今年で40周年を迎える「ユニクロ(UNIQLO)」が、フランス・パリで特別展「The Art and Science of LifeWear: What Makes Life Better? 」を開催中だ。会期は10月1〜5日で、開幕前日には柳井正ファーストリテイリング会長兼社長や大矢光雄 東レ社長、9月に「ユニクロ」クリエイティブディレクターに就任したクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)らが登壇する記者会見も実施。パリ・ファッション・ウイークに合わせて現地を訪れている各国のメディア関係者に、「ユニクロ」の40年の道のりと、その背景にあるアートとサイエンスの世界を伝えた。
展覧会は「ユニクロ」の服作りの根幹にある“LifeWear”というコンセプトを、ユニークな展示やインタラクティブなインスタレーションを通じて紹介する大規模な没入体験型イベントとなっている。ヴァンドーム広場に構えるイベントスペースの地上階で、“LifeWear”を象徴するアイテムをインスタレーションとプロジェクションマッピングとともに展示する。地下スペースでは、長年の戦略的パートナーであり、世界有数の素材メーカーである東レとの協業で独自に開発されたテクノロジーの秘密を、視覚と感覚に訴えるフォトジェニックな展示方法で解き明かす。同展は、誰でも無料で入場可能なイベントとして開放されている。
「服は個性を作る部品」
会見に登壇した柳井会長は、「個性とは服にあるのではなく、人にあるものだと考えております。ファッションは人の魅力を引き出すために存在しています。いわば服とは、自らが選んだ個性を組み立てる部品です」と、パリ・ファッション・ウイークに集まるメディア関係者に「ユニクロ」のファッションに対する考えを示した。さらに、「使い捨ての服ではなく、長く着られる究極の普段着。それが“LifeWear”の哲学です。シンプルかつ高い機能性と耐久性、しかも毎年そのパフォーマンスを向上できるよう努力してまいりました。そんな“LifeWear”の価値を実現する基盤を支えているのが、まもなく創業100周年を迎える東レとのパートナーシップです」と続けた。
「ユニクロ」は東レと1999年に取引を開始し、2006年に戦略的パートナーシップを締結。それ以来、世界で爆発的ヒット商品となった“ヒートテック”“エアリズム”“ウルトラライトダウン”、直近では、共同開発した高性能な中綿を詰め込んだ軽くて暖かい“パフテック”アウターを生み出し、同展覧会でその革新的な技術を展示している。
06年時点で約2500億円だったファーストリテイリングの売上高は、24年8月期には3兆円を超えて着地する予定。柳井会長は、「規模の拡大ではなく、社会貢献を念頭に置いているからこそ、持続的な経営ができたのだと考えます。社会全体に貢献するため、服を作る会社ができることを見直し続けてきました。そんな私たちの努力の結晶が“LifeWear”です。『ユニクロ』の服は国籍、年齢、性別を超えたあらゆる人々のために作られています。世界中の人々が気軽に買える、ライフスタイルを作る道具です」と、国内外の記者に“LifeWear”のコンセプトを再提示した。
続いて登壇した東レの大矢社長は、水処理膜や炭素繊維の技術など、幅広い自社の技術開発を紹介したうえで、「世界が直面する課題に対して、革新技術先端材料によって本質的なソリューションを提供していく」と説明。「これからも“LifeWear”の進化を支えていきたいと考え、合成繊維だからこそ素晴らしい洋服の未来が描けると信じております」と締めくくった。
「ユニクロの“入念さ”にインスパイアされる」
説明会の最後に行われたパネルディスカッションでは、クレア・ワイト・ケラーと、「ユニクロ」のグローバルブランドアンバサダーであるテニスプレーヤー、ロジャー・フェデラー(Roger Federer)選手が登壇し、同展のテーマである“人々の暮らしをより良くするものは何か?(What Makes Life Better)”について各々の意見を述べた。司会者から、「ユニクロ」での新たな任務について問われたケラーは、「『ユニクロ』の服作りの姿勢に感銘を受けている」とコメント。「隅々まで行き届いた“入念さ”に私自身がインスパイアされるとともに、そのような服には人生をも変える力があると感じています。人々がどのように『ユニクロ』の洋服を着て、人生を送るのかを考えながら、クリエイションに向き合っています」と続けた。特別展を通して創業40周年をパリで祝うとともに、ケラーを迎えて新体制となった「ユニクロ」の未来に、さらなる成長発展を感じさせる内容で締めくくられた。
長らく「ユニクロ」と協業を続けるジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)や、「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」を手掛けるクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)とサラ・リン・トラン(Sarah-Lihn Tran)、アナ・ウィンター(Anna Wintour)米国版「ヴォーグ」編集長らも会場を訪れた。