2025年春夏のミラノ・コレクションは、不穏な世界情勢、もどかしい現実に対して勇気を持って異を唱えたり、その中で一筋の光を見いだし不安の中での平和を訴えたりのクリエイションに賛美の声が集まった。代表格は、「プラダ(PRADA)」だ。ラフ・シモンズ(Raf Simons)の加入以降、アーカイブに由来する普遍的なスタイルや定番に依拠し、色や柄に頼らないダークトーンを基軸にコアアイテムを連打してきたブランドは今シーズン、ファッションショーの構成からモデルまで大きく改め、勝負をかけた。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフは情報過多の時代、ネットやSNSを駆使すればなんでも分かると思われがちな時代、実は人類はアルゴリズムに支配されているのかもしれないと警鐘を鳴らし、自分の目で見て、手で触れ、袖を通してリアルに体感することの重要性を訴えた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年10月7日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
ミウッチャ&ラフのメッセージは、
「自らリアルに体感してヒーローに」
「なんでも知っているようで、実は何も知らないのかもしれない」。そんな印象をかき立てるため、今シーズンはキーアイテムを何度も見せることをやめ、予期せぬ順番で、さまざまなアイテムをランウエイに送り出した。ファーストルックは、肩ひもにワイヤーを入れた下着のようなドレス。対してセカンドルックは、ビンテージ加工のレザーに無数のメタルパーツをあしらったワンピースだ。以降もブルゾンとミニスカート、ボディーコンシャスなリブニットのポロとレギンスのようなパンツ、シルクサテンで作ったビスチエタイプのドレスなど、一貫性は皆無。数点登場したプルオーバーのニットは、ある時は大きな円形の穴を開けたメタリックなスカートと、ある時はシフォンのブラウスにブルマーと、そしてある時はセカンドルック同様のビンテージ加工を施したレザースカートと合わせるなど、脈略がない。そのニット自体、その下にオックスブルーのシャツを合わせたように見えるトロンプルイユ、円形のカットアウトを施したキーネック、そしてアーガイルなど、いずれも異なっている。バッグやシューズを含めて重複が一切存在しないアイテムを、ミスマッチ覚悟で組み合わせた、一貫性のないコレクションで訴えるのは、リアルに自力で探し、目で見て、手に取り、試して、自分らしいスタイルを見いだすことの重要性。アルゴリズムに支配されたデジタルの世界で、全てを知ったつもりになっておごることへのアンチテーゼだ。唯一何度か登場したのは、仮面ライダーや戦隊ヒーローの目のようなフレームのサングラス。リアルに体感して世界を知ることで、「未来のヒーローたれ」というメッセージを送った。
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