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髙石あかり × 伊澤彩織 「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」が見せる「日本発アクション映画の面白さ」

PROFILE: 左:髙石あかり 右:伊澤彩織

PROFILE: 左:(たかいし・あかり)2002年12月19日生まれ、宮崎県出身。2019年に女優活動を本格化。その後も映画をはじめ、舞台や数々のテレビドラマへの出演を重ねている。2021年の映画初主演作「ベイビーわるきゅーれ」が大ヒット。23年には、「わたしの幸せな結婚」、「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」などでの演技が評価され第15回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。近年の主な作品は、「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」(24)、声優として参加した「きみの色」(24)などがあるほか、11月1日公開予定の映画「スマホを落としただけなのに~最終章~ファイナルハッキングゲーム」や12月27日公開予定の「わたしにふさわしいホテル」などが控えている。 右:(いざわ・さおり)1994年2月16日生まれ、埼玉県出身。スタントとして映画「るろうに剣心最終章 The Final/The Beginning」(21)、「ジョン・ウィック:コンセクエンス」(23)などに参加。2021年に「ある用務員」で俳優デビューし、「ベイビーわるきゅーれ」では第31回日本映画批評家大賞新人女優賞を受賞。最近の主な出演にクリープハイプ「青梅」やドレスコーズ「聖者」、Tofubeats「I can feel it」のMV、舞台「Saga the STAGE ~再生の絆~」などがある。24年7月に発売されたゲーム「祇:Path of the Goddess」ではアクションコーディネーターを担当している。

社会にうまく適合できない殺し屋女子2人組のゆるい日常と、躍動感のある本格アクションが交わる唯一無二の世界観で、2021年第1作の公開直後から瞬く間に話題となった阪元裕吾監督の青春バイオレンスアクション映画「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ。その第3弾となる「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」が9月27日から公開された。

殺し屋協会に所属する「ちさまひ」こと杉本ちさとと深川まひろの殺し屋コンビが、出張先で史上最強の敵に追い詰められていく本作は宮崎各地でロケを敢行。これまでにない驚きのロケーションや規模でのアクションが展開される。杉本ちさとを髙石あかりが、深川まひろを伊澤彩織が演じるほか、水石亜飛夢、中井友望、飛永翼(ラバーガール)らおなじみのキャストも出演。過去最強の敵である一匹狼の殺し屋・冬村かえでを演じるのは「ぼくのお日さま」「本心」など話題作の出演が続く池松壮亮。そしてちさまひに同行する先輩殺し屋・入鹿みなみ役には「一月の声に歓びを刻め」での名演が記憶に新しい前田敦子が参加する。

製作陣が全力を振り絞り作り上げた「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」の見どころについて、主演の髙石あかりと伊澤彩織に語ってもらった。

——「ナイスデイズ」の台本を初めて読んだ時の感想を教えてください。

髙石あかり(以下、髙石):阪元さんの作る台本って、他とはまた違う読みごたえがあるんです。漫画や小説に近い、それだけで一つの作品として出せるレベルで。アクション場面も単にアクションが書かれているわけではなく「この時この人はこう思った」というような心情もみっちり書かれているんです。だから仕事として「台詞を覚えるために台本を読む」というより、物語としてどうなっていくんだろうと思いながら読んでいました。私も「ベビわる」の物語のファンの1人として、続きが読めてうれしかったです。

伊澤彩織(以下、伊澤):確かに私も自分が演じるものとしてではなく、「ベビわる」続編の小説を読んでいる感じでした。ちさまひと同時にかえでの気持ちにも胸が苦しくなっちゃって。初めて読んだ時は泣きながら「面白い……!」ってなってました(笑)。

——阪元監督は1作目の段階で、3作目の話が浮かんでいて皆さんにその話をしていたと伺いました。その時に聞いていた内容と、今回の内容は同じだったんでしょうか?

髙石:当時なんて言ってたっけ……。監督は結構「4はこう、5はこう」みたいな話をするんですよ。だからもうどれがどれか分かんなくなる(笑)。

伊澤:もともと2作目と3作目は同じ時期に撮影する予定だったんです。その時撮影予定だった「幻の3」も実はあるんですよ。でも3の撮影を1年延期したことによって、全然違う内容の作品ができました。

髙石:「幻の3」もボロ泣きでした。すごい話だったのでまたどこかでやりたいです。

伊澤:そうやって監督の中に、ちさまひで描きたい物語がいろいろあるのはすごくうれしいですよね。

——今回の敵・冬村かえでを演じた池松壮亮さんは素晴らしい迫力でしたね。

伊澤:池松さんが画面に映った瞬間、引き込まれ方が全然違いますよね。監督から「前作と前々作は2人が仕事をしている話ではなかったから、今回はちさまひが仕事をする話にします」と言われていて、アクション監督の園村(健介)さんともこれまでと違うシリアスな殺し合いのアクションシーンをやりたいねと話をしていたんです。それをかなえてくれたのが池松さんでしたね。「ベビわる」の世界を一気に緊張感MAXにしてくれました。

