ドイツの高級ファッションEC「マイテレサ(MYTHERESA)」を運営するMYTネザーランズ ペアレント B.V.(MYT NETHERLANDS PARENT B.V.以下、マイテレサ)は10月7日、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)が擁するラグジュアリーEC大手ユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)の株式を100%取得することを発表した。本件については、4日に情報筋の話として「買収の合意も近い」と複数の海外メディアが報じていた。
今回の取引で、リシュモンは5億5500万ユーロ(約904億円)のキャッシュポジションを持ち、金融負債のないYNAPを、マイテレサが発行する新株と引き換えに譲渡する。この新株は、マイテレサの完全希薄化後の株式資本の33%にあたる。また、リシュモンは、運転資金を含めた一般的な企業ニーズのため、YNAPに期間6年・1億ユーロ(約163億円)のリボルビング・クレジット・ファシリティー(一定の借入可能期間中において限度額内で何度でも融資を受けられるローン)を設定する。
取引は2025年上半期に完了する見込みで、リシュモンはマイテレサの監査委員会のメンバーとオブザーバーを1人ずつ任命する権利を獲得するが、経営には携わらない。
YNAPのオフプライス部門は切り離して効率化
YNAPは、ウィメンズを中心とした高級EC「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」、メンズの「ミスターポーター(MR. PORTER)」、リーズナブルな価格の「ユークス(YOOX)」に加えて、ディスカウントECの「アウトネット(THE OUTNET)」を運営している。しかし、今回の取引後は、「ネッタポルテ」と「ミスターポーター」を「マイテレサ」のインフラ上で運営する一方で、「ユークス」と「アウトネット」が属するオフプライス部門を「マイテレサ」のラグジュアリー部門から切り離し、「いっそう高い成長率と収益性を可能にする、よりシンプルで効率的なオペレーションモデル」を実現するという。また、YNAPのホワイトレーベル部門は終了する。
マイテレサとリシュモンのトップによるコメントは?
マイテレサのマイケル・クリガー(Michael Kliger)最高経営責任者(CEO)は、「今回の取引により、当社はマルチブランドの、世界的かつ卓越したラグジュアリーECの構築を目指す。『マイテレサ』『ネッタポルテ』『ミスターポーター』は、互いに補完しあうラグジュアリーECとして、シナジー効果を生み出すものと確信している」と語った。
リシュモンのヨハン・ルパート(Johann Rupert)会長は、「YNAPにとって最良のホームを見つけられて、大変うれしく思う。多くの世界的なラグジュアリーブランドの信頼できるパートナーであるYNAPは、その先駆的な一流のカスタマーサービスと、インスピレーションを与える特徴的なキュレーションで知られている。マイテレサであれば、それぞれの強みを生かしつつ、YNAPをさらに成長させ、世界中の顧客や取引先を喜ばせることができるものと確信している」と述べた。