ドイツの自動車会社BMWの日本法人であるビー・エム・ダブリューは10月2日、「BMW M5」の新型モデルの発売を発表した。
「M5」は、BMWがプレミアム・セグメントにおけるミドルクラスセダンに位置づける「BMW 5シリーズ」の、ハイ・パフォーマンスモデル。BMWのハイ・パフォーマンス車両を手掛けるBMW M社が開発した「M5」は、1984年に初代モデルが登場した。今回発表した新型BMW M5は第7世代となる。
麻布台ヒルズの「フロイデ・バイ・ビーエムダブリュー(FREUDE by BMW)」で開催されたメディア向けの発表会では、ビー・エム・ダブリューの長谷川正敏社長がプレゼンテーションを行った。自身も先代のM5(F90)を所有しオフタイムでのドライビングを楽しんでいるという長谷川社長は「この新型BMW M5は、Mモデルの走る、曲がる、止まるといった基本性能の高さに加え、モータースポーツでの経験と技術を余す所なく注入し、駆け抜ける歓びを最大化した、ハイパフォーマンスな“ドライビングモンスター”である」と語る。
特別なチューニングを施すことなくサーキット走行も可能なこの新型M5は、4.4LのV型8気筒Mツインパワー・ターボ・エンジン(最高出力585PS(430kW)/5600-6500rpm、最大トルク750Nm/1800-5400rpm)に、BMW M5には初めてとなるプラグイン・ハイブリッド・システムであるM HYBRIDシステム(モーター出力197PS(145kW)、電池容量22.1kWh)を搭載。電気のみでの走行も可能であり、約70kmまでゼロ・エミッションで走行する。
BMWの御館康成ブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティング プロダクト・マネージャーはさらに詳細に新型M5を解説。「M5は特に士業や医師といった方々に愛されてきたモデルだ。多忙な一日の終わりに、パワフルなマシンを正確無比なハンドリングにより操ることで、自分の人生を思いのままにドライブするような気持ちになっていただくひとときを楽しんでいただいてきた」。
M5にはじめて搭載されたハイブリッドシステムについても、御館マネージャーは「まさにM5のハイライトが最高性のV8エンジンと、高性能V6エンジンに相当するモーターの、火花の散るようなコラボレーションだ」と強調する。
回転数が上がるほどにパワーとトルクが増える内燃機関のエンジンに対して、瞬時に最高出力に達する電気モーターは特性が正反対。この両者をスムーズな走りにチューニングするには、一般的にはエンジンの低回転域をモーターがアシストして加速性能を高める、またはエンジンをあえてダウンサイジングしてモーター出力とのバランスを取る。
しかし新型M5のM HYBRIDシステムではどちらもダウンサイジングすることなく、BMW Mモデル専用の8速Mステップトロニック・トランスミッションに電気モーターを組み込むことで、鋭いレスポンスとスムーズで力強い加速をかなえるエンジンの力を最大に発揮させるという。
重いバッテリーとコストという課題
電動化の大きな課題は、重いバッテリーを積むことによる車体重量の増加。重くなるほど慣性は大きくなる。簡単に言えば動きが鈍くなるのだが、この点についても新型M5ではバッテリーを完全に車体下部に格納する低重心化と、サスペンション、デファレンシャル、さらに後輪ステアといった電子制御のテクノロジーによって解決。M専用4輪駆動システム「M xDrive」と統合され、あらゆる運転状況における安定性、高精度なハンドリング性能、そしてダイナミックな走行をかなえたという。
もちろん、日常的なドライビングの質を高める、高性能カメラ&レーダー、および高性能プロセッサーによる最先端の運転支援システムを標準装備し、ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能も搭載。
先代モデルより、電動化をはじめとする性能と標準装備を向上させた新型M5だが、日本における販売価格は先代と据え置きの1998万円とした。その理由を御館マネージャーは「電動化のコストをお客さまにチャージするべきではないというBMWの思想のもと価格を決定した。電動化はBMWが希求するものであり、未来を駆け抜ける歓びを得るためのコストチャージをお客さまの負担にするべきではない。これはBMWの戦略的な価格設定だ」という。
この新型BMW M5の納車開始は、24年11月中旬としている。