コロナ禍に急拡大し、2021〜22年には新ブランドが200前後も生まれたと言われるゴルフ市場。23年以降の勢いは落ち着いているものの、コロナ前と比較すれば、値上げも後押しする形でゴルフ市場は拡大しており、引き続き注目が集まるマーケットだ。今秋のゴルフの注目ニュース2つを紹介する。
「ミハラ」の人気スニーカーが
トリプルコラボのきっかけ
三原康裕が手掛ける「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO以下、MMY)」とトランジットホールディングス(旧トランジットジェネラルオフィス)のゴルフブランド「パシフィック ゴルフ クラブ(PACIFIC GOLF CLUB以下、PGC)」、韓国のショップ「ケーススタディ(CASESTUDY)」は、トリプルコラボレーションでゴルフアイテムを企画した。「ケーススタディ」で先行販売し、国内では「PGC」の公式ECで販売。「MMY」が運営する原宿の直営店「マイフットプロダクツ(MY FOOT PRODUCTS)」では、9月21、22日にポップアップを実施した。今後、さらに国内でポップアップを行う可能性もあるという。
「ケーススタディ」は韓国の有力モードセレクトショップ「ブーン ザ ショップ(BOON THE SHOP)」から派生したコンセプトショップ。旧知の仲という同店のバイヤーから、三原のもとに「ゴルフシューズを作ってほしい」と依頼があったのが今回のコラボのきっかけという。「MMY」で人気のスニーカー“ピーターソン(PETERSON)”をベースにゴルフシューズを作り、それは「ケーススタディ」独占で販売することになったものの、「ラインアップが靴だけでは寂しい。自分はゴルフはしないが、友人の中村(貞裕トランジットホールディングス社長)さんや姉川(輝天PGCクリエイティブディレクター)さんがゴルフブランドをやっている。だったら一緒に服も作ろうとなり、トリプルコラボとなった」と三原。
11歳からサーフィンをしているという三原は、「PGC」が提案しているような“サーフ&ターフ”(ゴルフとサーフィンを共に楽しむ)のムードに共感したという。シューズ開発にかけた期間は2年半。ソフトなスパイクを使用してゴルフ場だけでなく街でも履けるようにしつつ、芝や土の汚れがつきづらいように配慮した。「ゴルフはしないが、ゴルフシューズにはかなり詳しくなった」と三原。
アパレルも、ゴルフシーンだけでなく街でも着られるデザイン。バックプリントのモックネックシャツ(1万7000円)やポロシャツ(1万6000円)の胸元や、ショーツ(1万6000円)の裾などに、「MMY」で人気のダックのモチーフを刺しゅうしているのもポイント。
立ち上げ35年超、
若年層に向けて派生ブランド
老舗ゴルフブランドにも新しい動きが出ている。ワールドグループのエクスプローラーズトーキョーが手掛ける「アダバット(ADABAT)」は25年春に、新ブランド「アダバット ストリーム(ADABAT STREM)」を立ち上げる。1987年にスタートし35年以上の歴史がある「アダバット」は、中心顧客層が60代となっており、コロナ禍のゴルフバブルの恩恵もあまりなかったという。新ブランドは20〜40代に向けて、モノトーンやベージュといった落ち着いた色合いの、よりカジュアルなデザインやシルエットをそろえる。まずは自社ECで展開し、商業施設でのポップアップなども目指す。価格帯は、既存の「アダバット」(ポロシャツ1万円台後半〜2万円台前半、パンツ1万円台後半〜2万円台中盤)の8掛け前後で検討中だ。
24年3月からアダバット ブランドディレクターも務める靏博幸(かく・ひろゆき)ワールドグループ執行役員は、「グループの力を生かして、例えば富裕層顧客も多い『ドレステリア(DRESSTERIOR)』でポップアップを行うといったことも考えたい」と話す。ディレクター就任にあたり、展示会日程を従来に比べ約2カ月前倒しした。「ゴルフウエアは機能素材の作り込みも非常に重要なのに、慣例で販売時期に引きつけた展示会日程になっていた」。2カ月の前倒しはかなりの荒療治だったが、これにより、ありもの生地を使ったり、納期遅れを起こしたりといったことを防ぐ。
25年春には、既存「アダバット」の新ラインとして“アダバット ネイビー”も立ち上げる。価格帯、サイズ感は「アダバット」と同じにして既存顧客も取りつつ、トリコロールカラーのボーダー柄やロゴ使い、スポーティーな素材感などで変化をつける。下げ札をネイビーカラーにし、百貨店ゴルフフロアなどで展開する既存の「アダバット」売り場で販売する。
新ブランドと、既存「アダバット」、新ラインの3つ合わせて、「売り上げは従来の1.5倍前後を目指す」と靏 執行役員。「新ゴルフブランドはたくさん生まれているが、定番的なブランドが時流に沿った商品を出してくれると、商業施設としても(ブランドが立ち上げから数年で休止してしまうといったリスクなく)安心して扱えて助かる、と話すバイヤーも少なくない。そうしたニーズに応えていく」と話す。