髙石:圧倒的な力を持っていて怖いのに、かわいらしさや人間らしさもかえでという役に詰め込まれていて……池松さんがいたことで「ベイビーわるきゅーれ」の質が変わる続編になったのかなと思います。

——一方で先輩殺し屋・入鹿みなみ役を演じた前田敦子さんには笑わされました。前田さんと現場でご一緒されていかがでしたか?

伊澤:とっても優しかったです。パンを私たち2人に「食べて」って差し入れをしてくれて。撮影が昨年の9月くらいでハロウィンが近かったので、泊まっていたシーガイアのパン屋さんにはグルグル巻いたミイラのパンとか、一つ目小僧のパンとかたくさんあって。あれおいしかったな。

髙石:ちょうどこの映画が公開される時期がハロウィンに近いので、宮崎に行けば皆さんも食べられんじゃないかなと。前田さんが差し入れをくれたのが、オープニングのアクションシーンを夜遅くまで撮るぞってタイミングだったので……優しさがしみました。

宮崎県での撮影

——「ナイスデイズ」の舞台となる宮崎県での撮影はいかがでしたか?

髙石:私は宮崎が地元なんですが、長年ご一緒している伊澤さんや阪元監督、スタッフの皆さんと地元で撮影ができることは大きな喜びでした。宮崎に大好きな人たちが来てくれて、またプライベートでも行きたいと言ってくれる方もいて、それが何よりうれしかったです。

伊澤:私もプライベートで行きたいな。

髙石:うれしい!

伊澤:撮影期間中はチキン南蛮定食を食べたくらいで、あんまりどこにも行けなかったんですよね。もっと焼酎を浴びたかったんですけど……。

髙石:買って帰ってたよね(笑)。

伊澤:撮影中はあんまりお酒が飲めなかったので。

髙石:でもシーガイアに泊まってたじゃないですか。私は実家でしたけど。シーガイアっていうのは今回の撮影でも使わせていただいているホテルなんですが、そこに泊まれるなんて宮崎の夢ですよ。私も人生で1回しか泊まったことがない。

伊澤:3週間泊まっちゃった(笑)。

髙石:いいな〜〜〜!私も部屋に遊びに行って、一緒に寝て、休憩したりはしていました。

——髙石さんの実家には行かれたんですか?

伊澤:行きたかったんですが……行けなかったんですよね。

髙石:でも親が撮影を見に来てくれてあいさつはしましたよね。

伊澤:おにぎりと豚汁を差し入れに持ってきてくださって。

髙石:でっかい給食みたいな鍋でね。「おかわりいる人!?」って感じで。監督はめっちゃおかわりしてました(笑)。

伊澤:お弁当生活が続いてたからしみましたね……。監督も「これ!これですよ!」って言いながら豚汁の温もりをかみしめていました(笑)。

「2人で1つ」から「1人じゃない」へ

——「ナイスデイズ」ではちさまひの距離感がかつてないほど親密に描かれていますが、本作の2人の関係性について阪元監督からどのようなディレクションがあったのでしょうか?

伊澤:ちょっとしたニュアンスの違いですが、前作の時は「2人で1つ」と言われていたのが、「ナイスデイズ」は「1人じゃない」って言われて。同じ意味のようだけど、少し違うというか。

髙石:確かに!シーンごとにそのつどディレクションはありましたけど、作中で一貫していたのは「1人じゃない」でしたね。

——若い女性を主人公にしながら、女性性を強調したり、ありがちな恋愛などを描かないことも「ベイビーわるきゅーれ」の魅力の一つと感じていますが、阪元監督のこのような人物描写についてどう思われますか?

伊澤:やっとこういう人が現れたというのは思いましたね。これまでアクションシーンにも女性性や制服が求められたりだとか、動きとは関係ない意味を持ったアクションシーンを求められることがあったんです。「ベビわる」のアクション監督である園村さんが手掛けた「HYDRA」(2019)を観た時に「私がやりたいアクションはこういうものだ」と感じたのですが、それをかなえてくれたのが園村さんと阪元さんでした。今まで悶々としてた分、ちゃんと自分がやりたい形でアクションができているなというのは自覚していますね。

——フォーマルからゆるいものまで、「ナイスデイズ」の見どころの一つが幅のある2人のフッションですよね。着られた2人の考える、衣装の注目ポイントはどこでしょうか?

