ニューヨーク、ロンドン、ミラノが終わり、2025年春夏パリ・ファッション・ウィーク(以下、パリコレ)が9月23日に開幕した。10月1日までの9日間にわたり、公式スケジュールでは106ブランドがショーやプレゼンテーションで新作を発表する。今季一番の話題は、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)による新生「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のデビューショー。クリエイティブ・ディレクターが不在の「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」と「シャネル(CHANEL)」はデザインチームによるコレクションを披露する予定だ。
「ヴァケラ」は「オニツカタイガー」や「ディヘラ」とコラボ
初日は夕方からのスタート。設立10周年を迎えたNY発の「ヴァケラ(VAQUERA)」は、今季も若々しく勢いのあるコレクションを見せた。プレスリリースは、破壊的なアプローチで思考と会話を喚起する手段としてコレクションやショーを制作していた設立当時から、「確立されたDNAとレンズによって、焦点はウエアラブルであることと“新しいベーシック“というアイデアに移行した」という説明。確かに初期に比べると、ここ数シーズンは持ち味である挑戦的なエッジを効かせつつも、クオリティーは上がり、リアリティーのある提案も増え、次のステージを見据えているように思える。
今季はアメリカンスポーツウエアを軸に、メンズライクなシャツ、ランジェリーライクなブラやスリップドレス、パテントレザーのレーサージャケットやミニスカート、チャップス、セーラーハット、チェーンプリント、大きなリボンやラッフルといったガーリーなディテールなどを自在にミックス。そのスタイルはしっかりと「ヴァケラ」らしさを感じさせるとともに、自由な感覚でファッションを楽しむ若者の共感を呼びそうだ。
新たな挑戦は、スタイルを完成させるアクセサリーに見られた。シューズは、スペイン語で「カウガール」を意味するブランド名にちなんだカウボーイブーツのアレンジに加え、「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」とのコラボスニーカーを制作。人気の“メキシコ 66”をベースに手作業でダメージ加工やペイントを施し、折り返した長いタンの部分に片足ずつ「LOVE」と「RAGE」の文字をあしらった。ジュエリーは「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」や「ロンシャン(LONGCHAMP)」との協業も記憶に新しいパリ発の「ディヘラ(D’HEYGERE)」と共に制作。また、ビンテージグラマーと未来的感覚を掛け合わせたブランド初のサングラスも発表した。
「CFCL」はより感覚的なクリエイションで新たな一歩
前回はパリコレ公式スケジュールで初めてショー枠に選ばれたということもあり、コンピューター・プログラミングに向き合うブランドらしさをストイックに見せた「シーエフシーエル(CFCL)」だったが、今季はより直感的にコレクションを制作。“ニットウエア ハンドビルト(Knit-ware Handbuilt)“をテーマに掲げ、手捻りで器を作り出すようにニットウエアの可能性を探求した。「パリコレでショー発表をするには、華やかな気持ちや心踊るような気持ちを大切にしないといけない。そのためには、『CFCL』がこれまで作ってきた“かっちり“とした定義の外側にチャレンジする必要があった。そこで、今回は伝統的な染めや手仕事を交えて、コンピューター・プログラミング・ニットが生む実用的な服から少し離れようと思った」と、高橋悠介クリエイティブ・ディレクターは振り返る。結果生まれたアイテムからは、これまでよりも自由なムードと実験的なアプローチが感じられた。
アフリカなどの平面的な民族衣装からインスピレーションを得たドレスやトップスは、3Dコンピューター・プログラミングの技術を2Dの無縫製ニットに活用して制作。あえて作った余白の部分が飛び出たり垂れたりして、新しいシェイプを生んでいるのが印象的だ。伝統的な「注染」や「イカット」から着想を得た染色技法を用いて、カラフルな柄を描いたアイテムも新しい。また、華やかなフリンジのドレスやスカートは、ホールガーメントでアイテムを作る際にあらかじめプログラミングでいくつもの小さな穴を開けておき、その一つ一つに手作業で同素材のニットで作った短冊状のパーツを通して取り付けたもの。機械を使わずに棒針で編んだレース状の有機的なモチーフをつなぎ合わせたパッチワークドレスもあり、これまで以上に手仕事の素朴さや温かみを感じる。アイコニックな“ポッタリー(POTTERY)“のシルエットは、ミニスカートやベビードールドレスなどにアレンジすることで、アクティブな軽やかさやガーリーなムードが加わった。