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今、「森の香り」が注目される理由

今秋、新商品情報に目を通す中で目を引いたのが「森の香り」のアイテム。フレグランスを筆頭に、キャンドルやボディーケア、スキンケアに至るまで、カテゴリーも多岐に渡る印象だ。なぜ今、「森の香り」が増えているのか、香りの心理的作用から考えたい。

不安な世の中になるとウッディノートが流行する?

国産・外資を問わず、さまざまなアイテムが登場している森の香り。その背景を探るべく、まずは生活者のフレグランスに対する意識と、香りの世界的なトレンドについて、「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」の田中美代子PR担当に聞いた。

田中氏は「生活者のフレグランスに対する意識は、コロナ禍を境に大きく変化したと感じます。他人にどう見られたいかという『外側に向けた自己演出』ではなく、『自分がどう心地良く過ごせるか』という視点で香りを選ぶ人が増えました。現在の世界的な香りのトレンドは、“ウッディ系”と“グルマン系”の香調です」と話す。

もう1つのトレンドは、年齢やジェンダーを問わず使えることだ。「そういう意味で“樹木系”の香りは男女を問わず使いやすいのかもしれません。具体的には、サンダルウッドやサイプレス、フランキンセンスなどの香調です」。

実は「社会情勢が不安定になると、ウッディ系とグルマン系が流行る」という説を、香水の取材をしていると時々耳にする。理由は、不安やストレスを感じると「人は自然に触れたくなり」「甘いものが欲しくなる」から。科学的に証明された話ではないが、個人的に深く頷いてしまう。

樹木の精油がもたらす作用と
森林特有の「地に足をつける」感覚

「森の香り」が支持される理由について、ライフスタイルブランド「アスレティア(ATHLETIA)」の衣川沙織コミュニケーションマネージャーは、「一般的に、ウッディノートの精油には、安心感をもたらすものが多いとされています。年齢や性別を問わず、誰もがストレスと向き合う状況の今、“森の香り”が求められる理由の1つではないかと感じます」と分析する。

サンダルウッドやセダーウッドの精油には、不安を和らげ、リラックス効果をもたらす作用があるといわれている。経験的に知られてきたこのような香りの効果を、現在では香気成分を科学的に分析することで、解き明かす試みも進んでいる。セダーウッドに含まれる香気成分「セドロール」には、副交感神経を有意に導き、睡眠の質を向上させる働きがあるという。

「『アスレティア』というブランドに対して、 “森の香り”のイメージを持つ人も多いのですが、その理由として、キーアロマのセダーウッドを全商品に賦香していることがあげられます。その他、アーシーなパチョリや苔をイメージしたモスの香りを組み合わせて、樹木だけでなく、土や苔まで含んだ“空間全体としての森”を表現しています」。

土や苔など大地を想起させる香りは、“グランディング=地に足をつける感覚”をもたらす意味で「今の時代に合っているのではないか」(衣川コミュニケーションマネージャー)と分析する。数多の情報に囲まれた現代社会で暮らしていると、気分が散り散りになるような感覚を抱くことはないだろうか。そんな時、大地とそこに根を張る樹木の香りは「ぶれない感覚」を取り戻す手助けとなるのかもしれない。

世界中で注目される「森林浴」
部屋にいながらにして深い森の中へ

大地や苔まで含む森の香りは、部屋にいながらにして「森林浴」の気分を味わえるのが特長だ。実際に「森林浴」をテーマにした新商品も多い。例えば「ジョー マローン ロンドン」の“ヒノキ & シダーウッド コロン インテンス”は、開発者のセリーヌ・ルー(Celine Roux)が「森林浴を通して心の静寂を得る」という日本の文化に感銘を受けて生まれた香りだ。「自然に落ちたヒノキの枝を拾い集めて香料を抽出するなど、持続可能な森林管理のもとで調達された、100%天然の日本のヒノキ香料が用いられています」(田中PR担当)。

通常のヒノキに比べ、日本のヒノキは芳香が強く、フレッシュで生き生きとした香りを放つという。「バウム(BAUM)」から11月に登場するホリデー限定品“アロマティック ハンドクリーム”も、日本のヒノキにインスパイアされた香りを採用。研究員が四国の森林で採取した香気成分を分析して、ヒノキの森を再現している。

