ユニクロ(UNIQLO)は東レと共同開発した高機能中綿「パフテック(PUFFTECH)」を使ったアイテムを拡充する。今秋からメンズで4型、ウイメンズで6型、キッズ/ベビーで5型、合計15アイテムを投入する。ユニクロのR&D統括責任者である勝田幸宏ファーストリテイリングの上席執行役員は「パフテックを、軽量アウターの常識を変えユニクロを象徴するアイテムである『ウルトラライトダウン』と並ぶアイテムに育成したい」と意気込む。
「パフテック」の最大の特徴は、「手洗いが可能」かつ「多彩なデザインが可能にできる」という点だ。東レの大川倫央(ともひさ)GO事業部長は「開発自体は10年前から開発に着手し、1年に100回以上の試作を繰り返してきたが、ダウンとフェザーの"嵩高なのにソフト”という、実は素材的に相反する機能の両立がなかなか達成できなかった」と振り返る。「そうした中でダウンとフェザーを徹底的に研究し、その構造をある種忠実に再現したことがブレイクスルーにつながった」という。
中空になった極細ポリエステル短繊維を、バネのような特殊な形状にすることで嵩高性と軽さを両立した。デザイン面では糸が複雑に絡み合うことで"ワタ抜け”を防ぐ。これまでダウンは、毛抜け/羽根抜けを防ぐために横キルト(縫い目が横方向のみ)だったが、「パフテック」は多彩なキルティングのデザインが可能になる。
「パフテック」は今秋から、グローバル規模でのプロモーションもスタートする。パリで10月1日からスタートしたユニクロ40周年記念展「The Art and Science of LifeWear: What Makes Life Better? 」でも展示を行っているほか、10月14日からは日本や中国、欧州、米国などでも「パフテック」のCM動画を放映する。
ユニクロと東レの両社は、今後も「パフテック」アイテムを中長期的視野で拡大する。東レの大川GO事業部長は、会見で保温性やダウンのフィルパワー換算の数値など、具体的なスペック説明こそしなかったものの、「高機能中綿としてのスペックは、これまでの高機能中綿素材を凌駕している」と自信を見せる。今後は、繊維の細さや形を、ナノレベルで制御する「ナノデザイン」を使った原糸開発にも着手する。「すでにかなりの高機能を実現できているものの、実はパフテックのポテンシャルはかなり大きい。これまで保温性の一つの目安であったダウンやフェザー基準の"フィルパワー”という概念すら変えられるかもしれない」。