・プレジデント(当時)を起用し、アパレルビジネスへの注力を始めた。13年からは広告キャンペーンや専用スタジオを活用したイメージ戦略など、ファッション性を高める計らいが目立つ。サイトでは一番の強みである格安商品を充実させると同時に、近年は「カルバン・クライン」「コロンビア」「アンクライン」「ディーゼル」「トミーヒルフィガー」「リーバイス」をはじめとする有名ブランドやデザイナーズブランドとも提携を進めている。メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティチュートや、7月13〜16日に初開催されたニューヨーク・ファッション・ウイークメンズのスポンサーも務めた。
一方、アナリストのクリスタ・ガルシアは、「アマゾンのアパレル・アクセサリー部門の成長は続くも、主な原動力になるのはデザイナーズブランドの商品ではなくよりリース?ナフ?ルで実用的な商品」と予測する。「ラグジュアリーやデザイナーズブランドを打ち出していた時期もあったが、最近では再び中間層に向けたマーケティングに回帰している。アマゾンのファッションサイトは、あくまでお手頃な商品を求める消費者のためのプラットフォームであって、ブランド商品を求める消費者が使用するサイトではないからだ」とコメント。
現在アメリカのアパレル、アクセサリー、シューズのマーケットにおいて、メイシーズは7%、アマゾンは5%のシェアを持つ。メイシーズの昨年度の年商は281億ドル(約3兆4800億円)で、うち84%はアパレルとアクセサリーだった。