メルヴィータ(MELVITA)」の新しいボディーケア“ロルベジタル”シリーズのテーマも森林浴だ。フランスのアルデーシュ地方の森に着想を得た、香料や美容成分が用いられている。「バンフォード(BAMFORD)」の“ウッドランドモス”から登場するボディーケアは、パチョリを配合し、イギリスの湿った森を彷彿とさせる香りだ。

「近年ではルームミストやバスアイテムなど、日常のさまざまなシーンで香りを楽しむ人が増えています。帰宅後や就寝前など、オンからオフへの切り替えや、セルフコンディショニングのために“森の香り”は役立ってくれるのではないでしょうか」(衣川PRマネージャー)。

森の香りを堪能するアイテム5選

今シーズンの森の香りは、一言で「森」と括るのが難しいほど個性豊か。リラックス感のある香りから、湿った大地を思わせる香りまで、5アイテムを紹介する。

日本の森林浴に着想を得た生命力あふれる香り

「ジョー マローン ロンドン」の“ヒノキ & シダーウッド コロン インテンス”は日本の森林浴にインスパイアされた香り。シュッとひと吹きした瞬間は、シナモンやクローブがすっきりと香り立つ。国産ヒノキのエネルギッシュな芳香を、シダーウッドが包み込む。

ウッディハーバルか心地良く香るハンドウオッシュ

良質な天然精油にこだわる「アスレティア(ATHLETIA)」は、10月25日に “アロマラッピング ハンドウォッシュ”を発売する。帰宅後最初に行う「手洗い」をオンからオフへのスイッチと位置づけ、同ブランドでも人気の高いウッディハーバル調の香りを採用した。とろみのあるジェルが汚れを落としながら手肌の潤いを守り、セダーウッドやゼラニウムを主軸とした香りがオフのモードへと導く。

英国の森林に想いを馳せるボディーケアライン

「バンフォード(BAMFORD)」のフレグランス、“ウッドランドモス”は、移りゆく季節の中、英国の森や草原で過ごすひとときをテーマにした香り。この秋登場したボディーケアラインは、土を彷彿とさせるパチョリと、アロマティックなセージ、花々が調和した落ちついた香調。“ウッドランドモス ジェルクリーム”は、軽やかなテクスチャーでありながら深い潤いで肌を守る。

フランス南東部の森に着想を得た新しいボディーケア

「メルヴィータ」から登場した“ロルベジタル”シリーズは、フランス南東部のアルデーシュ地方の森にインスパイアされたボディケアーライン。ユーカリやローズマリーの爽やかさとフランキンセンスの落ち着いた香りが調和して、穏やかな気分へと導いてくれる。“ロルベジタル ハイドレーティング ボディセラム”は、オイルと美容液を3:7の黄金比でブレンドし、乾いたボディーを滑らかに整える。

四国のヒノキの森から誕生した限定のハンドクリーム

2024年にヒノキを主軸にして、主要なスキンケアをリニューアルした「バウム」。11月7日に数量限定で登場する“アロマティック ハンドクリーム 5 ヒノキフォレスト”は、四国地方の森で採取した香気成分を分析して誕生した「ヒノキフォレスト」の香りを採用している。フレッシュなグリーンと清涼感のあるハーバル、温かみのあるシダーウッドが調和した香りだ。

今回紹介した森の香りのアイテムはごく一部に過ぎず、「イソップ(AESOP)」の“エレオス アロマティック ハンドバーム”や、「オサジ(OSAJI)」のベーシックスキンケアシリーズ“チューニング ライン”、「ニールズヤードレメディーズ(NEAL'S YARD REMEDIES)」の“フランキンセンス インテンス ハイドレイティングエッセンス”など、各ブランドから続々と登場する予定だ。

これから1年の終わりに向けて忙しさも増していくシーズン、生活の中に「森の香り」を取り入れてみてはいかがだろう?ストレスを緩和し、本来の自分に立ち戻る手助けをしてくれるかもしれない。

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