伊澤:まひろは基本的に戦いやすいダボっとした格好が多いのが特徴で、今回も相変わらずバンドTシャツを着ています。一番のお気に入りは2人で自転車に乗ってるシーンで被っている悪魔のツノが生えたニット帽かな。かわいくて好きでした。

髙石:あれ素敵だよね。ちさとは前作から「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」をよく着ているんです。スタイリストさんが「これ似合うと思うから」って持ってきてくださったんですが、偶然にも私も普段からよく着てるブランドで。それも最近のものではなく一昔前のもので、今ではなかなか手に入らないようなレアな衣装が本作でも全編にちりばめられています。それがやっぱりかわいいんですよね。

伊澤:舞台挨拶とかすると、お客さんがちさまひの衣装を着てくれていたりするんですよね。まひろが着ている「ナイキ」の服とか、バンドTや、かばんまで。どこで見つけたんだろうっていつも驚かされます。

見どころはアクションと会話

——現在放送中の連続ドラマの展開も楽しみですね。

髙石:「ナイスデイズ」とは真逆と言ってもいいくらいに違いますよ。

伊澤:逆張りです(笑)。

髙石:ドラマのラストはヤバいですよね。

伊澤:ドラマも初めて台本を読んだ時は泣いた。

髙石:私は逆にドラマの方がボロボロ泣いたかもしれない。また違ったちさまひと、2人を取り囲む環境が描かれていて。「ベビわる」シリーズ全部に関わってくれているスタッフさんが「このドラマ、伝説……!!」って言ってました(笑)。

伊澤:新しいメンバーたちもいて。すんごいことになってます。毎日面白いシーンが撮れて楽しいし、監督がシーンを撮るたび「これは勝った!」って言ってます(笑)

髙石:これまであまり描かれてこなかった、お互いの家庭環境がどうなのかって部分もドラマには詰め込まれていたり。

伊澤:過去を感じさせるというか、ちさとが何でこうなったんだとか……。

髙石:ギリギリ言えるのはここまでかな。ドラマは坂元さんに加え、平波さん、工藤さんの3人が監督をされているんですが、皆さん撮影しながらずっと楽しそうで、ひたすら笑ってくれているのもうれしいです。ドラマならではのカットとか、長回しもあったり、いろんな要素が詰め込まれていて。「ベビわる」がこれまでとまた違った輝きを見せてくれるんじゃないかなと……。

伊澤:パズルのように場面を撮っているので、それがどう組み立てられるのか楽しみです。

——最後に、本作の見どころを教えてください。

髙石:やっぱりアクションですね。序盤からぶっ飛ばしてますから。

伊澤:アクションの手数もすごく多くて、初めからギアを超上げていきました。実は撮影中に監督に言われて救われた言葉があるんです。2の撮影時に、1のアクションを超えなきゃというプレッシャーでメンタルを参らせていた時があって。それで今回もまた「前回を超えるためにはどうすればいいんだろう」と悩んでいたら、阪元さんが「超えなくていいんじゃないですか」って言ってくれたんですよ。1も2もその時の「ベビわる」チームが作った完成形だし、今作も過酷な撮影スケジュールで「全員野球だ!」と皆で作り上げた結果なので……悔いはないです。キャッチコピー通り「これで最後」という気持ちでやっていました。

髙石:皆で日々限界を超えながら作ったので、皆の全力が注ぎ込まれたアクションを楽しんでもらえればうれしいです。

伊澤:あとは、ちさまひの長回し会話シーンで「あ、これが『ベビわる』だった!」となりました。そんなちさまひの日常とアクションのギャップがやっぱり見どころかな。今回は私情とかではなく、ちさまひがちゃんとお仕事をしているので、それがどんなものかという部分も見ていただけると。

髙石:宮崎ロケなので画変わりもすごいですよね。

伊澤:ヤシの木もあるし、南の島に来た気分でした。

髙石:聖地になりうる素敵な場所もいっぱいありましたよね。「県庁で殺し合いとかダメでしょ……いいの?」って思いましたよ。そしたら「OK出ましたー!」って(笑)。ガッツリとアクションやってますからね。

伊澤:壁とか階段とかでめちゃくちゃやってますから。まねしちゃダメですよ。

髙石:そして濃いキャラクターもたくさん出てくるので、そこも楽しんでもらえればと思います!

PHOTOS:HIDETOSHI NARITA

■「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」
9月27日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
髙石あかり、伊澤彩織
水石亜飛夢、中井友望、飛永翼(ラバーガール)、大谷主水、かいばしら、カルマ、Mr.バニー
前田敦子、池松壮亮
監督・脚本:阪元裕吾
音楽:SUPA LOVE
アクション監督:園村健介
配給:渋谷プロダクション
©2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会

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